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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第一章 鉄パイプの魔法使い
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魔法×罠猟

 鉄パイプから出た水は勢いを付けすぎて飲むことができず、再度手の平大の水を出してのむ。

 冷静さを取り戻したイザはもう一度鉄パイプを通して水を出してみた。


 ブシューッ!


 素手の時とは比べられない程の水の奔流。それを地面に向けると、土がめくれる様に勢いよく剥がれて行った。


 両端から出るのが邪魔なため、今度は片方を包み込む様にして放水すると、


 ドンッ!


 と勢いを増した水がより遠くまで噴射された。

 両足を踏ん張るが、水の勢いに持っていかれそうになり噴射をとめが、既に辺りはドロドロになり、まるでスコールのあとのようになっている。あまりの惨状に少し反省しながらも、新しく得た力に顔がほころんだ。


 浮き立つ心のまま藪から山道にでて、今度こそ王都に向けて歩き出す。

 瓦礫の上の穴は気になるが、昨日の咆哮の主がいるかもしれないと思うと、怖くなって足早にその場を後にした。


 王都周辺地域とはいえ、辺境にあたる山道にはそうそう盗賊などもいない。

 これといってモンスター等にも出くわさないまま歩き続けること10日、

 とうとう辺境の山間地帯も端が望める所まで来た。


 途中、勘のおもむくままに山野草を摘み、小川では魚を獲る。

 知らない植物もあったが、食用かどうか位のザックリとした特徴などがなんとなくわかってしまう加護の有り難さ。小川のそばでは、群生するシニニ草という強烈な毒草も見つけた。

 根塊には触れただけでも痺れる効果があり、体内に入ると良くて長時間の麻痺、最悪の場合はそのまま心臓麻痺で死ぬ事もある危険な草。

 だがその反面、獲物を仕留める矢に塗って矢毒に利用したり、うすめて服用すれば痛み止めとしても重宝する、イザには慣れ親しんだものだった。


 3つの根塊を採取して、持ち運べる様に枝に吊るして干す間、

 同じくシニニ草の液を流して痺れさせ捕獲した川魚を焚火で焼いて食べた。

 こんがり焼けた魚はしばらく固形物を食べていなかったイザを歓喜させた。


 満腹のイザは王都での身の立て方を思案していたが、案外ケモノやモンスターのハンターとしてやっていけるかもしれないと思いだしていた。


 まだ検証がたりないが、あの野犬達の肉水への執着は罠猟でも重要なエサとして、通用するのではないか?

 また、今回手に入れたシニニ草を混入した肉水はそれだけで罠となるのではないか?

 王都までの途中にはバイユ王国第二の街があったはずだから、それまでにケモノやモンスターの皮などを手に入れる事ができれば、売って現金を得る事が出来るかもしれない。


 そんな事を考えながら、まずは2日ほど山道を歩きつつ、水噴射の精度を上げていった。


 イザの考えた簡易的な罠猟とは、シニニ草の毒を込めた筒に肉水の玉を出して、それを水噴射で20〜30m程先に飛ばすという物。うまく口に入れて痺れた所を、撲殺もしくは水噴射でダメージを負わせて仕留める単純な仕掛けだった。


 獲物を探しながら歩く事2日目の昼間、少し道を逸れて森に入った所に大イノシシの痕跡を発見する。

 慎重に跡を追跡すると、鼻を地面に付けてエサを探す黒毛のイノシシを発見した。その体長は約2m、牙の太さは少年の二の腕程もある立派なオスの成獣。


 隠密行動でイノシシの風下20m辺りに移動すると、痺れ毒を腰に吊るした葉っぱの包ごと鉄パイプに詰める。

 そこに肉水を出現させ、しばらく混ざるのを溜めておき、水噴射でシュポッ!と発射した。


 狙いは微妙にはずれて、イノシシを通り越した地面に着弾する。


 音に反応したイノシシは鼻をピクリと動かすと毒肉水に向かって猛然とダッシュした。

 ガッガッと音を立てながら地面ごとむさぼると、数秒後ドスンッと倒れ込む。


 イザはうまく行ったとほくそ笑みながらも、どの程度痺れ毒がきいているのか、おっかなびっくり獲物に近づいた。


 イノシシを仕留めるに心臓への一突きが良い、だが今は手元に鉄パイプと小さなナイフしかない。

 以前の猟では、長柄の石槍を使用していたが、今回は仕方なしに近距離からコメカミの弱点への水噴射で仕留める事にした。


 恐る恐る横たわるイノシシのコメカミに鉄パイプの先端をあてがい、最大の集束を念じながら射出!

 ボグッ!と凹む頭蓋骨、ビクンッと痙攣したイノシシは死亡する。

 これがイザの記念すべき魔法罠猟での最初の収穫であった。


「アラララララーイッ!」


 興奮した少年の漢の本能が赴くままに、山の神に捧げるダンスと雄叫びが響き渡った。

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