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LastStory  作者: 咲哉
LastStory:The end and the beginning
16/16

11

4時くらいに帰宅、それから執筆。

推敲なんてry


性夜は寒かったです。

 今、楓と愛璃は【カザリウス】と言う街に来ていた。

 もちろん、移動手段は転移門だ。一回一回フィールドを歩かなくてはいけない、なんて事態だったら面倒臭くて仕様がない。


「ひっさしぶりに来たな~」

「だね。前来たのは……一ヶ月前くらいかな?縷々《るる》元気にしてるかな~」

「彼奴のことだ、絶対、必ず、天に誓って元気だろ」


 そんな他愛もない話をしながら、街を闊歩する2人の姿はまさにカップル。いつものように羨望の視線が向けられていた。だが、それは2人にしては今更の話で、全く気にならない程度の視線だった。たまにその横を歩いている弓弦やヒロは、数多の視線を肌で感じ2人の後ろを歩くほどなのだが。

 慣れと言うのは怖いものだ。

 そう、怖いものなのだ。


「っと、これだっけ?」

「メッセージに書いてあったのは【ルル工房】だったから……ん、あってるよ」

「んじゃ、入るか。それにしても店名安易過ぎないか?」

「あはは、だね」


 そう言いながら、2人は店内へと入った。

 すると、如何にもアニメボイスといった可愛らしい大声が店内に響く。


「あっいっり~!」


 店の奥から飛び出てきた少女が愛璃に飛びつく。

 そこで楓が思ったことは、店の奥からどうして愛璃が来店したのがわかったんだ、と言うどうでも良い事だったが、それはまあそれで。


「はいはい、久しぶり縷々。元気にしてた?」

「見ての通りっ!元気元気、まだまだ幼女だよっ!」


(いや、自分で幼女っていうのはどうなんだ……?責めて少女にしろよ…)


「このロリ体型で少女はないっ!」

「しれっと俺の心の声を読んでツッこむな……まぁ、久しぶり、縷々」

「ん!楓も久しぶりっ!」


 ロリ体型自称幼女の縷々は、そう言いながら楓に抱きつく。それを楓は暖かく迎え入れ、頭を撫でてやる。


「ぬふふ……」


 子供と言うのは扱いやすいものだ。

 一通りのご機嫌取りをやったあと、楓は本題に入った。


「縷々」

「あいさい」


 2人は同時にウィンドウを開き、トレードを申請、受諾した。そこに楓は幾つかの装備とMobからドロップした素材を詰め込んでいく。

 ざっと2分程度かけて詰め込み、確定を押した。


「こんなもんか」

「こんなもんて……一ヶ月で此処まで溜まるものかね……」


 そのトレード欄に詰め込まれたモノの数を見て縷々は呆れたように呟いた。

 愛璃は楓の横で乾いた笑い声をあげた。


「まあ、私と楓は毎日最前線に出てるから……一日数百のMob狩ってるしね」

「……納得」


 縷々はこの2人は…というような目を2人に向けながら、トレード完了したモノを上から見ていく。

 5分くらいかけて見終えた縷々は、微妙な表情になりながら楓に訪ねた。


「これ…全部1つの装備につぎ込む気?」

「そのくらいいつもの事だろ。今更聞くなよ」

「いや…確かにゲームの時は普通……ってかこんなにつぎ込むのは楓くらいだったけど…流石にこの世界で、この量は危ないんじゃない?生活費とか、大丈夫なの?」


 縷々が言っていることは、この素材をいくつか減らして、それを売って生活費にしなくて大丈夫なのか?と言う事だ。

 それ程の額の素材が、何百と表示されているトレード欄を見せつけられたら、誰もがその様に思ってしまっても不思議ではない。

 しかし、楓や愛璃からしてみれば、もっと素材を出してもいいくらいだった。しかし、縷々の負担も考えると、これくらいが妥協範囲かなと言うことで、この数になったのだ。

 それを縷々に告げると、呆れるを通り越して呆然としてしまった。


「いや、いいのよ……わかってたから…その、2人が規格外な事は。第一たった2人で最前線のさらに最前線を戦い抜いている時点で、もう人間超えてるものね」

「まあ俺達はステータスが異常だからな」

「そういうことを言ってるわけじゃないんだけどね……」


 はぁ、と重い溜息をつく縷々を横目に、愛璃は少しだけ苦笑していた。

 

