第54話 その笑顔を奪いたい
「はあ!」
魔物の大群が押し寄せる要塞都市エスペランザの周辺で、必死に戦い続ける者達がいた。
「神剣よ、我に力を!」
「魔法ソニック・ジャベリン」
「ライトニング・アンカー!」
神剣、魔法、魔道具、様々な方法で戦う彼らは、他国の兵に比べれば相当高い連度を誇るが、優秀な人材は遠方へと出撃しているため、シルヴァリオン帝国としては二軍、三軍に等しい実力しかない者ばかりしかおらず、精神的にも追い詰められていた。
「不味い! 魔物が抜けるぞ!」
戦う彼らの横を、アーマードオーガが通り過ぎていき、そのままシルヴァリオン帝国の西に位置する、要塞都市エスペランサの城門に突撃しようとする。
「頑張ってるね」
しかし、アーマードオーガは城門の手前で突然転倒し、体を地面に打ち付けた。
それでもアーマードオーガはすぐに立ち上がろうとするのだが、立ち上がれずにもう一度地面に倒れる。
何故、アーマードオーガが立ち上がれないかと言うと、アーマードオーガの足が本体から離れた場所に転がっているからである。
「ふむ、少し違和感があるけど許容範囲内かな?」
「クっ、クレア!」
「申し訳ございません! お手間を取らせました!」
「そういうのはいいから頑張って戦ってくれないかい?」
「「「はっ、はい!」」」
クレアの参戦により、兵達の士気は一気に最高潮となる。そして、クレア自身もその戦いに参加し、次々と魔物を屠っていく。
その姿はこの戦場の誰よりも力強く見えるが、普段からクレアと共に戦っている者から見ると、若干違和感があった。
それは、幻想因子の減少による副作用だった。
通常、幻想因子が減少しても、身体能力等への影響は殆どないのだが、クレアほど幻想因子を保有していると、その保有量により身体能力等に補正がかかっており、幻想因子が一定以上減少すると、身体能力も低下してしまうのだ。
ただ、その低下量はそれほど多い訳ではなく、誤差の範囲内だと言っても申し分ない程度である。しかし、僅かであっても身体能力が低下する事は、クレアに微かな違和感を与え続けていた。
(まあ、しばらく戦っていれば慣れるだろうね)
クレアはそう考えながら剣を振るう。
クレアの持つ剣、至高の存在は、一振りされる度に魔物を両断し屍を築いていく。
クレアが相手にしている魔物は、鋼鉄よりも硬い皮膚を持つアーマードオーガやドラゴンなどの硬い魔物ばかりであるはずなのに、その刃は止まる事無く振るわれ続ける。
例え攻撃系の神意能力を封じられたとしても、魔物程度ではクレアを止める事は出来ないのだ。
「西よりヘルドッグの集団接近! 数は300以上!」
「魔法小隊の一斉射と同時に突撃を開始!」
「「「了解!」」」
クレアは味方の魔法が降り注ぐ中、周囲にいた数名の兵士と共にヘルドッグの大群に突撃する。
ヘルドッグは魔法によりその数を半分以下に減らしながらも、クレア達に襲い掛かる。
「ははははははっ! 良い覚悟だよ!」
クレアや勇猛果敢に襲い掛かるヘルドッグを次々と斬り殺す。
ヘルドッグ達は斬り殺されながらも周囲の他の兵達には目もくれず、クレアに殺到する。その姿は明らかに統率されたものだった。
「――っ! そこかい!」
クレアは声を上げつつ、口元を血で汚したヘルドッグから距離を離す為に跳び上がる。その瞬間、ヘルドッグの腹部に張り付いていた何かが、クレアがいた地点に目掛けて剣を振り下ろした。
「ちっ!」
剣を振り下ろした存在。それはクレアと分かれた時に比べて薄汚れた少女、サクヤであった。
「クレア様!」
「貴様! クレア様に!」
