草原の死闘
少しG成分あり、ご注意下さい。
G苦手で読み飛ばした方へ概略↓
初狩を指導したソウジャと別れたイザは新魔法〝魔水〟でGを操る。順調に安全圏に進んでいる所でいきなり突撃鳥の群れに襲われた。
「ギャーッ ギャーッ」
9羽の突撃鳥は上空で輪を作り体制を整えると、獲物の周りをグルグル周って隙を伺った。
スイが展開した鉄木の盾に肉水の効果を足すイザ。肉水を吸収して爆発的に大きく硬くなった盾は、根を生やし地面に固定されている。それは早々に破られない様に思われた。
だが目論見は甘く、轟音と共に突撃して来た2羽の嘴が、たやすく鉄木の盾をぶち抜く。そこから嘴を捩じ込むと、強引に首まで突っ込み、中のイザをついばもうと突きまくる。嘴が左上腕に当たって少し血が出た。
イザは狭い鉄木の中で、近場の一匹の目を狙い撃ちすると、刃水が命中して片目を貫通した。
騒がしくわめき、羽ばたこうとする鳥に、スイは鉄木の枝を巻きつけ、そいつを雁字搦めにしてしまう。
「グーッ、グーッ」
クチバシをきつく巻き締められた鳥は、呻く事しか出来ない。その隙にもう一匹はサッと首を抜くと飛び去って行った。
集団で突撃されたら、直撃は免れないだろう、と焦るイザは、空いた穴を塞ぐスイに『ちょっと待って』と念話を送ると、鉄パイプを突っ込んで外に向かい肉水を射出した。
大精霊に与えた程の濃い肉水が10m程離した所に着弾する、その刹那。
〝ガガーンッ! バサバサバサーッ〟
突撃鳥達が我先にと殺到し、周囲にはもうもうたる土煙が上がった。急激な魔力の消耗に目がチラつく中、イザは盾の穴から狙いを付けて、一羽二羽と刃水を当てて行く。
近場の突撃鳥の羽が鉄木盾にバシバシぶつかるが御構い無し、次々と刃水に切り刻まれながらも肉水に殺到する。
突撃鳥達は血みどろになりながら狂った様に地面を突き続け、もつれ合った。
邪魔な存在の仲間を攻撃し合い、刃水の攻撃も受け続け、あっという間に数を減らし、遂に最後の一羽の首が跳んだ。
静寂を取り戻した草原には吸収しきれない血の海が広がっていら。
「ぶふーっ」
脱力したイザは、魔感知を働かせつつもガックリと膝を付いてかがみこむ。息は粗く、肩で息をしていた。
突然の戦闘に手が震え、膝にも伝っていく。スイに促され、突かれた腕を洗い流すと、回復水を薄く塗り込んだ。
『魔石の回収!』
スイの容赦ない指摘にハッとしたイザは、偵察ローチの残骸から魔石を取り出すと、突撃鳥の死体も詳しく調べ出した。
スイが言うには、突撃鳥からも魔力を感じるらしい。
『あった!』
突撃鳥の上嘴にある瘤に魔石が埋まっていた。スイの推測では、突撃のショックを和らげたり、貫通力を上げる能力を助ける為にこの位置に有るのかもしれないとの事。
大きな嘴をこじ開けると、内側の奥に塊が見える。口内からだと少しは柔らかく、取り出し易い様だ。
鉄パイプの先に精霊ナイフを生み出すと、スパッと切り開いて魔石を取り出す。水洗いしたそれは、小石大の紅く輝く綺麗な魔石だった。
次々と魔石の回収作業をして数を数える。ひーふーみー、全部で紅石×9、茶石×1、既に取っていた茶石を含めずとも、課題の10個をクリアーしている。ウキウキしながら魔石を革袋に入れて、背負い袋の底の方に仕舞い込む。
『やった!これで帰れるぞ!』
喜びも束の間、
『鳥の魔石が一個足りない』
スイが冷静に念話を寄越した。と、同時に
「グーッ、グーッ」
風景の一部と化した鉄木の中から縛り上げられた突撃鳥の篭った鳴き声が響いて来た。
『どうしようか?』
