3回目の世界
「加藤さん、加藤さん」
「何だい?高島くん」
「珍しく仕事が早く終わったんでどこか観光していきません?」
「そうだね~、予定より半日早く終わったし、もう今日は直帰のつもりだったからどこか行こうか?」
「やった!さすが加藤さん、話がわかる」
「どこかいい所ある?」
「そうですね~、せっかくここまで来たんですから大修理が終わったばかりの姫路城なんてどうですか?」
「渋いところ突くね~。もしかして城マニア?」
「そういう訳じゃないんですけども国宝ですし、一度は見ておきたいかなって・・・」
「反対する理由はないね。じゃ、途中で高速降りて寄り道していこうか?」
「じゃ、レッツゴ~!」
「レッツゴ~って・・・」
「加藤さん、加藤さん、到着しましたよ~」
「をを~!これが姫路城、別名白鷺城か~」
「そうですよ、大修理で一部市民の間からは白すぎじゃね?って言われている姫路城です!」
「白すぎ城って呼ばれてるんだっけ?」
「教育委員会によるとこれが本来の姫路城の白さらしいですよ、あと3~5年もしたら漆喰がカビで黒ずんでいくみたいで、違和感がなくなるって教育委員会は言ってますけどね」
「そうなんだ~、・・・ところでさ~、高島くん」
「何ですか?」
「ここって間違いなく姫路城なんだよね?」
「ええ、そうですよ、ナビ通りに来ましたし現在地は姫路城の前です」
「確かにナビではそうなってるんだけどさ」
「何か不審な点でも?」
「大修理で外壁とか瓦とか補修して白くなったんだよね?」
「そうですよ」
「俺の目が悪いのかな~?白っていうよりさ~薄い茶色に見えるんだけど?」
「加藤さ~ん、気のせいですって」
「それにさ、見た感じ城っていうか砦?強いて言うならクッパ城?」
「嫌だな~加藤さん。気づいたからってそれは言っちゃ~いけませんよ?」
「気づいとったんかい!!」
「・・・すいません、しっかりと現実逃避してました・・・」
「2度あることは3度あるって言いますけど・・・いい加減飛ばされるのはやめてほしいですよね~」
「ま、そのうち慣れるって」
「いやいや慣れたくね~し!!ってすいません、加藤さんに対して汚い言葉使っちゃいました」
「気にしないでいいよ、俺も全く高島くんと同じで慣れたくなんかないから」
「そうですよね~って・・・じゃ慣れるなんて言わないでくださいよ~」
「そこはほら、俺もしっかり現実逃避してたっていうか・・・」
「まあ加藤さんの性格は十分わかってますからあえてツッコミませんけど・・・」
「そんなことよりさ~、さっきからなんだか騒がしくない?」
「っていうか喧噪の真っただ中にさっきからいるんですけど?」
「目の前を矢っぽいモノが飛び交ってるしね~」
「何本か車に当たってますよ」
「その割には高島君、落ち着いてるじゃない?」
「いやいや、さっきも言った通り現実逃避してるだけですよ。そういう加藤さんだって落ち着いてるじゃないですか?」
「もうさ、これはあきらめの境地なわけよ」
「あきらめてます?」
「この状況にね、だからと言ってなんとかしたくない訳じゃないんだけれど・・・」
「まあ、どう考えても攻城戦、この場合は砦っぽいので攻砦戦ですかね?そこから逃げださないといけないんですけど・・・」
「問題はどうやって逃げるかだね」
「そういえば加藤さん、こんな時にどうでもいい話なんですけど・・・」
「何だい?」
「もうこれで変な所に飛ばされたのが3回目じゃないですか?」
「不本意ながらね」
「初めてですよ」
「何が?」
「人間(?)に出会ったのがです」
「・・・本当にどうでもいい話だねぇ~」
「いや、それでも前回、前々回といきなり怪物に遭遇してハイさようなら~でしたでしょ?それから考えると初めて人間(?)らしきものを見たな~って思って」
「おおよそ出会いたくないタイプの格好してるけどね」
「いやいや、せっかく異世界っぽいところに飛ばされたわけじゃないですか?一回くらいファンタジーっぽい格好の人見てみたかったんですよね~、まさに3度目の正直‼」