その光景を見せ付けられた兵達が、突然現れたサクヤに飛び掛るが、サクヤがグランエグゼを振るうと、その体は光の粒子になりグランエグゼに吸収された。
クレアに呼び出された英霊は、衣服を含めその全てが神格能力で生み出されたものであるため、幻想因子崩壊機関により一撃で分解されてしまったのだった。
「クレア様これは!」
「大丈夫、奪われたのは体を構成する幻想因子だけ。君達の魂は僕の中にちゃんと戻ってくるから」
その一言を聞いた瞬間、兵達の顔から恐怖の色が消えた。
彼らにとって死は恐れるものではない。彼らにとって最も恐ろしいのはクレアとの絆が断ち切られる事である。
目の前の存在がどれだけ強大で、自分達が殺されるだけの捨て駒にされようと、魂さえ奪われないのであれば何の問題も無かった。
「ただし、幻想因子が奪われればその分相手は強化され僕は弱体化する。無駄に死なないようにね」
「了解しましたクレア様!」
「この命はクレア様のもの! お好きにご命令ください!」
クレアの一言により、兵達は無駄に近づく事はせず、慎重にサクヤの出方を伺った。緊張感に包まれた戦場で、クレアはサクヤに問いかけた。
「やあ、サクヤちゃん久しぶりだね。あれから君は――」
「ああああああああああああああ!!!」
サクヤはクレアの言葉を遮り、突撃しながらグランエグゼを上段から振り下ろした。
「前にあった時はもう少し話が通じたと思ったんだけどね!」
クレアはそう言いながらも、サクヤの攻撃を至高の存在で受け止める。
サクヤはグランエグゼを更に押し込むが、至高の存在は幻想因子崩壊機関の影響を一切受けず、傷一つ付かない。
「その剣は神意能力で作られた物でも神剣でもない! お前は魔道具は使えないはず! その剣は何だ!」
サクヤはクレアがその剣でドラゴンを両断しているのを確認していた。
その為、クレアが持っている剣を神剣だと判断していた。
しかし、幻想因子崩壊機関の影響を一切受けない以上、クレアの剣は神剣ではない。
そして、クレアは軍勢の能力の影響で魔法や魔道具が使用できない。
そうなるとサクヤにはクレアの剣の正体が分からなかった。
「やはりその剣は神剣にも影響があるみたいだね。大体想像は出来ていたよ。それにしても君は僕の能力の欠点まで分かっていたのか。一体どれだけの情報が漏れているのかな?」
「その剣は何だと聞いてるのよ!」
サクヤが剣を押し込もうとした時、クレアは大地を蹴ってサクヤと距離を離した。
「そんなに知りたいのなら教えてあげる。この剣の名は至高の存在。とある鍛治師が僕の為に鍛え上げた至高の剣。そう、何の能力も何の効果も持たないただの剣として最高を追い求めた存在さ」
そう、至高の存在とは何の力も持た無いただの剣である。
しかし、クレアの為に作られたその剣は、クレアが握ればその切れ味のみでドラゴンを切り裂き、神剣すらも凌駕する力を発揮する。
そして、ただの人間が作り出した、ただ最高の剣であるだけの至高の存在は、グランエグゼにとって天敵であった。
「神に等しき僕の天敵である君の天敵が、ただの人間が作り出した何の力も無い剣であるというのは面白いと思わないかい?」
「黙れ!」
サクヤは逆上してクレアに襲い掛かろうとするが、傷だらけのヘルドッグに突き飛ばされ地面に転がった。
「何を――!」
ヘルドッグを咎めようとしたサクヤは気が付く。自分の周囲のヘルドッグがクレアとの会話の間に全滅させられており、目の前にいるサクヤがずっと乗り続けてきたヘルドッグも既に息絶えているという事に。