イザは正直、鳥の処分に一瞬悩んだ。今日は殺し疲れた、普通の狩では必要な分しか殺さないのをポリシーにしているイザにとって、襲われたとはいえ、一度に10匹も魔獣を狩った事は非常に気持ちが悪い。
が、悩んだ結果結局殺す事にした。魔石は高く売れる、紅石の価値が高かったら、きっと後で後悔するだろう。
貧しいイザが生き延びるには、貪欲に生き抜く以外選択の余地はない。
鉄パイプを構え鉄木に近寄ると、鳥の頭が出る様に木を操作する。鉄パイプをコメカミに付けて今にも突き殺そうという所で、
『まずい』
スイからの警告に辺りを伺うと、遠く谷側から黒雲の様な靄が湧き出していた。
『アサルトローチの群れだ!』
みるみるうちに大きくなる黒雲は推定で千を超える魔獣の群。偵察ローチの帰還がない為、草原まで追って来たアサルトローチの死の行軍だった。
その数にゾクッと背筋を凍らせるイザ、走っても、隠れても、到底逃れる事は叶うまい。
咄嗟に鉄木に絡め取られた突撃鳥を見た。
『それしかない』
スイも後押しする。木を操作して、アサルトローチの群と反対方向を向かせ、無理やり嘴を開けさせた。
残り少ない魔力を絞り出す様に魔水を生み出すイザは、この時ほど発動の遅さに歯噛みした事はなかった。
やっと完成した魔水を口に流し込む、もちろん命令は〝真っ直ぐ飛び続ける〟だ。スイが鉄木を変形させて突撃鳥の腹に籠を作ると、イザは中にスッポリと収まった。
その間にもアサルトローチの群れはドンドン近づいて来る。慌てて鉄木の戒めを解いた瞬間、突撃鳥は地面を蹴って飛び立った。
物凄い風圧と加重に押しつぶされる。魔力消費の眩暈も凄く、頭がジンジン痛くなって来た。
うずくまり頭を抱えると籠の隙間から後ろが見える。飛行して来たアサルトローチが突撃鳥の死骸に取り付いて貪りはじめる。
突撃鳥が少しづつ高度を上げて行く、時々フラついてナナメに傾くのは片目を潰したせいか?
イザが寒さに震え出した頃、アサルトローチの行動圏を抜けたであろうが、次にどう降りようか途方にくれた。
突撃鳥はまだ魔水の支配下にいるが、いつ醒めるやも知れない。
落ちたらまず助からない高度で支配が解ければどうなるか想像すらできなかった。
スイの操作で突撃鳥の長い首を鉄木の根がビッシリと覆い、それを伝う様にソロソロと鉄木の籠を頭の方に寄せて行く。
もう一度〝ゆっくり降りる〟魔水を飲ませねばならない。
イザは残り少ない魔力を魔水に集中し、スイは口元ににじり寄る。
片目の突撃鳥は、重心が狂ったせいで更にバランスを崩すとフラフラと危うい飛行を続けた。
イザが魔水を完成させた頃、籠も嘴に辿り着く。鉄木を操り強引に嘴を開けると、鉄パイプを突っ込み魔水を流し込む。
命令を書き換えられた突撃鳥は次第に高度を落としていった。朦朧とした意識の中、イザは霞む目で急速に近づく地面を見る。
重心の狂った突撃鳥は片目で更に遠近感も狂わせ、羽から地面に突っ込んだ。
辺りに飛び散る羽、血、籠。
籠はコロコロと転がって中のイザは何度も地に打ち付けられて意識を失ったーー
『仕方ない』
スイは鉄木の根を伸ばすと、羽を折ってもがく突撃鳥の首に絡め、締め上げた。
バサッバサッと最後の抵抗をする突撃鳥も、呼吸が出来なくなり、しまいには力尽きた。
鉄木は地面に根を生やすと、籠を守る様に生い茂る。
『お疲れさん、トドメも躊躇する甘ちゃんだけど、お陰で助かったわ』
相手は返事もしようが無い、スイの一人念話が草原に吸収された。
好きな木材は「アイアンウッド」「ハワイアンコア」「スネークウッド」です。




