06
え~、自分で05話まで読み返して気付きました。
なんだこの誤字脱字の多さはっ!
ええ、改稿しましたとも、全てしましたとも!
まあその話は置いといて、今回約6000字といつもの約1500程度少ない字数となっております。
いや、やっぱ話の区切りのいいところで終わりたいじゃない?
ご了承してください(´;ω;`)
さて、どうしようか。
今、俺は絶賛悩み中だったりする。
理由は、わかるかもしれないが、”痛み”についてだ。結局、一度でもMobの攻撃を受けてしまえば、それは知られるし、一度誰かに知られれば、そこを発信源にしてその話は知れ渡ることになるだろう。よって、今ここで俺がそれを公表しようが、しまいが結果は同じ、という事になる。
だからと言って、これを公表するのはどうかと思う俺もいる。
これは弓弦やヒロに言ったことよりもさらに影響力が強い。弓弦やヒロに言った、痛みは地球と同じかそれ以上、と言うよりも、ヒールなどのスキルで傷を直しても痛みは引かない、の方がよっぽどだ。前者では、やはり地球に戻りたいと強く思う人達ならばフィールドに出るだろう。死にはしないし、傷は戻るのだ。
しかし、後者であればどうだろう。
死にはしないし、傷は戻るが、痛みは直ぐに引くわけではない。
つまり、致命傷な程の傷を受け、運良くヒールで回復できたとして、その致命傷な程の痛みは継続して受け続けなければならないのだ。ゾッとする話だ。
取り敢えず、弓弦やヒロには話すべきか?
自問する。そして自答はこうだ。
「弓弦、ヒロ。最後に一つ、話さなければいけないことがある」
「ん?」
「まだあんのか?」
俺は愛璃に説明した通りのことを話す。
「おいおいそりゃぁ……」
「ちょっとなぁ……悪ければ8割のユーザーが街に引きこもるぞ……」
やはりそう思うか。俺もそう思った。
しかし、どうやらこの2人は自分たちのことは考えていないらしい。
「お前らはどうする?」
俺の問に、さも当たり前なことを返すように弓弦が答える。
「俺れはって、お前に付いて行くって決めて時に決心はついてんよ」
「そうそう、死んで復活させられるのだって覚悟してるしな」
愛璃は?と愛璃に目線を向ける。
どうやら詭弁のようだった。
この3人既に決心、覚悟を決めていたようだ。いや、俺が決めろといったのか。
自分で言っていてその事を忘れているなんて、結構俺も焦っていたのかもしれないな。
「はぁ……」
徐に大きな溜息を俺が付いた。
「やっぱ、気~張ってたか」
弓弦が破顔しながら言う。
「まあ中学生だもんな、しょうがないだろ」
ヒロも苦笑しながら言う。
「ふふ、まあそういうことだよ、ふぅ」
愛璃は微笑みながら俺の頭を撫でる。
おい、やめれ。弓弦やヒロが羨ましがってんだろ。
「なんつ~か、強いよな、お前ら」
「それお前に言われたきゃねぇよ」
「同感だな。第一、今だって痛みは継続してるんだろ?よく平気でいられるな……」
後半をヒロが顔を引き締めて言う。
確かに、常人からすれば気味が悪いかもしれないな。
「臭いこと言うけど、内面の傷とどちらが痛いか考えれば、全然余裕だぜ?」
俺の名言、もとい一言に弓弦とヒロは考え込む。
「確かに……そうだね」
愛璃は直様納得したようだ。
俺は愛璃の本質を知った時に少しだけ勘づいていたが、やはり愛理”も”過去に辛いことがあったのだろう。でなければ、”俺たち見たいな奴”が”ネットゲーム”を廃人と呼ばれるまでプレイし続けているわけがない。
愛璃に続き、弓弦やヒロも「そうだな」と納得する。この、俺が言った一言は、多少なりと内面に傷を負っている奴にしかわからないはずなのだが、どうやら2人も過去に何かあったらしい。
まあ……何かあれば話を聞いてやらんことも……ないかもしれない。
「なんか一瞬、ふぅがツンデレに見えた」
「愛璃ちゃん」
「やめてください、お願いします」
愛璃の機転で空気が和らぐ。やはり、愛璃の方が俺より上手だと、俺は思う。まあ軽く笑っている2人は愛璃の機転にすら気づいていないのかもしれないが。
「さて、検証は終わったし、一端街に戻ろうか。情報を伝えると同時に、やっぱりまだ色々なことを検証しないといけない」
「言えてるわな。まず料理は地球と同じように作れるのか、とか。あ~後パーティーについての細かい設定とかギルドについてとか…他には人間同士で”殺し合い”ができるのか、とかな」
弓弦の最後の一言に俺達は気を引き締める。
それが一番の問題だと、俺も考えていた。そんな事が可能であれば、この世界ではスキルを使うことが出来るのだから大量殺戮なんかも余裕で可能になる。それは現状もっとも避けたいことだ。
「大量殺戮なんてやられた日には、フィールドに出るユーザーが減るからな」
