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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第二章 タガル大陸へ
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生き残るために

 ギョランが地図を書いてやると、


「今度からちゃんと地図を用意しときなさい!」


 完璧な逆ギレで言い切ると、さっさと去って行くセレミー。余りな言い方に呆気に取られつつ『ま、いっか』人それぞれとイザは頭を切り替えた。


 何せ彼女のお陰で近接戦闘も大分自信がついてきたし、後は魔法を鍛えれば自分はかなり強くなれるのではないか? 勝手な目論見にワクワクするイザに、ギョランが言うには、


「最初にいっとくけんど、水魔法は戦闘にむかねーぞ」


 彼の説では水魔法には火魔法程の威力がなく、土魔法程の硬さもなく、風魔法程の早さも射程もない。総合的に戦闘に向かない魔法であると結論付けた。


 ガッカリするイザを見て、その代わりサバイバルに関しては最強だと胸を張る。

 生きていくのに必須の水を生み出し、傷を負ったら回復魔法を使い、魔法防御に最適な水の盾を駆使する。


 そのギョランは盾魔法を得意としているらしい。一度だけ見せてもらった水の盾はキラキラと魔力がたぎる蒼く澄んだ巨大な方形盾だった。


 また、一瞬の爆発力には劣るものの、噴射圧を変える事により切る力を付与したり、酸の水をジワリと浸透させて溶かしたり、油圧ジャッキの様に地味に力を発揮する事もできる等、変則的な戦闘能力はあるとの事。


「おめえさんの肉水もそうだべ」


 ギョランの指摘に考えるイザ。飢餓状態のあの時、他の魔法だったら死んでたのではないか?

 シニニ草を混ぜてのイノシシ狩りや、ゴブリンとの戦闘。特にゴブリンシャーマン戦での黒狼を利用しての勝利。そして、セレミーに対する意外な効能。

 これ程使い出のある魔法も珍しいかも知れない、他の魔法は殆ど知らないがーー


 確かに硬さ、早さ、威力に関しては他の魔法に一歩譲るとしても、そこに関してはいずれ持つ予定の仲間に任せればいい。

 仲間の活用はダグラスからの教えでもあった。自分に出来ない事はサッサと諦めて仲間に任せ、自分の長所を伸ばして仲間を率いれば良い。

 獣ハンターとして群を率いる姿を夢想し、少し気合の入ったイザはモクモクとギョランの課す修行に打ち込んだ。



『ほんにこの子はええ子だけんど、それだけに気がすすまねー』


 それがギョランの偽らざる気持ちだった。


 ダグラスやサイプレス教授、バーモールの書状から、イザの持つポテンシャルと育てて欲しい方向性は充分理解しているが、直に教えるギョランには彼に対する親心が湧いてきていた。


 書状によると、黒蝗を呼び出すための魔力強化をメインに鍛える方針が書かれていた。

 それは一番危険な役目を丸腰で行う様なものだ。

 護衛は周囲の者が行うとあるが、数々の戦を経験してきたギョランには状況次第で切り捨てられるイザの姿がありありと想像できた。


 だから短期間にイザの肉水のみならず、戦場サバイバル術を鍛えねばならない。密かに心に決めるギョラン、この様に何だかんだと周囲の者が放って置けない所が、イザの最大の能力かもしれない。


 次の日から、ギョランによるスパルタ教育が始まった。

 先ずは水の魔力を固めて煎じた魔裡藻なる丸薬をわたされ、強制的に魔力を引き上げさせられると、スイを叩き起こされた。


『もっと寝たい』


 と愚図るスイを一括したギョランは


「生き残るためにその①」


 として、スイとの協力魔法である回復水を鍛え出した。

 最初は少しの効能の水をほんの少し出すだけでも精一杯だったが、だんだん魔力を同期させるコツをつかむと、効能も量も増えて行った。


「生き残るためにその②」


 それは強力噴射を刃状にしての中距離攻撃や、棒術と合わせての近接戦闘を、三つ又槍の魔法戦師だったギョランが直接指導し、形にしていく事。


「生き残るためにその③」


 は一番難航したウォーターシールドの生成だった。

 ギョランの最も得意とする水の盾は、彼の戦い方の根幹を成しており、これが出来ない事には戦術も伝えられない。


 最初はほんの小さな薄い盾を作り出すのも精一杯だったが、ある日、スイの草木魔法と肉水魔法を同期させる事で、劇的に強力な盾の生成に成功した。これにはギョランもビックリして「大発見だべ!」と喜んだ程である。


「生き残るためにその④」


 それは水魔法運用による索敵、周囲の水分を感知して生物の存在を感知する方法だった。それ以外にも、ギョランが知る戦場で生き残る術を残らず叩きこまれた。

 もちろん、肝心の肉水は一番時間を掛けて鍛えあげられた。結果、次元の違う魔法と言える程の進化を遂げて行く。


 そして南国の冬を越し、季節を更に一巡させた頃、見違えるまで成長したイザがいた。


 身長も伸び、肉水の栄養を吸収して身も厚くなったイザは、すでに青年手前と言ってもいい位の佇まいでギョランの前にかしずく。


「大分形になってきたな、そろそろ仕上げにはいるべか」


 ギョランは彼に取って置きの仕上げを用意していた。

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