第33話 絶望の大地
いきなり間が空いてしまって申し訳ありません。
まだ、このお話の続きが見たいと思ってくださっている皆様、お待たせしてしまいましたが、どうかよろしくお願いいたします。
――幻界、ならず者のアジト。
「おい、そっちはどうだ」
「異常なし、今日も平和だぜ」
山の斜面に洞窟を掘り、土魔法で補強したならず者のアジト。そこの入り口で見張りをしている二人の男は楽しそうに話をしている。
「しっかし最近の俺達はついてるよな」
「ああ、そうだな。あんな極上の女も手に入るし、金も食料も大量。文句も無いぜ」
そう言いながら男は四日前に捕まえた女について妄想する。
「しかもあの女○○だったんだぜ。お頭に渡す前に使わないでよかったぜ。もし、口と胸で満足してなかったら俺達の首が飛んでたぞ」
「だな。お陰さまでお頭の機嫌はすこぶる良いし、俺達の評価は鰻登り。あの女様様だ」
男達は褒美として貰ったサクヤの魔道具を見せ合いながら、最近の出来事を話し合う。
「そういえば、お前、昨日もあの女のところ行ったんだろ?」
「おうよ。あの女は何もかもが最高でいくらでも通えるぜ!」
「その所為であの女は常にべっとべと。俺はああいうのは遠慮したいわ」
「何言ってんだよ。それでもやれる時にやるのが男ってもんだろ」
男達は楽しそうに話す。しかし、その内容は捌け口となっている人間にとっては吐き気を催すものだ。だが、男達は話すのをやめない。だってそれは男達にとって本当に楽しい事なのだから。
「まぁ確かに見ている分には良いんだがな。俺は川に放り込んで洗った後がいいぜ」
「贅沢言ってんじゃねーよ。そんなん待ってたらいつまで経っても順番にならねーぞ」
「そう言うが、明日には俺が洗う係なんだから、少し溜めてからじっくり味わうさ」
「ずりぃなぁ。俺なんて十日後だぜ」
まるで物を洗う様な感覚で男達は話す。実際男達にとってサクヤは物と言って差し支えなかった。
「それにしてもアレの虚脱の魔道具はいつまで付けとくんだ? もう十分じゃねぇか?」
「いや、安全の為、後一日は付けとくらしいぜ。あんまり早く外すと舌噛み切られたりするかもしれねえからな」
「マジかよ。俺は少しは暴れてくれた方が良いんだがな」
「ははは、そんなに暴れてんのが良いなら、暴れ馬とでもやってろよ」
「きもちわりぃ事言うなよ……」
その一言で気分を害した男は、何となく遠くの景色を見た。すると――。
「おい! あれを見ろ!」
「ん? なんだ……っておい!? あれは!」
「すぐに頭にれんら――」
◇◇◇
――何も無い部屋。サクヤの独白。
気持ち悪い、私はそう思う。
ここで何をされたのか、今現在何をされているのか、理解したくない。
気持ち悪い、心からそう思う。
吐き気がする。だけど吐く事も出来ない。拒絶したい。だけど動く事も出来ない。気絶したい。だけど気を失う事も出来ない。
気持ち悪い、気持ち悪い。気持ち悪い。
お腹の中が気持ち悪い。口の中が気持ち悪い。胸の辺りが気持ち悪い。男の頃には存在すらしなかった場所が気持ち悪い。本来は出すだけの場所が気持ち悪い。全身が気持ち悪い。
男達の声が気持ち悪い。触られる事が気持ち悪い。部屋の臭いが気持ち悪い。鳴り響く音が気持ち悪い。暖かいのが気持ち悪い。無理矢理動かされるのが気持ち悪い。
でも、何より気持ち悪いのは、こんな状況なのに熱を帯びている自分の体だった。
違う、違う、違うの……。嫌なのに……! こんなの嫌なのに! もう嫌だ! こんな体いらない! 元の体にかえして……。お願い……。
懇願しても、お願いしても、どれだけ望んでも、誰も助けてくれない。グランエグゼは話しかけてもくれない。救いなんて無い。
どうして、こんな目に合うのだろう。どうして、こんな事をされるのだろう。どうして、こんな仕打ちを受けるのだろう。
そう思って、私は考える。原因はなんなのだろうか。そして、結論が出た。
きっと、私は、この世界に来る前に、女の人に酷い事をするクズだったんだ。だから、神様が罰を与える為に、こんな事をするんだ。私はこんな仕打ちを受けて当然の事をしていたんだ。