「主人を護る為にその命を捧げる。泣かせるじゃないか」
「うるさい! こいつらはただの道具なんだ!」
サクヤは従魔の能力を使い、新しい魔物を呼び出そうとする。
しかし、それよりも早く、クレアが神意能力を発動した。
「汝に神の意思は届かない、対神意の能力プロヴィデンス・ブレイカー」
その瞬間、先ほどまでサクヤに付き従ってきた魔物たちはピタリと止まる。
「なっ!」
「これで魔物は――」
「うわああああああ!」
「――ん?」
しかし、止まったと思った魔物たちは、今度は無差別に周囲を襲い始める。建造物を破壊しろという命令を削除された魔物達の暴れっぷりは寧ろ先ほどよりも激しさを増していた。
「あっと、しまった。魔物達の洗脳? が解けても、人間を襲う事には代わりがないんだったね。これは失敗だ」
クレアは大した事が無いように話すが、周囲の人間達からすればたまったものではない。
せめてもの救いは、対神意の能力の効果範囲がそれほど広くなく、従魔の能力が解除されたのがこの周辺だけだったという事だろうか。
「まあ良い、周囲の事は他の者に任せて、僕達は――」
「爆ぜろ!」
「ぐっ!」
その瞬間のクレアの表情は、エリス達でも見た事がないほど驚きを帯びていた。
それはそうだ。対神意の能力の影響下において、繰り出された攻撃が明らかに神意能力によるものだったのだから。
本来、対神意の能力の影響下では神意能力は使用できず、既に発動している神意能力も無効化される。
しかし、サクヤはグランエグゼによって干渉系神意能力無効化の特殊能力が付与されているため、対神意の能力をもってしても神意能力の発動を無効化できなかったのだ、
だが、能力は発動できても、発動済みの能力を無効化する効果は有効であり、不意を付いて発動した爆発の能力もすぐに消えてしまう。
その一瞬でクレアは顔を焼かれたが、その傷はすぐに塞がり元通りになる。しかし、その回復速度は普段のクレアと比べると明らかに遅い。それは、幻想因子が減少している影響だった。
「いやぁ、ビックリしたよ。死ぬかと思った」
クレアは心にも思っていない事を呟きながらサクヤを見つめる。
今のサクヤの行動により、クレアは対神意の能力がある程度しか効いていないのだという事を理解し、警戒レベルを引き上げた。
「加速!」
『了解、超高速戦闘機構起動。ラスト・アクセラレート』
サクヤはクレアが更に本気を出す前に決着をつける為、最高速度で跳び込む。
以前であればこの瞬間、クレアは神速の能力を発動したであろう。しかし、クレアは加速したサクヤに反応する事無く立ち尽くしていた。
何故立ち尽くしているのか。それは神速の能力者の不在により、能力が発動できないからである。
(もらった!)
その瞬間、サクヤは勝利を確信し、グランエグゼをクレアの首目掛けて振り下ろす。しかし、響いたのは肉を切り裂く音ではなく金属音だった。
「な……!?」
周囲がゆっくりと動く中、通常の二倍速で移動するサクヤ。そのサクヤの目に映ったのは、自分と同じ速度で動く剣と盾を構えた男の姿だった。
「かっ……ぐっ……!」
男は苦痛に耐えるような表情で、サクヤを睨みつける。
サクヤはその男に向かってグランエグゼを振り下ろすが、その攻撃は全て盾によって防がれてしまった。
(攻撃してこない!?)
男は防ぐばかりで攻撃をしようとしていない。ならば男の目的は明白である。時間稼ぎだ。
神速の能力者を送り出してしまったクレアにとって、サクヤの加速能力は防ぐ手立てはない。その為、別の人間に超高速戦闘機構対策を準備させていた。
(これ以上は幻想因子が……!)