(2人と言うより、楓一人が最前線を戦い抜いてるって言えるんだけどね……)


 そんな事を思いながら、最前線での戦いを思い浮かべる。

 前衛は楓、後衛は愛璃でのパーティー構成。

 楓は前衛らしくMobに突っ込んでゆき、スキルも何も使わず、自らのステータスと身体能力で最前線のMobを蹂躙している。

 愛璃はその支援、いや、唯楓のHPが減るとヒールをかけるだけの仕事だった。

 Mobを倒すのに愛璃の手はいらない。もっと言うと、愛璃は自分が楓の足を引っ張っているんじゃないかとも思っている。それほどに、楓は人間離れしているのだ。

 尤も、スキルを使わずMobを倒す事じたいがおかしなことなのだが、それは愛璃や弓弦、ヒロも出来ることなので、愛璃としては当たり前だと思っていた。

 しかし、楓のように蹂躙できるかと言えばそうではない。

 回復しながら、長時間かけてMobを引き付けながら、隙をついて攻撃していくと言うのが、愛璃や弓弦、それにヒロのスキル無しの戦い方だった。とても蹂躙なんて出来るものじゃない。

 一度、愛璃は楓に自分は足を引っ張ってないかと訪ねたことがあった。

 それに、楓は正直に答えた。

『確かに、足を引っ張ってはいるけど、実際愛璃が居ないと俺のモチベも上がんないしな。適材適所ってなかんじじゃないのか?自分で言ってて何言ってっかわかんねぇけど。え~とな……まあ、俺には愛璃が必要って事だな、うん。ってあれ……まあ…いいか、そういう事だ』

 愛璃は思わず苦笑してしまったことを思い出す。

 訳のわからない楓の答えに、嬉しいと言った感情や、劣等感を覚えたことも。

 しかし、自分が好きになった楓と言う男は、そういう人間だとも理解していた。

 伝えたいことを上手く言葉にできないが、その全てが行動で伝わってきて、その伝わってきた想いが暖かくて……そんな人間なのだ。

 

(本当、楓も楓で勇者体質じゃないのかって思えてきたよ)