「そこなんだ」
愛璃が乾いた笑い声を上げ、弓弦やヒロは唇の端をヒクつかせていた。
やだなぁ、
「お前ら3人に危害を加えるような奴がいたら、即効潰すけどな」
その一言で、さらに3人の表情が強ばったのは言うまでもない。
その後、俺達は街に戻るとともにまた二班に別れ、別々に行動を取ることにした。弓弦やヒロはこの【ルードリア】より前の街に、ユーザー達がどのように過ごしているかの調査と、情報収集に。俺と愛璃はこの街での調査と情報収集。
調査と言ってもいろいろある。
宿の場所は何処か、レストランの場所は何処か、どの道を通れば最短か、どこに何があるか。その他もろもろ。しかし、俺達はこの世界に来たまだ間もない。さらに、焦る必要もないのだ。それに情報は人にとって一番大きな武器だ。これがなければまず、生きていくことすら難しい。
だから、最初は情報収集をするのだ。
俺と愛璃は、今トシのもとを訪ねていた。
予めフレンドからメッセージは送ってあるため、トシは直ぐに迎え入れてくれた。
「んで、新たな情報ってか」
「まあそうなる」
「こっちにもありはするが……ちぃせぇからな。どうせお前の情報はでかいんだろ?」
ふむ、やはりリアルの知り合いなだけあって俺のことを少しは知っているようだ。
「まあ、でかいな。全ユーザーの今後にも影響する」
「そりゃまたでかいこって……それとさっきから威圧やめてくれ。俺は別に偽情報なんて言いはしねぇよ。リアでの俺知ってるお前ならわかるだろ」
そう言われてもな…と思う。
威圧なんて、俺がしようと思ってしているわけじゃない。自然に、こう言った交渉の場ではそうなってしまうのだ。まあこれは色んなスポンサーやら事務所の上司などと交渉するときに身に付いたものなのだが。
「まあ、それはいいや。んで、俺には小さいカードしかない。お前はでかいカード。そして昨日のツケが俺にはある。つまり借金が増えるわけだ。俺としては借金が増えることに対してさほど気にしてないからいいんだが、お前としてはどうなんだ?」
「確かに、俺にとっては危ない賭けかもしれない。なんせお前がこれからこのツケを払い切るかどうかは分かんねぇんだからな。でもま、俺にもメリットがある。このツケを利用してお前を好きに使うことが出来る。それだけで十分だな」
俺はニヒルに笑う。
若干額に冷や汗を浮かべながら、トシは「そうか」とだけうなづいた。
今回も、前回と同様トシの方から情報を話してもらう。
「俺の情報ってのは、料理に関してだ。見ての通り俺のパーティーは女だらけなんだがってやめろ、その冷たい眼差しはやめてくれ。第一お前の方がモテてんだろ。いや、ハーレムは自覚してるからいいだろ。って話脱線しすぎだっつの。んま、これは地球上と同じように作れる。唯素材がな……雑貨屋に売ってあるは売ってあるんだが、全部モンスターの食材でさ…作り方がなんとも…ってな感じだな」
横で愛璃が「知ってるし」とか呟いているのは秘密だ。
思い出してみろ、俺が今朝何を食べてきたのかを。どうだ?
「ほう、それはいい情報だな」
俺のその言葉に、愛璃が少し驚愕の表情を俺に向ける。俺が”知っている”情報を受け入れるとは思わなかったのだろう。
トシに最初に情報を提示して貰ったのは、その情報を俺が知っているかもしれないからだ。唯、俺が知っていた場合、この交渉はここで終わり、俺の情報を提示出来なくなる。それは避けたい。あの”痛み”については、言っておかなくてはならないのだ。
それだけ、あれは重要な情報だ。
「次は俺の情報なんだが――」
一通り説明し、トシは「そうか」と頭を振った。
俺の説明を聞いている時のトシの表情は、やはりと言うべきか驚愕、恐怖で強ばっていた。俺たちユーザーは比較的外部からの攻撃を受けない”日本”つまり平和な国で生まれ育っている。だからこそ、”痛み”というものに慣れていない。そんな俺達が、あんな痛みを受けたらどうだろう。恐怖でフィールドに出られなくなるのは目に見えている。
トシのそれは、フィールドに出るユーザーが減ることに向けられている。
リアルでのトシは、危険なんて顧みず、痛みなんて気にしない、そういう人間で数多もの”偽善”を振るってきた。まあ結果的にはそれは良い方向につながっているのだから、こいつには勇者補正があるとしか思えない。いや主人公補正だな。
あれだろ、ミスって女子風呂入る見たいなハプニングとか普通にある体質だろ。羨ましいやつめ。
閑話休題。
「で、お前大丈夫なのか?」
それがトシが最初に発した言葉だった。
「ん、まあな」
「そうか、でもそれじゃ、やっぱり俺が速く何とかしないとな」
