2回目の世界
「加藤さん、加藤さん」
「何だい?高島君」
「僕達ってこの間死にましたよね?」
「見事な位にね」
「何で生きてるんですかね?ってか、何でまた元の世界で何事もなかったかのように生活してるんですかね?」
「そんなん俺に聞かれてもわからないね。ってかむしろ俺が聞きたいね」
「いや、そうなんですけれどね、一応お約束というか何というか・・・」
「いや、そうなんだけれどさ・・・」
「やっぱり夢か何かだったんですかね?」
「2人して同じ夢を?」
「ほら、よくあるじゃないですか?同じ夢を見たって体験談」
「夢にしてはリアルだったけど・・・」
「・・・確かにそうですね」
「いまだに思い出すとあれは辛いよね」
「何て言うんですかね、じわじわと身体が焼けていく感じがおぞましいですよ」
「でもね、いい匂いがしたんだよね、肉が焼ける・・・」
「ええ、身体は熱くて頭が狂いそうなのに、お腹はあの匂いを嗅いで・・・ってやめてください‼」
「ごめんね・・・つい・・・」
「何はともあれ2度とあんな体験はごめんですね」
「同感だね」
「それにしてもこの道、車がほとんど走っていませんね」
「まあ出来たばかりの高速だし、しかも中途半端に途中で降ろされるからね~」
「トンネルも多いですしね」
「ライト点けたり消したりせせこましいね」
「っとそんな事言ってる間にまたトンネルですよ」
「これまた長いトンネルだね」
「抜けるのに5分くらいかかりますかね?」
「もうちょっと早いんじゃない?」
「そうですか?それにしても前も後ろも車がいなくて対向車もいないんじゃ不気味ですよ」
「まあ、真昼間の高速、特にこんな辺鄙な道じゃこんなもんだよ」
「こんな辺鄙な道を走っているのは僕達位なもんですか」
「そうそう、仕事とはいえ普通はこんなところ走らないよ」
「確かに・・・」
「おっ、高島君、そろそろ出口が見えてきたよ」
「意外と早かったですね」
「ここ抜けたらもうすぐ到着っと」
「今日はスムーズに来れましたね~」
「仕事もスムーズに終わるといいけどね~」
「・・・」
「・・・」
「草原ですね・・・」
「草原だね・・・」
「見渡す限りの草原ですね」
「高島君、ほら地平線が見えるよ?」
「ほんとですね~、清々しいですね~、THE自然‼って感じですね~」
「いや~、もう最高‼」
「って何落ち着いてるんですか‼」
「いやいやいや、もうこれ以上ない位動揺してるよ?」
「とてもそうは見えませんけど・・・」
「高島君だって落ち着いてるじゃない?」
「いやいやいや、ちょ~動揺してますよ」
「その割にはスピード落ちてないし」
「そういう問題じゃないです‼」
「ところで現在地は、っと」
「加藤さん、やっぱり落ち着きすぎです・・・」
「おっ高島君」
「何ですか?」
「現在地は十勝平野のド真ん中だ‼」
「いや、そんな訳ないじゃないですか‼」
「北東に向かって走っているよ?」
「そういう問題じゃなくて・・・」
「阿寒湖まであと150Kmだ‼待ってろよ~マリモッコリめ‼」
「どんだけマリモッコリ好きなんですか‼ってか北海道っておかしいし‼」
「いや、だってカーナビではそうなってるよ?」
「だってじゃなくて・・・さっきまで本州走ってたんですよ?」
「そうだよ?」
「何でトンネル出たら何百キロも離れたところ走ってることになってんですか‼」
「国境の長いトンネルを抜けると異世界だった・・・ってことで良いんじゃない?」
「良くないです‼ってか何普通に異世界とか言ってるんですか‼」
「だってこの前異世界で死んだばかりでしょ?同じ事が起きないなんて考え難いし、むしろこの状況からすると、また異世界来ちゃったテヘッ、って考えるのが普通じゃない?」
「加藤さんのそのポジティブシンキングがうらやましいです」
「いや、ポジティブ違うから・・・」
「ところでこれからどうしますか?」
「もちろんマリモッコリを狩りに行くよ?」
