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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第一章 鉄パイプの魔法使い
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騎獣のエサは肉

 治療院での用事を済ませ、イザを拾ったダグラス達は、遺跡ハンターを統括するバイユ軍シュビエ分隊本部に向かった。


 各種ハンターは細分化されて各街の国軍本部が統轄しており、遺跡ハンター部門も莫大な利益を生み、軍の資金源となっている。


 今回はイザの見付けた遺跡の発見報告と、そこから軍が得る利益に対して発見者としての取り分の交渉及びイザの登録に来ていた。

 それが済んだらイザはハンターとしての登録証がもらえて、その国での軍との取引などが行える様になる。


 今回の交渉では軍が得る利益の一割をイザとダグラスで折半する事に落ち着いた。遺跡ハンターの顔役であるダグラスは、発掘調査に派遣する者の選別にも協力する。

 今回は、ダグラスの信頼厚い〝短剣の魔法使い〟ズミーレが街にいた為、発掘調査を依頼した。


 各国軍に管理されるハンターも、当然国を跨いで出稼ぎに行く。それどころか、拠点を持たない者も数多くいる。

 その為、ある一定のレベルを超えたハンターには認可が降り、国を自由に行き来する権利が与えられている。


 ズミーレ達も自由権を持つ遺跡専門のハンター組織として各地を転々としており、今回腕の良い彼らに依頼出来たのはダグラスにとってはもっけの幸いだった。


 入れ墨だらけの厳ついスキンヘッドのズミーレと硬い握手をかわしたダグラスは、後の一切をまかせると旅の食料を買い込む為、食品街に来ていた。


 ダグラスの鞄は最高級魔具で、手提げサイズの中に買い込んだ食糧を驚くほど詰め込んでいく。

 野菜や肉など、なま物も次々投入して行く為イザが呆気に取られていると、「魔法だから」と呆気なく言われた。


 ダグラスの乗る車を引く騎獣は二頭立ての四足トカゲで、肉食獣である。なんと竜の血が入った種であり、最高速度は車を挽いていても50キロを超え、馬力もスタミナも最高レベルを誇る。だが残念な点は燃費の悪さで、二頭で一日に生肉を百キロ近くも食べると言う。


 新鮮な生肉を何頭分もバックに詰め込むさまを目の当たりにしたイザは、『普通に歩くからそれ食べたい』と思いながら唖然と見守った。


 門でイザの滞在証を返却すると、三人は一路王都を目指した。


 旅の途中、ダグラスからは読み、書き、ソロバンの基礎と棒術を、ズカからは射撃の基礎と隠密行動の手解きを受ける事になった。スラムの子供を部下に育て上げたダグラスにとって、イザに読み、書き、ソロバンを教えるのは造作もない事で、元々頭自体は悪くないイザは半月の間に基礎中の基礎を覚える事ができた。


 また、ダグラスの棒術は、元々腕っ節に任せた荒削りな物だったが、様々な流派の良い所を独自に取り入れて洗練されて行った物で、素人のイザにとっても効果的な戦闘手段となりそうだった。





 イザが空中高く放り投げた枝に、カッ! と茶羽の矢が突きたつ。ズカ先生による動体射撃のレッスン中に模範演技として枝当てを見せる。


「先ずは自分の矢がどの位のスピードでどの曲線を描いて飛んで行くかを把握、然るのち獲物をしっかり補足して、動きを予測する。矢の到達時間の後にどこまで移動するかを計算した後発射だ」


 神技めいたズカの射的に、イザは自分にもできるのか不安になる。


「距離が離れると風の計算も出てくるが、先ずは感覚を掴むことだ。それは何回も撃つことで自然とわかる様になる。だが毎回考えながら撃たないとあまり訓練にならない」


 ズカの投げる枝を水噴射で狙ったが、大きく左に外してしまう。


「止まった的にいくら上手く当てても実践では使い物にならない。だが自分の武器がどの様な軌跡を描くか把握しないと始まらない、先ずは発射スピードと弾道の安定化と把握、その為にも考えながら打ちまくれ」


 以上! とズカは車輪の調整作業に戻ってしまった。

 子供の自分が即戦力となる為には、水魔法を正確に使いこなさねばならない。その事を理解しているイザは、時間があれば走る車から水弾を発射し、弾道や速さの感覚を覚えていった。


 ある日の晩飯後、ダグラスが空瓶を取り出し、イザに肉水を溜める様にと渡した。以前よりかなり楽に早く出せるようになったピンクの液体を、瓶の中に生み出し栓をして渡すと、ダグラスは早速魔鑑定する。


 〝イザの肉水〟


 イザが生み出した栄養水、200cc飲む事で一日分のカロリーを補充できる。

 生臭く、薄いピンク色の半泥状で、味は不味い。

 獣や虫など野生生物に対して独特のフェロモン様の興奮作用をもたらし、強烈に惹きつける。

 上記能力の効果上昇の他、更なる進化の余地あり。


「うむ」と頷くと、「いけるな」とだけ言われた。


 何もわからないイザは、ただ何と無く嬉しくて「うん」と頷き返した。

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