やっぱりこいつは、自分勝手に善意を振るっているだけに過ぎない。
「まあ頑張ってくれ」
「お前も、頑張ってくれよ。お前にはやる気がないだけで、やれば俺より遥かに凄い奴なんだから」
「……ありがとよ」
そこまで言葉を交わし、俺達は別れることにした。「じゃぁまた」と告げ愛理と一緒にその場を去る。
「ふぅ」
「どうした?」
「なんか凄い鋭いと思ったら、凄い勘違いもしてたね」
「俺がそう仕向けてるからな。しょうがないだろ」
それもそうだ、と愛璃が嗤った。
俺にやる気がない。そんな事はまったくもってない。いつでもやる気前回だ。唯、その方向がトシとは違う。それをトシはわかっていない。自分のやる気の方向が、普通だと思い込んでいる。
違うんだ、トシ。
お前のやる気の方向は、唯自分の好きなように人を救っているだけに過ぎない。
それは善意だが偽善だ。自慰行為だ。
俺はそんな方向にやる気を向ける気はない。助けて欲しいと頼まれれば助けるお前と違い、俺はまず情報をなるだけ聞き出しメリットを考え、行動する。助けることが悪になる場合もある、その時お前は持ち前の主人公補正で良い方向に持っていけるだろうが、俺には無理だ。
俺は助けることが悪ならば、助けずに見捨てる。
「結局、俺とお前は”違う”んだよ、トシ」
何もない虚空に向けて、俺はそう呟いた。
特にすることも無くなった俺達は、自宅、というのもおかしいが取り敢えず家へ戻っていた。
「ふぅってさ、結構冷たそうに見えて、誰よりも優しいよね」
「何を唐突に」
愛璃が微笑みながら続ける。
「結局ふぅは周りしか見てないってこと。自分のことは棚に上げ、理論的に正解、正義をこなしていく。それもあたかも冷たい奴、やる気のない奴を装い誰にもバレないように淡々と」
「それは間違いだな」
「何処が?」
首を傾げる愛璃。
「俺は仲間のためにしか動かない。仲間以外の誰がどうなろうと知ったことじゃない。それが俺」
「つまり、アイドルの時もグループの為だけに頑張っていたと。今回の情報収集も私たちのためにやっていたと?」
「そういうことだ」
「そう、それなら尚更凄いよ。そのつもりでやっていて、その他大勢を救っていることにふぅは気づいてるんでしょ?」
愛璃が試すように問うてくる。
「本当やりにくいなぁ……まあ気付いてるよ。でもそれはいいことだろ。別にどうしなきゃいけないわけじゃない」
「そう、良い事。しかも自分本位じゃなく、偽善でなく、それが出来る。そんな事が出来る人は、少ないと思うんだ」
へぇ、と俺は意味ありげに笑い、つなげる。
「それは愛璃もじゃないか?愛璃は仲間の為に、俺を支えている。誰の迷惑にもなってない、誰もそれがあたかも当然のように思っている。だから偽善じゃない。俺と一緒じゃないか?」
その問に、愛璃ニヤリと笑う。
「それは、間違ってない。けどちょっと違うかな。まあお互いの勘ぐりは此処で止めよう。続きはまた今度。1日で楽しみを減らすのは勿体無いよ」
「それもそうだな」
俺は愛璃の言葉を肯定し、窓から見える夕日を眺める。
綺麗だ。
そう思うと同時に、やはり此処は地球ではないことを実感させられる。
地球でこんなに綺麗な夕日が見れるはずがない。
俺と愛璃は今、同じベットに腰掛けて夕日を眺め、黄昏ている。
妙な一体感。
「ねぇ、ふぅ」
「どうした?」
「私さ、本当はこの世界に来た初日、怖かったんだよ?」
「知ってる」
そう、知っている。
「ふぅがどんな人間か、私という人間を知ったらどう思うか、不安だった」
「俺限定じゃなく、弓弦やヒロにもだろ?俺だって弓弦だってヒロだって。皆不安だったさ」
「そう、なんだよね。でも、今じゃ不安なんてない。むしろあっちの世界より充「そこまで」……ん」
それ以上言ってはいけない。
そう愛璃を止める。
だってそれ以上のことを言えば、俺達はこの世界で奮闘する意義がなくなる。
だから、止めた。
「なあ愛璃、元の世界に戻ったら、4人でオフ会とかして皆で遊ぼうぜ。考えてみろ、楽しそうだろ?」
愛璃は困ったように苦笑しながら「そうだね」と答える。
それでいいんだ。
こんな”死”と隣り合わせな世界より、あっちの平和な世界の方がいいに決まっている。
一旦話が区切れれば静けさが俺たちを包み込む。
それに乗じて俺たちは夕日にもう一度黄昏る。
丁度夕日が沈みかけ、光が一層強くなるわずかな時間の間に――
――俺と愛璃の手は繋がれていた。
付け加えて、今日もう1話投稿する予定ではありはするんですが、ちと用事が入りまして結構危ないです。
咲哉、危ない橋を渡るッ!?の談です。
以上報告でした!w
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