疑惑。
俺は最低だ。
無理矢理真央を自分のモノにしようとした。
他にどうすることも出来なかった。
「かっこわりぃー...。」
ベッドの上に寝転がり、俺は思い出していた。昨日のことを。
*****
「もしもし。平井か?俺、山本っつうんだけどちょっと学校の近くの公園に来てくんねぇ?」
山本・・・!!
「・・・・・わかった。」
何で自分に電話をかけて来たかなんてすぐに予想はついた。
山本―――俺が知らないわけがない。
噂だけど、アイツと真央は付き合っていたらしい・・・。
山本は顔が良い。しかもサッカー部のエース。当然周りの女がほうっておくはずがない。
アイツと真央はくやしいけど、お似合いだ。
俺はもちろんアイツが気にくわない。
公園に着くとアイツが待っていた。
「よう。」
「何の用だ?」
「平井さぁ、真央と付き合ってんだって?」
「それが何だ?」
真央のことを呼び捨てにしたことに無性に腹が立った。
「真央と別れろ。」
「は?」
「だから〜、別れろっつってんの。」
「お前は真央と付き合ってたらしいけど、それは過去だろ?!もうお前と真央は関係ねーだろ?!だいたいもうお前に真央のことを呼び捨てにする権利ねーし。」
「随分と強気だな。お前らもうヤッたんか?」
「・・・お前には関係ないだろ。」
「ふ〜ん。まだか!」
「お前には関係ねーっつったろ!!」
「俺はヤッたぜ?」
―――今何っつった?!
「それでも付き合えんの?わかっただろ?わかったらさっさと別れろ。」
そう言って山本は帰っていった。
―――俺は混乱している。
本当だろうか?真央はアイツと・・・?
「もしもーし」
「俺・・・平井。」
「あっ平井!どうしたの?」
「ちょっと保田に聞きてぇことあるんだけど・・真央と山本が付き合ってるっつう噂あったじゃん?あれってさ・・マジ?」
「・・・・・う・・ん。」
「でもまさかヤッてまではないだろ・・・?」
「・・・・・。」
プッ、ツーツーツー...
―――理解できない。いや、わかりたくもない。
でも今は真央は俺の彼女で・・・。
*****
初デートの日。
俺は昨日聞いた事が気にかかって仕方がなかった。
それなのに真央は、ものすごく可愛くて・・・今日は一段と可愛くて・・・。
でも俺は何も言わなかった。「可愛い」って言えなかった。
真央は山本とのデートにもオシャレをして可愛くしたのだろうか?
こんなマイナスな想像に邪魔をされた。
真央を無理矢理自分のモノにしようとした時、真央は泣いていた。
うさぎみたいに。
本当に最低だ、俺は。
そして俺は涙を流している真央を一人置いて外に飛び出した。
こんなダメな俺を見られたくない。知られたくない。
―――家に帰ると真央の姿はなかった。
落ちている真央の・・真央のネックレスを拾い、握りしめる。
堪えきれないものが涙に代わって頬をつたった。