「はぁ・・・そういう意味で聞いた訳じゃないんですが・・・」
「どういう意味?」
「また死ぬのは嫌ですからね、帰る手段をどうやって探すかって意味で聞いたんですけど」
「高島君の言う通りなんだけれども・・・とりあえずさ、手段なんてわかんないからさ、150㎞先のさ、阿寒湖までマリモッコリ狩りに行こうよ?」
「そんなイオンまであと100Kmみたいなノリで言わないで下さいよ」
「ここに居てもしょうがないんだからさ?とりあえず進もうよ。進んだら何か帰る手段がみつかるかもしれないじゃん?」
「珍しく加藤さんが真面目に考えてるふりをしている・・・」
「いや、高島君の中で俺ってどんな人間になってる?」
「加藤さん、もう少しスピード落として良いですかね?」
「どうして?何にもない草原じゃん、歩行者も居ないし車も居ない、このままのスピードで良いんじゃない?」
「確かに状況的にはそうなんですけども、実際草の上走るってのが滑って滑って怖いんですよ」
「ああ・・・そういえばさっきから車が挙動不審だね」
「なんでちょっと阿寒湖(?)に着くのが遅くなりますけどスピード落としますよ」
「まあ、スピード落とす事に関しては車がひっくり返るのも嫌なんで、しょうがないといえばしょうがないんだけども・・・」
「まずいですか?」
「別の意味でまずいと思うんだよね」
「別の意味ですか?」
「もしかして気づいてない?」
「何をです?正直車のコントロールで精一杯で前しか見てないんですよね、所々小さな岩とかもありますし・・・結構避けるの大変なんですよ」
「やっぱり気づいてなかったか・・・」
「何がですか?」
「聞こえない?ドッドッドッって」
「窓ちょっと開けてますからね、風切音が凄くて・・・そんな音してます?」
「ちょっとバックミラーのぞける?」
「それくらいでしたらって・・・っっっ‼加藤さん‼っっっ‼あれはドッドッドッじゃなくてドドドドドドドドドドドドドドドドですよ‼」
「気づいた?」
「気づくも何も・・・何ですかあれ‼」
「俺に聞かれてもわかんないけどさ、気づいたら、さっきからずっと追っかけてくるんだよね、しかも段々と数が増えてきてるんだよね~」
「でっかいイグアナ?違う・・・恐竜?」
「高島君‼前見て‼前‼前‼」
「っっっ・・・危ねえ‼」
「ちょっと‼もう少し優しくハンドル切って‼」
「無理です‼もういっぱいいっぱいです‼」
「もっとスピード出して‼追いつかれる‼」
「加藤さん‼奴等バックミラー一面に映ってますよ‼」
「わかってるって‼もっともっと早く‼」
「もうベタ踏みです‼」
「あぁ~これもうダメだわ、オチ見えたわ、俺もう腹くくるわ」
「加藤さん、オチ見えたなんて言わないで頑張りましょうよ‼」
「いや、頑張るのは高島君だから」
「何て他力本願‼」
「ってかもうダメだって、すぐそこまで来てるよ?」
「加藤さん・・・完全に腹くくってますね・・・って僕はあきらめませんよ‼」
「いいじゃん、死んだらまた元の世界に戻れるって」
「だから僕は死にたくないんです‼」
「あらためてみると見るとデカいわ~、ガンダム位あるな~」
「全然人の話聞いてないし・・・で、78ですか?178ですか?」
「105かな?」
「30M級ですか‼」
「数どれ位ですか‼」
「俺が主人公なら無双出来る位かな?」
「数えきれないって事じゃないですか‼」
「That's right‼」
「ザッツライトじゃないです‼」
「しかし奴等速いな~こっちが150以上で走ってるのに迫ってきやがる。しかも全然スピード落ちて無いし。恐るべきはファンタジーだね」
「加藤さん‼お願いですから無視しないで下さい‼」
「しかも顔ちょ~怖いし」
「あと5メートル」
「・・・」
「3メートル」
「・・・」
「2・・・1・・・はい終了~」
今回の死亡理由
「圧死」
105クラスの巨体多数に踏まれてしまいました。
合掌・・・