「それじゃ、この素材使って、この武器を強化すればいいのね」

「頼むわ、どのくらいかかる?」

「こっちの世界にはスキルがあるからね。1時間もあればできるんじゃない?普通は5分程度で終わるんだけど、素材の数が多すぎて困るわ」

「悪いな、じゃ1時間後にまた来るわ。行くぞ愛璃」


 どうやら愛璃が空想している間に話は進められていたようだ。

 愛璃は楓に従って、店外に出た。


「さてと…これからどうすっか…」

「久しぶりに美胡みうちゃんに会いに行ってみる?」


 楓の表情が引き吊った。


「み、美胡…?いや~なんかお腹が……」

「あ、美胡ちゃ~ん!こっちこっち!」

「ってうぉい!?」


 誰かに向かって手を振っている愛璃の目線を辿って、楓は思わず叫んでしまっていた。

 そこに居たのは正しく美胡。

 その表情はどことなく不機嫌さを示している。

 楓は自分でも知らず知らずのうちに一歩、また一歩と後ろに後退する…が、直ぐに愛璃に腕を掴まれ、逃げられなくなる。

 もう一度美胡に視線を向けると、歩いて楓たちの元へと歩いてきているのがわかる。それで、一層楓の表情が引き吊っていく。それは美胡の表情を見たからだ。

 美胡は……薄く、薄く、微笑していた。


「やっほ、美胡ちゃん」

「おう、久しぶりだなぁ愛璃」

「だね~、なんて言うか、変わってないね」

「たった一ヶ月程度でそうそう変わってたまるかよ」


 2人は普通に談笑しているが、横にいる楓はそうではない。いたるところから冷や汗をだらだらと流していた。


「ところでよぉ、楓~」


 美胡に話しかけられた楓は、どこぞの軍隊のように勢い良く敬礼しつつ、早口で答える。


「なんでございましょうか!」

「いや、ごめんちょっとからかいすぎたな。そんなビクビクすんな…こっちとしてもそんなビクビクされっと悲しくなってくるんだぜ?」

「い、いえ!滅相もございません!美胡様、こんな愚の骨頂の様な男である私に情けをかけてくださる慈悲深さ、感服いたします!」


 楓は未だに敬礼の姿勢で背筋をピンと伸ばしている。過去に何があったか知っている愛璃はクスクスと笑っていたが、美胡は本当に悲しそうな表情になってきていた。


「本当に悪かったって…な?俺はお前に普通で居て欲しいんだよ…」

「そのようなご無礼は私には出来ません!全ては私が悪いのです、その様な慈悲はいただけません!」

「だからよぉ……頼むからさぁ……」


 若干涙を滲ませ始める美胡に、全く気づいていない楓。

 美胡が若干涙をにじませている事に気付いた愛璃は、色んな感情が湧き上がってくる。

 愛璃は知っている。美胡が楓に恋をしていることを。

 だが、そんな事は愛璃の知ったことではない。自分で掴めない恋なんて捨ててしまえばいいとさえ思っている。それに、これ以上楓に近づく女が増えるのも不愉快だった。

 しかし、目の前で泣かれるのはいささか気分が悪い。

 どうしようかとおどおどしていた愛璃だが、そんな必要がないと直ぐに思い知らされる。


「楓……な、頼むから…」


 そこで、楓は美胡が本気で言っていることに気付いた。

 そして、遅すぎたとも思った。

 自分は馬鹿だと罵倒したい。自分は愚かだと嘲笑したい。何を泣かせているんだと殴ってやりたい。


「……美胡」

 

 楓は優しくそう囁きながら、美胡の頭に手を置いた。


「いや、今のは俺が悪い。お前が本気で言ってるって思わなくてさ……翌々考えてみれば、あれも俺を想っての事だったもんな、本当ごめん」


 そう言って、ポンポンと美胡の頭を優しく叩いた。


「……ったく、天然が…下げて上げるとか卑怯すぎるだろ…なあ楓」

「どうした?」

「今度一日、俺に付き合えや」

「あ?んなのいつだって付き合ってやるけど?」


 その言葉に、はぁと溜息を付く愛璃。


「美胡ちゃん、ふぅはこう言う人なんだよ」

「知ってるよ…」

「なにがだよ?」

「「知らなくて良い」」

「さいですか」


 その後は3人で1時間時間を潰し、また【ルル工房】と顔を出していた。


「出来たか?」

「楓?うん、出来てるよっ!」


 そう言いながら、トレードを申請、楓が受諾する。

 そこに表示された装備は、確かに楓が渡したものを強化してあるものだった。


「ってこりゃぁ……」

「うん、私もビックリ。まさかユニーク装備になるとは思わなかったよ……」


 そこに表示されていた装備、武器の名前は【カリバリウス】。楓が愛用している大剣よりもドデカイ剣だった。


■■■■■■

名称:カリバリウス

レア度:ユニーク装備(ルル作品)

攻撃力:9999

能力:全ステータス上昇(大)・部位破壊・ディソード

■■■■■■


「っちょ、なんだこりゃぁ!」


 楓の背中側からトレード欄を覗き見ていた美胡が思わず絶叫する。それほどに、攻撃力、能力が異常だった。


「まあユニーク装備だからね…でもこれはそのユニーク装備の中でもトップレベルの装備だよっ!」

「ま、確かにこの武器ならこれでもおかしくないけどな」

「はぁ!?」


 楓の言葉に再び絶叫する美胡。

 愛璃は今更楓に関わることで驚く事はない。いや、今回は少しだけ内心で動揺していたが。


「ん~、説明ムズイな。取り敢えず試し斬りも兼ねてフィールド出てみっか」

「あっそれ私もついて行っていいっ!?」

「何言ってんだ、あたり前だろ?」


 そうして、4人はフィールドに出た。

 フィールドに出た4人のうち3人は、絶叫を通り越して呆然としていた。

 その中で美胡が呟く。


「何その剣」

「いや、剣は剣」

「へぇ~見た目、縦10メートル横3メートルありそうな剣が唯の剣なんだ」

「剣は剣だろ?」


 本当にわからないといった感じで返す楓に、美胡は呆れたとばかりに溜息を付いた。


「普通の剣ってのはこういうのを言うんだよ」


 そう言って、自分の武器を見せる美胡。

 その剣は、金色に輝いている。


「まさかのエクスカリバー」

「んだよ。俺が持ってちゃわりぃか?」

「いや、お前もそれ剣じゃなくて聖剣だろ」

「あ」


 そんな2人のどうでもいい、しかしとんでもない会話に残った愛璃と縷々は絶句していた。

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