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第44話 ある少女の独白

「ふわぁ~、よく寝た。んっ? あれ?」


 なんだか長い夢を見ていた気分になりながら、私は目を覚ました。そこはいつもの私の部屋で何も変わっていない様に思えるのだが、途轍もない違和感を感じていた。


「あれ? 私、今まで何を……?」


 私は椅子に座ったまま寝ていたようで、目の前には節電の為に真っ暗になったパソコンの画面があった。自分が眠る直前まで何をしていたのか思い出すためにマウスをクリックして、画面を点けた。


「新世界へようこそ……?」


 パソコンの画面にはその文字だけが表示されているのだが、それは何もしていないのにすぐに消えてしまった。


「えっと、もしかしてウイルスか何か?」


 怖くなった私はすぐにウイルスソフト? セキュリティソフト? とにかくそんな感じのものを起動して調べてもらうが、画面には何も脅威は無いと表示される。

 もしかすると、ソフトが反応しないウイルスがあるのかもしれないけど、パソコンにそこまで詳しくない私には分からないので、見なかった事にして今の時間を確認する。


「えっ!? もうこんな時間!? うわー、寝過ぎた」


 私が最後に記憶している時間は、夜の6時(18時)くらいだったのだが、今は8時になっており、しかも外は明るくなっている。つまり私が寝落ちしてからもう、14時間近く時間が経過しているのだ。

 まあ、今日は振替休日で学校が休みだから問題は無いが、休みの前日にこんなに早く寝てしまうとは勿体無い。


「あれ? でも私って夜ご飯食べてたっけ? 昨日はお母さんの帰りが遅いから、8時頃にご飯って言われてたような……?」


 私がそう疑問に感じていると、ドカドカと階段を駆け上がる音が聞こえてくる。何だろう?


「弥生いるの! あんた今までどこ行ってたの!」


 階段を駆け上がる音が聞こえた後、私の部屋のドアが開け放たれ、お母さんが怒鳴りながら入ってくる。私にはお母さんが何でこんなに怒っているのか理解できなかった。


「どこにって? 私は昨日からずっとここで寝てて、今起きたところだよ?」

「嘘付くんじゃないよ! 昨日、私が家に帰ってきたらこの部屋の電気は点いたままなのに、あんたはどこにもいなくて心配したんだよ!」


 どこにもいなかった? いや、実際私はここで寝ていて今起きたところなのだから、それ以上の事なんて分る訳が無い。もしかして私は何かに誘拐されていたか、夢遊病でさまようかしていたのだろうか?

 色々考えたが答えは出ず、私はお母さんに只管怒られるだけの時間を過ごした。


 その後、お母さんが私を心配していろんな所に連絡したらしいので、見つかったという連絡をしてくると言って出て行った。そう言えば、その時お母さんはお兄ちゃんにも連絡したらしいけど、何度かけても電話が繋がらなかったらしい。


 私はその話を聞いて、何故かとても不安を覚えて、お兄ちゃんに連絡を取ろうとした。でも、お母さんの言うとおり、何度電話を鳴らしてもお兄ちゃんは出なかった。


「きっと忙しくて出られないか、充電が切れちゃっただけだよね……。大丈夫……、大丈夫……」


 私は自分にそう言い聞かせたが、胸騒ぎは無くならず、お母さんに無理を言ってお兄ちゃんのところへ行く事にした。

 お母さんは昨日の今日で相当心配していたけど、お兄ちゃんの事も心配だったらしく、連絡をしっかりしてくれれば良いと言ってくれた。


 そして私は、お兄ちゃんからもしもの時の為にと渡されていた合鍵を持って、お兄ちゃんが一人暮らししている家に向かった。


「お兄ちゃん……、また一緒に遊べるよね……」


 長い時間電車に揺られた私は、疲労感に包まれながらもお兄ちゃんの家に辿り着いた。玄関の前に立った私は何度も呼び鈴を鳴らしたけどお兄ちゃんの反応は無い。

 いや、そもそも私はお兄ちゃんの休みがいつなのか知らないし、今日は仕事なのかもしれない。私がそう思っていると携帯電話が突然振るえ、お母さんからメールが届く。


 そこには、お兄ちゃんが仕事に来ていないうえに連絡が取れないと会社から連絡があったと書かれていた。お兄ちゃんは今まで遅刻した事も無く、真面目な人間だったので会社の人がとても心配しているらしい。

 それに対して私は、お兄ちゃんって結構人望があるんだなと思いながら、意を決して合鍵を差込み、玄関のドアを開いた。


 もしかすると、そこには死体が転がっているかもしれない。お兄ちゃん以外の人がいるかもしれないという恐怖に襲われながらも、私はそのまま前に進み、目の前にある部屋の扉を開く。


「お……兄……ちゃん……?」


 そこはお兄ちゃんの部屋だけど、誰もいなかった。だけど、電気だけは点けっぱなしになっていた。そして、その部屋には何故かパソコンが二台置いてある。


「お兄ちゃんは一人暮らしのはずなのに……、なんでパソコンが二台……?」


 私はそう疑問に思いつつも、電源が入ったままになっているパソコンに触れる。そして、パソコンの画面に表示されているものを見た。


「新世界へようこそ……!?」


 そこに映し出された文字は、私が自分のパソコンで見たものと同じものだった。

 私の中で何かが騒ぎ出す。私は何か大切な事を忘れている。そう感じるのに何も思い出せない。思い出さなきゃいけないのに……。


 私はその後、お兄ちゃんが財布や携帯電話を残したままいなくなっていた事をお母さんに伝えた。そして私は、怒るお母さんを無視して、そのままお兄ちゃんの部屋でお兄ちゃんの帰りを待った。でも、お兄ちゃんはいつまで待っても帰ってこない。


 そのままどれだけの時間が経過しただろうか、私は疲れて睡魔に襲われ始める。おかしい、あれだけ寝たのに物凄く眠い。そのまま私は眠気に負けて、床に倒れて眠ってしまった。



「――――」



 誰かの声が聞こえる。でも、何を言っているのか分らない。私はその声をBGMにしながらも、そのまま眠り続けていた。しかし、声の主は、私を寝かせておくつもりは無いらしく、私は体を揺さ振られ目を覚ました。


 そこで私が見たものは……。

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