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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第二章 タガル大陸へ
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ズミーレ探検隊①「異常金塊」前編

 大物遺跡ハンター〝短剣の魔術師〟ズミーレ率いる一団は、イザの発見した古代遺跡〝大聖堂〟の攻略に手こずっていた。


 大聖堂とは遺跡内の部屋が巨大な吹き抜けになっており、まるで教会のような空間が広がっている所からついた仇名である。


 最初のアタックから半年、壁の崩れた階の探索はほぼ終えていた。


 そこまでに費やした費用は300金、警護モンスターとの戦闘や、トラップによる死亡者も出ている。


 其の間に得た宝物は時価10金にしかならなかった。それもモンスターから得た魔石のみの収益である。

 とても採算の合う仕事ではなかったが、何せ守り手のモンスターの格が違う。


『絶対にお宝が眠っている!』


 ズミーレのみならず、彼が率いる〝ゴールドサージ〟の他のメンバーも先に眠るお宝に、確信を持っていた。


 サブリーダーで、アダマンタイト・スコップが主武器の、土魔法工兵〝バラシ〟


 ズミーレの一番弟子にして情婦、魔法盗賊の〝スピーク〟


 二匹の魔犬使いの〝ドゥープス〟


 大盾と戦斧使いの肉弾戦士〝オース〟


 東方魔術使いの侍〝先生〟


 治癒魔法を得意とする光と水の魔法使い〝レジット〟


 補給部隊を取り仕切る、次元魔法の魔女〝アート〟


 その他中堅構成員18名(前衛6名、後衛6名、補給部隊6名)の経験豊かなメンバーが血眼になって探しているのは、深部へと続いている筈の隠し扉。


 頭部にまで彫られた、魔力の入れ墨がじっとりと濡れる程汗をかきながら、探知魔法に集中するズミーレ。


 右手に持つ、彼の代名詞ともなったダガーの透ける刀身には、古代ルーン文字がビッシリと浮かび上がり、魔力のオーラを滲ませている。周囲を他メンバーが護衛する中で佇むかれは、ここに来てやっと先に進むための扉の特定に成功していた。


「ここに間違いない」


 何の変哲もない床に向かってそう告げる。だが喜び浮かれる者は一人も居ない、ここからが一番危険な事を皆が知っているからだ。



 古代〝知の王〟時代の遺跡を発掘する、遺跡ハンターが夢にまで見る宝物庫は、様々な形で存在したが、中でも断トツの収益をもたらすのが古代王宮、それに次ぐのは古代研究所である。


 通称〝水晶宮〟と呼ばれる地底湖に拡がる古代王宮には、一国の全財産を超える財宝が眠っており、発掘首謀者の一人は軍を雇い、国を乗っ取った。それが絶対王制国家〝ブリサガ〟の誕生である。


