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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第二章 タガル大陸へ
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草の盾服と戦士の観察

驚きの日間ランキング入り!ビックリして小ジャンプしてしまいました。


読んでもらえるって嬉しいっすね!


初めてこのサイトに書いたものが載った時の興奮を思い出し、全身の穴が引き締まる思いです*


今まで通りマイペースに続けて行くので、良かったらこれからも読んでください。

『出来たっ!』


 スイの嬌声が頭に響く。


 イザ、ラヴィ、ドゥーとお供の戦士の一行が、土地勘のある戦士の案内で青の湖目指して旅立ってから、早5日が経過した昼下がり、一行が4mも有る大きな鉈刃草の葉陰で食事休憩をとっている時の事である。


『どうした?』


 イザが聞く、何やら何日か前からスイが下腹で魔力を練成している気配を感じていたが、何をしていたかは分からなかった。


 街道に待たせていた馬車には、定員オーバーで乗りきれず、二人とも進んで爺さんに半金を支払った。

 イザとラヴィだけでもギュウギュウなのに、更に増えたメンバーを詰め込まれて爆走される事を思うと、歩きの方が遥かに楽である。


 そこからの旅は、襲いかかって来る野犬の群れや、剣角肉食犀ソード・ライノなどが居たが、ラヴィの大剣で軽く蹴散らして、進んでいる。


 そして、槍葦の種や鉈刃草の種等の新たな草魔法の触媒や、草原ウサギ等を狩って食料を得たりと、順調な旅を続けた。


 今もジューシーなウサギのモモを焼いて木の実と一緒に食べている所である。


『いいからちょっとジッとしてて』


 スイは言うが早いか、イザの手首に巻いた種に魔力を注いで行く。


 今では、スイの考えで手首にあらん限りの種を巻きつけている、お陰で何をするにもジャラジャラと邪魔となっているが、命には代え難い、今まで草の盾で何度も命を助けられてきたのだ。


 海綿草、鉄木、粘蔦、シニニ草(麻痺の草)、槍葦やりあし、鉈刃草と食料以外の種に魔力が集中すると、


『行くよっ!』


 との掛け声と共に、ブワッと草魔法が展開されて行く。


『早く肉水を同調させて!』


 イキナリの注文に戸惑いながらも即座に魔力を同調させていくと、全身の地肌を駆け抜ける蔓。その感触に「うひゃっ!」と身じろぐイザを、


『動くなっ!』


 スイの号令が轟き、反射的にビシッと直立する。


 周囲の者は何が起こっているのか理解出来ず『はて?』という表情でイザを見たが、暫くすると、また何時ものスイ絡みかと納得して、何事も無かったかの様に食べ始めた。


 そう、今やスイの存在は仲間内では周知の事実であり、その声こそ聞こえないが、判断能力や魔力は高く評価されているのである。


『もういいよ』


 スイの許可を得て体をまさぐるイザ、なんと薄い繋ぎの服が全身を覆っている。

 何とも不思議な素材で、木綿の様な肌触りとある部分はしっかり硬い鉄木の風合い、それらが極自然とマッチした枯草色の渋い生地だった。


 所々に種が絡みついているものの、その存在は極限の軽さとあいまって、意識しないとまるで着ていないかのようだった。


『名付けて草の盾服』


 自慢気なスイは『試験するわよ!』と言うや、腕の鉄木をボッ! と大きな盾にしたり、海綿草をバンッ! と膨らませて全身を覆う球状にしたり、槍葦をシュバッ! と伸ばし、地面を貫いてイザを浮かせたりした。


 至る所に種が忍ばせてある。また、葉脈の様な管が全身に入っていて、自在に移動できるようになっていた。


 お陰でイザのボロボロの服は完全な端切れと化し、地面にハラリと着地して屑となった。


「あゝ」


 半べそのイザ、先の戦闘もあって、初めて買った思い出の服は全て無くなってしまった。


『メソメソするな! 新しい服は最高でしょうに?』


 思い出という概念の無いスイにとっては、今がベストであればそれで良いのだという盤石の理念がある。

 初めて買った記念品などという軟弱な考えは、到底理解出来ないものだった。






 ワンジルは生粋のジョンワ人、25歳の青年で、以前からコーラルに付いて戦いを経験してきた。ドゥーが見習いになった頃から御付きの護衛に任じられ、以降どこに行くのも一緒である。

 山で夜叉神にトドメを刺した時に槍で押さえつけていた内の一人で、今回の旅にも当然の様に付いて来た。


 地面に腰掛けた彼は、ウサギ肉を食いちぎりながらビックリ人間イザを見つめる。

 コーラルから言い含められている通り、型にはまらないイザとスイのコンビは、見たこともないタイプで、逞しく頼りになりそうだった。

 イザのストレートな性格と、スイの生物的な判断も好感が持てる。


 そのあと隣で同じくイザを見てビックリしているラヴィを見た。

 獅子族の女戦士は時々ジックリ観察する様にイザを見つめている。


 だが、ワンジルもラヴィを観察しているのだから人の事は言えない。


 彼の父も戦士、その父も戦士という、誉高い戦士の一族として、村長や呪術師の元、今迄も数多の戦いを経験して来た。

 その彼もラヴィの戦いを間近で見た時は寿命が縮まる思いがした。

 咆哮一発、完全に萎縮した哀れな襲撃者の首を、ポポーン! と草でも刈り取る様にはねて行く。

 隣で同じく萎縮する自分達も首を竦めて身を固くするしかなかった。


 多分ドゥーの、いやコーラルの呪魂を受けて向かって行っても、アッサリと返り討ちにあってしまうだろう。

 それ程驚異的な力を感じさせる。味方で良かったと思う反面、油断ならない相手との意識は取れない。


 ワンジルはドゥーの唯一の護衛なのだ、次代の呪術師を何としても守り抜き、故郷に帰すことを固く誓っている。

 いついかなる時も最悪の事態を想定しておき、いざという時には最適な行動を取らねばならない。

 だが、自分はただの戦士、村一番の槍使いとはいえ、その限界もよく分かっている。

 だが、それ故にコーラルもドゥーの護衛として自分を付けたと認識している。


 〝弱い事を理解している〟


 その一点、自己覚知に於いては自信があった。


 ワンジルは呪言の彫られた短槍を握りドゥーを見る。ドゥーは初めて見る草魔法にビックリしつつも手を叩いて喜んでいた。


 この子を村に帰す、自分の命に替ても。いや、全ての外界の者たちに替えても。

 戦士は改めて誓った。彼の信じる唯一の神、おひとつ様に掛けて。

ワンジル


オールスター感謝祭で走ってたアフリカの女子ランナー。


いい名前で、ついパクってしまいました。

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