攻撃してこない防御に徹した相手を倒す事が出来ず、サクヤは超高速戦闘機構を解除した。
「あとは……頼む……」
サクヤが超高速戦闘機構を解除したのを確認した男は、自身の加速も解除し、全身から血を噴出させながら倒れ、息絶えた。
しかし、男の持っていた剣は、いつの間にか他の兵の手に握られていた。
「任された!」
男の神剣を託された兵は同じように盾を構え、サクヤを睨むが、サクヤに近づく事はせず、距離をとる。そして、その周囲にはその剣を持つ兵を護る様に、兵が配置されている。
彼らがクレアを護るよりも優先してその兵を護るのには理由がある。それは、男が使っていた剣が、神速の能力と同等の加速の力を持ち主に与える神剣であり、超高速戦闘機構への切り札であるからだ。
その神剣を持つ人間の役目はサクヤが超高速戦闘機構を起動すると同時に自分も加速する事である為、無駄な行動は一切行わず、サクヤの行動だけを注視し続けていた。
しかし、そんな力があるならば常に戦うべきではないかと思うかもしれない。だが、この神剣には一つ欠点があり多様はできなかった。
その欠点は、加速は出来ても加速による負荷を防いでくれない事だ。
普通の人間が通常の二十倍もの速度で移動すれば、肉体が持つはずが無い。この神剣の力を使った者は最初の男のように激痛に襲われ続け、肉体が磨耗し、最後には息絶えてしまうのだ。
だからこの神剣を持つ者は、自分が死ぬべき最高の瞬間が訪れるまでただ待ち続けている。
クレア様にその命を捧げ、お守りする事が出来るという大役を終えた者は、次の人間に神剣を譲渡するための魔道具を使用し、瞬時に神剣を託し、託された者は同じ事を繰り返す。
彼らはその為だけに存在する捨て駒なのだ。
しかし、彼らは悲観する事無く、大した力の無い自分達が、クレア様にとって無くてはならない存在になる事が出来るという喜びをかみ締め、幸せに打ち震えながら捨て駒となる。
これがシルヴァリオン帝国の、クレア・R・シルヴァリオンの軍勢の忠義であった。
「くそっ!」
「させないよ」
サクヤはその神剣の持ち主の役目を理解し、先に殺そうとするが、その攻撃はクレアによって防がれる。
いくら弱体化しようとも、クレアの持つ幻想因子はいまだ莫大であり、基礎能力が違いすぎる。サクヤは超高速戦闘機構を使用しなければ得意なスピード勝負ですらクレアに劣っているのだ。
「グランエグゼ!」
『了解しました。人造神創造機関起動、マスターへ封印幻想の譲渡を開始。加速の能力の譲渡を完了。重力の能力は破棄されました』
サクヤの思考を読み取ったグランエグゼにより神意能力の譲渡が行われる。
度重なる神意能力の譲渡でサクヤの幻想因子も増加していくが、圧倒的不利であるという事に変わりは無い。
「全ては加速する! 私が愛するものを置き去りにして! 神意解放! 加速の能力アクセル・ブースト!」
「はははははっ。引き出しが多くて憧れちゃうな」
クレアの最高に嫌味な台詞を浴びせられながら、サクヤは加速する。
爆発の能力とは違い、自分自身を強化する力は対神意の能力の影響は受けず、サクヤは超高速戦闘機構を発動せずとも常時ある程度の加速を得る。
しかしそれをもってしても、サクヤの速度はクレアと同等程度であった。
「強化系の神意能力は本人の熟練度が効果に大きな影響を与える。付け焼刃で使ったってその程度だよ」
クレアは軍勢の能力のおかげで他の人間の神意能力を使っても、持ち主の経験すらも再現し同等の力を発揮できる。しかし、サクヤは無理やり奪ったものを使っているに過ぎないため、思っている以上に性能が低下していた。
グランエグゼによるサポートがあればそれを補う事も出来るが、代償が大きすぎてとてもではないが多用できない。
「なら、グラッ――!」
ならば相乗効果を期待して勇者の能力を譲渡させようとするサクヤだが、命令を実行させる事が出来ない。