 国が買える程まで高望みはしないが、大聖堂も水晶宮に負けず劣らず立派な建造物で、華美な装飾が無い事から、何らかの研究所だったのではないか?と推測している。


 扉の大きさを特定すると、そのきわを目掛けて慎重にダガーをなぞる。


 ズミーレの短剣〝メイジダガー〟の刀身は実体のない魔力の塊であり、スルスルと隠し扉の、隙間もない際に入り込むと、内部をさぐった。


 ズミーレの探知魔法と、メイジダガーの感応刃が、魔力の触角となって古代扉を駆け巡る。

 探知魔法と古代の知識、そしてスカウトとしての腕と長年の勘だけがズミーレの武器だ。だが、メイジダガーには固有の能力が有る。


 〝情報操作〟


 差し込まれた物の情報を書き換える能力である。


 故に、鉄の塊に差し込んで、その部分を液状化したり、水に差し込んでその部分だけ凍らせる事もできる。

 ただし、大きな変化には時間と膨大な魔力消費を引き換えにするデメリットもあるが。


 そんな彼が隠し扉の鍵を見つけると、その魔法式を割り出して行く。隣に来た弟子のスピークに思考同調を掛けてもらい、二つの頭で難解な式を解いて行った。



 〝ふっ〟


 音にもならない振動が空間を揺らす。最後に情報操作の魔法を発動させると、魔力の鍵が外れ、音もなく大きな扉が真下に開いた。


 突然出現する、縦5m、横10mもの巨大な穴。一同が吸い込まれそうな暗い穴に息を呑む。


 ドゥープスの魔犬〝アイク〟が目を光らせて覗き込み、穴の匂いを嗅ぎ周る。アイクの目は全ての闇を見通し、鼻は何者の隠匿も許さない。


 もう一匹の盲目の魔犬〝レイク〟は首にしまわれた感覚ヒレを広げると、全身レーダーと化して穴を探る。


 全ての波動をキャッチする盲犬は、本来目に当たる部分からは衝撃波を放ち、反射した波動を受け取る事も出来る。


 ゴールドサージ自慢の偵察犬二匹はドープスの鞭を合図に穴に飛び込む。そして微かな異常にも反応し、合図を送る手筈だ。


 二頭を先頭に、犬使いのドゥープス、探知魔法のズミーレ師弟、大盾のオース、侍先生、治癒師のレジット、その他6名の前衛部隊が地下へと続く階段を降りる。


 サブリーダーのバラシは前衛部隊を見送ると、後衛6名を集め、


「俺たちも続くぞ」


 と言うなり、ヘルメットの顎紐を締め直す、頭に取り付けられた魔具が発動し、眩しい光で暗がりを照らしながら。




 快調に通路を進むアイクとレイクの魔犬コンビは、最初のT字路に差し掛かると、お互いに片方ずつ通路を確認し、また、交代して確認作業を行う。


 〝右に生命反応あり〟


 二匹とも同じ合図を送ると、更にレイクのレーダーに同じく右から魔法的な装置、つまり罠の気配が感知された。


 二匹の意図を汲み取ったドゥープスは、ご褒美のオヤツを与えると、ズミーレに報告する。その生命反応は止まって居るらしい。


 定石通り、一つ一つの問題を排除しながら探索を進めるズミーレは、前衛部隊を少し先に進めると、後衛のバラシ達をT字路まで進めて待機させた。


 其の間にも詳しい罠の位置を特定するアイクとレイク。ズミーレ師弟が近づくと、ドープスが罠の位置と特徴を説明する。


 〝個体認識型のアラームトラップ〟


 非常にオーソドックスな、古代の王宮や研究所などの重要施設に設置される罠の発見に『大聖堂はやはり大物遺跡だ』との思いを強くしたズミーレは、思わずにやける。


 アラームトラップの対処法は避けるか、解除するか、破壊するしかない。

 ズミーレは得意な探知魔法を、それ自身が感知されないように発動すると、どうやら広範囲探査型の感知魔具が設置されている様だと判る。

 こうなると避ける事は難しく、大人数で通ると、そのリスクも増える事になる。


 魔犬コンビを奥の生き物に対する警戒に当たらせ、トラップの感知魔具に接近するズミーレ師弟。上手くトラップをくぐり抜けると、魔法装置にメイジダガーを差し込む。


 古代遺跡の探索は終始地味な作業の連続だった。なるべく戦闘は避け、安全確保しながら進むが、それでも命を落とす危険が付きまとう。経験が全てのこの世界で、トラップ解除に於いてズミーレの右に出るものは居なかった。


 程なく今度は弟子の手助けを借りずにトラップ解除に成功するズミーレ。アイクとレイクを先頭に、また慎重に先に進む。


 生命反応は未だに動きを見せず、そうこうする内に巨大な両開きの扉にたどり着いた。


 今ではズミーレの探知魔法にも〝ドクドク〟と脈打つ生命の息吹が感知される。


 調べると、扉にはトラップや魔力の鍵などはない様だ。


 大盾のオース、侍先生、前衛の戦士達を先頭に陣形を作ると、残りの前衛二名が扉に取り付いた。


 重々しい扉を一気に開くと、そこには信じられない光景ーーいち面に輝く黄金の間が遥か先の壁まで続いていた。


 呆気に取られる一同、黄金の照り返しを受けたメンバーは、先程まで高めていた戦闘意欲が消し飛んでいた。

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