「まあ、確かにファンタジーって言えばファンタジーなんだけれども・・・でもさ~どっちかって言うと中世じゃない?」
「そうとも言えますね」
「高島君、話し戻すけどさ~、早くこっから逃げようよ、こんな戦いに巻き込まれるのはごめんだよ?」
「何言っているんですか加藤さん。もうとっくに巻き込まれてますって」
「巻き込まれてることに関してはまあ、間違いないんだけどもさ、そうなんだけどさ・・・せめて少しでもここから離れようよ」
「逃げたいのは山々なんですけどね~ここに着いた途端に何か踏んだみたいで右前輪がパンクしてるんですよね」
「どおりで傾いてると思ったよ・・・」
「それでどうします?」
「う~ん、幸い矢は遠いところから飛んできてるんで車本体には刺さらないか・・・間違ってガラスに当たったとして・・・勢いがなさそうだから大丈夫か・・・砦からも矢が放たれてるけどこの車を標的にはしてないみたいだし・・・社外に出て逃げるとして・・・流れ矢に当たる可能性も低く無い・・・これは矢の応酬がひと段落するまで車内待機だな。よし、高島君‼しばらくこのまま‼」
「了解です。賢明な判断かと」
「加藤さん、どうやら戦場も落ち着いてきたみたいですね」
「うん、そうだね。大分飛び交う矢も少なくなってきてるね」
「今がチャンスですかね」
「そうだね」
「行きますか?」
「何とか進めそう?」
「ゆっくりだったら大丈夫だと思います。地面が土で凸凹なのが若干気になりますが」
「よし、じゃあ出発し‼!・・・ちょっと待った‼」
「うをっ」
「・・・」
「・・・」
「これはあれだね高島君。」
「あれですね」
「大砲の撃ち合い始めやがった・・・」
「始まっちゃいましたね」
「できるだけ射線から離れて安全な所でタイヤ交換、その後ダッシュでにげる」
「逃げるってどこにですか?」
「会社に」
「どうやってです!?」
「ナビ通りに走ったらここにいたんだったらナビ通りに行けば会社に着くんじゃない?」
「理屈としてはそうなんでしょうけれど・・・」
「とりあえずここを脱出してから考えよう・・・って今の衝撃なに?」
「ああ~、お城(砦?)からの矢が見事に左の前輪に刺さってます」
「なんで?さっきまで砦からの矢はこっち狙ってなかったのに」
「動き出したから怪しいと思ったんじゃないですかね?」
「動かない?」
「動かせない事はないですけど・・・流石に両輪やられるとちょっと厳しいです」
「収まるまで待つしかないか・・・」
「まあ幸い遠距離での砲撃戦が中心ですし、攻めてるように見える方も堀と土塁に阻まれて突撃してきそうな気配もないですし、しばらく我慢しましょうか」
「砲弾が飛び交う真っただ中にいるってのも生きた心地しないけどね」
「大丈夫ですよ、見たところこの程度の文明レベルだったら射撃精度なんてたかが知れてますから、たとえ狙われたとしてもまず当たりゃしませんよ」
「そうだといいんだけどさ、精度知れてるってことは狙ったところに飛んでいかないって事でしょ?」
「そうですよ?」
「ってことはさ、まったく見当違いの方向へ砲弾が飛んでいくってこともある訳だ。で、その見当違いの方向に飛んだ砲弾が運悪くこの車に当たる可能性もある訳だよね?」
「その可能性は否定できませんが・・・って加藤さん、もしかして僕フラグ立てちゃいましたかね?」
「これ以上無い位ね」
「ってことは今回もオチが見えたってことでしゅ~りょ~ですかね?」
「多分ね、と言っても悪あがき位はしたいけど・・・」
「そうですね、多少なら車動かせないことも無いし、いざとなったら車捨てて逃げましょう」
「この状況でどっちが安全かわかんないけどね」
「どっちも安全じゃないですけど・・・確かに車の外出るのは怖いです」
「じゃしばらく様子見るってことで・・・って、あっちゃ~・・・判断ミスったかな~?」
「直撃コースですね~」
「避けれる?」
「無理ですね~」
「外に出れる?」
「無理ですね~間に合いません」
「・・・」
「・・・」
「「それじゃ~良い休日を!」」
今回の死亡理由
爆死or圧死
合掌