今までの自分の行動を振り返ってしまい、例え効果だけを求めてのものだとしても、勇者を名乗る事が出来なかったのだ。
「迷いは身を滅ぼすよ」
「がっ!」
サクヤの隙を突いて、クレアはその脇腹に蹴りを叩き込む。
サクヤは以前とは違い地面を転がりながらもすぐに体制を立て直し、クレアの追撃に備えるが、その視界にクレア以外の人間の姿が映る。
「うおおおおお!!!」
その男は特に特徴の無い男だった。
武器は普通、身体能力は普通、見た目も普通。サクヤにはまったく脅威を感じられない。だからサクヤは、大して警戒せずに切り伏せようとグランエグゼを横薙ぎに振るった。
「クレア皇帝陛下万歳!」
「なっ!」
しかし、男が突然グランエグゼに自ら身を投げ出してきた為、サクヤは予想以上に男の接近を許してしまう。
そして、その距離は男にとって満足のいく距離だった。
「エクスプロード――!」
「――障壁!」
グランエグゼに斬られ消滅していく男は、その命が消える寸前、自らの体に巻きつけた爆破の魔道具を起動した。
この魔道具ははっきり言って失敗作である。何故なら魔道具を中心として爆発を起こすのに、魔道具に直接触れていないと起動できないからだ。
だが、そんな欠陥品の魔道具にも使い道はある。つまりは人間爆弾による特攻用だ。
「ふざけてる……!」
命を引き換えにした攻撃をサクヤに防がれながらも、その男は笑顔で死ぬ。
例え命が無様に散ろうとも、クレアの為に戦えれば満足で、クレアさえ無事ならば、彼らは死すらも超越できるからだ。
「僕に隙を見せたね!」
「クレア!」
サクヤは粉塵の向こうからクレアの声が聞こえてきた為にそちらを注視する。そして、粉塵の向こうから跳び出して来る影に向かってグランエグゼを突き出した。
グランエグゼから伝わってくるのは確かな手応え。しかし、サクヤの目に映ったのはクレアでは無い。
「どう……結構似てた……で……しょ……」
それは、クレアによく似た声をした、少女の兵だった。
その事に気がついたサクヤは、直感的に、前に一歩踏み出すが、反応が遅く背中を僅かに斬られる。
「不意をつこうとしてるのに声を出す訳無いでしょ」
サクヤの背中を切り裂いたクレアのもっともな意見を背中越しに聞きながら、サクヤは大地を蹴り更に前方に跳び出す。
粉塵を抜け、周囲の状況を確認しようとしたサクヤの目に飛び込んできたのは、サクヤの周囲を取り囲むように立ち並び、サクヤ目掛けて手を構える魔法小隊の姿だった。
「「「魔法グラビティ・フィールド」」」
「がっ! ぐはっ!」
一軍不在のため集められた決して優秀な魔法使いではない彼らの魔法であろうと、多重展開された重力の檻はサクヤの動きを完全に止めた。
そして、後ろからはクレアが迫っている。迷っている暇は無かった。
「ああああああああああああああ!!!」
「なっ!」
「くっ!」
サクヤは周囲に障壁を展開しつつ、次々と無差別に爆発の能力を発動させる。
それにより、周囲の魔法小隊は吹き飛ばされ、重力の檻は消えるが、障壁は展開してすぐに、対神意能力の影響を受けて消滅してしまった為、サクヤは自らの能力で体を焼かれる事になった。
「うわ、痛そうだね」
のんきな事を呟きながら、クレアがサクヤ目掛けて剣を突き刺してくる。
サクヤはその攻撃を、ついさっきの台詞はどうしたんだと毒づきながら回避した。しかし、その一撃が回避出来ても、サクヤの体は疲弊しており、もう長くは持たない。
「くはっ……! はぁはぁ……」
「どうしたんだい? もう終わりなのかな?」
クレアはこれだけの事があっても未だに笑顔で楽しそうに戦っている。
その事が、サクヤにはどうしても許せない。
もう、何もかもが許せない。
だから――。
「空間掌握の能力を代償に、全封印機関強制完全解放! 人造神剣エグゼファンタズム起動!」
全てをなげうってでも、クレアの笑顔を消し去りたいと思った。