ごめんなさい、ゆるしてください。ごめんなさい、ゆるしてください。ごめんなさい、ゆるしてください。
私は謝る、会った覚えも無い女性達に。私は謝る、全ての人に。私は謝る、神様に。
ごめんなさい、ゆるしてください。ごめんなさい、ゆるしてください。ごめんなさい、ゆるしてください。
一体どれだけの回数謝っただろうか。一体どれだけの回数許しを乞うただろうか。一体どれだけの回数神に祈っただろうか。
もう分からないくらい懇願した頃、周囲が騒がしくなり、目の前の男達が慌てた様子で外に向かう。どうせすぐに代わりの男達が来ると分かっていても、今の私にとってこの一瞬は、かけがえの無い時間だった。
そして、男達がいなくなってから、かなりの時間が経ち、流石におかしいと私が感じた時、部屋の扉が開いた。
「ふーん、あいつら良い趣味してるわね」
そこにいたのは、青いフリルのワンピースを着た、身長140cm程で腰まで届く銀髪と赤い瞳をした小柄な少女だった。
「あなた生きてる?」
少女のその問いに対して私は返事を返せない。虚脱の魔道具は私から声を出す自由すら奪っているからだ。
「あぁ、それの所為で喋れないのね。魔法プリズム・ダガー」
少女が何やら言葉を紡ぐと、七色のナイフが飛翔し、私の足の魔道具を切り裂いた。
「これでよし、んであなたは生きてるの?」
生きているかどうかなど見れば分かると思うのだが、少女はどうしても私に喋らせたいようだった。
「い……きて……ます……」
私は久々に自由を手に入れた体で何とか声を絞り出した。そんな私の声を聞いて少女は満面の笑みで近づいてくる。
「うんうん、良い反応だね。普通ならこんな状況じゃ心が完全に壊れていてもおかしくないんだけど、あなたは運が良いよ」
こんな私のどこが運が良いのだろうか。この世界に来てからというもの、私は運が良いなどと思えた事がない。確かに今までなんだかんだで生き残れてはいるが、世の中には死んだ方がマシな出来事というものもあるのだ。
「私の名前はルキア、銀髪の魔女とか言われている魔法使いなの。これでも有名なのよ」
楽しそうに話すルキアという少女は、私のすぐ傍まで近づいてきた。そして、その所為で私の体を汚しているものが彼女の靴にも付着してしまう。しかし、ルキアは気にした素振りもなく、私に手を伸ばす。
「私はあなたが気に入った。だからあなたをここから連れ出そうと思っているの。さあ、あなたはこのままここに残る? それとも私と一緒に来る?」
その問いに対して私の答えは決まっていた。こんな地獄にはもう一秒もいたくない。例えその先が新たな地獄だろうと構わない。私は四日間動かす事が出来なかった汚物塗れの体を何とか動かす。そして、そのまま私は、震える体に力を込めてルキアの手を掴んだ。その時、私の手が汚れていた為にぐちゃりという音が響いたのだが、ルキアはそんな事一切気にせず、ただ私の反応を喜んでいた。
そして、私がルキアの両目を見つめた瞬間、彼女の赤い瞳が明滅した様な気がした。
「×××××、××。おめでとう、これで今日からあなたは私の【奴隷】だよ」
その言葉の意味を理解するより前に、私の心にはこの少女が愛おしくてたまらないという感情と、この少女の命令には絶対服従しなければならないという感情が生まれ、それ以外の事を考えられなくなった。
『ふふっ』
その時、私の耳に誰かが私を嘲笑う様な声が聞こえた気がした。
いつもご覧になって下さっている皆様、ありがとうございます。
そして、遅くなってしまい申し訳ございません。
正直に申しますと、今までの更新は三か月分書き貯めたものを修正しつつ小出しにして時間を稼ぎ、その間に続きを書いていただけですので、もう以前のような速度では更新出来ません。
最初の頃に比べれば書くスピードも上がりましたが、それでもこれからは、ゆっくりとした投稿になると思います。ただ、投稿は頑張って続けさせて頂きますので何卒よろしくお願い致します。
 




