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In The Fantasynovel  作者: kurora
第一章
7/20

05話 疑問

「どうだ、今日はこれでいいか?」


 俺は昨日の様に木刀を使って不良と盗人を捕まえて、公園で子供達と遊んでいる依頼者の男に引き渡す。


「早いな。急いでいるようだが、なんかやりたい事でも見つけたのか?」

「あぁちょっとな、だが仕事はしっかりやるさ、まだやる事があるなら言ってくれ」

「いや、一日に何人か捕まれば周りは警戒する。今日はもう上がっていいさ、行ってきなよ」

「おう! ありがとう、じゃあまた明日な」


 俺は直ぐに武器屋に向かい、店主に許可をもらい裏庭で剣を振る。


「頑張ってるな、これなら本当に使いこなせるかな」

「当り前さ、絶対にこの武器を使いこなせるような男になってやるさ」

「頑張れよ、努力は裏切らねぇからな。絶対に自分の力になる」


 店主は此処に泊まってもかまわないと一言言って店内に戻っていった。

 俺は剣を見つめる、その黒い剣はそこにあるだけで存在感を発揮していた。

 俺にはとても挑戦的な態度を取っているようにしか見えなかった。この剣を作った職人の意志だろうか、それとも長年使用者の現れなかったこの剣自身の意志なのか分からない。だがその何かが俺を奮い立たせた。


 「……気合入れるか」


 大きく息を吸う、横隔膜を限界まで下げる事を意識し、腹いっぱいになるまで空気を取り入れる。


 「っしゃあ!!」


 腹いっぱいに入った空気を一気に声とともに吐き出す。

 隣接していた林に居た数羽の鳥が一斉に飛び出したのがわかった。

 声自体は大きくない、流石に人の庭で全力で声を上げられないからな。

 空気と声共に様々な雑念を吐きだす。

 これは戦闘態勢に入るのとは別の集中方法だ。

 練習は周りの事を気にする必要が無い。いきなり何かが襲ってくるかもしれないが、その可能性は低いからな、自分の事に集中していても問題が無い。

 俺は目の前の黒い剣と対峙する。練習、訓練、特訓、修行。

 どの言葉でも必要なのは繰り返すことだ。身体が動作を無意識に出来るまで止めない。

 長剣を両手で頭上より高く持ち上げる。

 意識するのは動作の流れと筋肉の使い方、呼吸方法。

 最初はゆっくりと剣を振る。身体が何処を使っているのか、どこを意識すればいいのか、身体に教え込む。

 呼吸も忘れてはいけない。深く息を吸ってはく、血液に絶えず酸素を与えて身体のコンディションを整える。


「っはぁぁぁああ!」


 一振りに何分も時間をかける、焦ると筋肉が緊張し覚えが悪くなる。

 全てにおいて剣に意識を向ける。

 剣はやはり重かった。一度剣を振るだけで大粒の汗が全身から噴き出した。

 だが、直ぐにもう一度同じ動作に入る。直ぐに休憩すると体が忘れてしまう、身体が限界の警報を鳴らしてからが本番だ。俺は何度もゆっくりと時間をかけて剣を振り続ける。

 数十分後、身体が震えてきた。筋肉が限界を告げている、腕が震えて剣がまともに持てなくなっている。

 だがここからが勝負だ。自分自身との戦い、筋肉を酷使し、筋肉が崩壊しているのも解る、だが更に痛めつける、科学的な方法じゃないがこれが俺を強くした一つだった。

 足が動かなくなるまで走り続ける、腕が上がらなくなるまで剣を振り続ける、そうやって限界を超え続け、短期間で他の誰にも負けない身体と心を手に入れる。


「これで……どうだぁあ!!」


 最後に全身を奮い立たせて剣を最速で振り下ろす。

 振り下ろす時の力、更にその振り下ろした力を限界を超えて制御する。


「はぁはぁ、もう腕が上がらねぇな……」


 完全に腕が使用不可能になってしまった。剣を引きずる事何て出来ないし、何かを握る事すら不可能になっていた。


「お前さん、やっと終わったんか?」


 どうしようか考えていると店の方から店主の声が聞こえた。


「おっさん、すまん……腕が上がらねぇんだ。剣を片付けてくれねぇか」

「いや、そこに置いといて構わんよ、お前さんがどれだけ真剣に取り組んでいたかは既に分かった。俺が何回か声をかけても全く気付きやしない、どれだけの集中力だよ」

「ありがとな、そんな正面から言われると恥ずかしいぜ」

「このままだと、本当に一週間で扱えるようになるかもしれんな、ちゃんと値段くらい決めておけばよかったな」

「まぁ破格な値段でなければ俺は払うぜ」

「男に二言はねぇよ、使いこなせるようになりゃタダ同然で売ってやるわ!」

「おっさん恰好良いな、男の中の男じゃねぇか」

「当り前だ、女が武器作って売れるかよ。今日から一週間泊まっていけ、朝から晩までここ使っていいぞ」

「マジか! ありがとうおっさん、正直これから宿に向かうのが辛くてここで寝ようかとも考えてたんだ。じゃあ泊まらせてもらうぜ」


 おっさんは軽快に笑って、俺に布団を用意してくれた。

 俺は既に筋肉痛になっている腕を無理やり動かして井戸水で全身の汗を流し次の日の朝を迎えた。


 その日から俺は朝起きてからバイトまで、バイト終了から寝るまでただひたすら黒い長剣と一緒に過ごした。

 剣は俺を受け入れたのだろうか、3日目の夜、少し軽くなったように感じた。

 バイトも、数人の盗賊集団を一人で捕まえたりと成長が著しかった。

 俺はこの異世界では地球の時より成長スピードが速かった。更に基礎体力も向上していたんだ。

 今思うと、最初のバイトの資材運びは、いつも以上の力を出していたのかもしれねぇ。


「遂にこの日がやってきたぜ」


 アルバイト開始から8日目、剣の修行から一週間が経過した朝。

 俺は店主の前で長剣を持ち上げる。


「じゃあ見ててくれ、俺の修業の成果をな」


 この一週間、全てにおいて全力を尽くした。何時間も同じ姿勢で剣を持ち続けたり、様々な角度からも反撃を可能にする動きを考える。この剣の最大の利点、リーチの長さを利用した攻撃方法、弱点の攻撃速度の遅さの対応方法、様々な状況を仮定して修行を続けた。

 そして、遂に今までの成果を見せる時が来たぜ。


「っはぁぁあああ!!」


 一気に気合を入れて集中する。今までの修業の成果をもう一度行うだけだ。

 何も心配はいらなかった。既にこの剣は自分を受け入れてくれていた。今まで考えてきた剣技を披露する。この一週間で体に染みついた動きに沿って剣を振る。


――――長剣を身体の一部として扱う。


 もう、剣の重さは既に身体が把握していた。

 剣を振る為の力は腕だけでは無い、全身の筋肉やひねり、足運びや全身の移動。

 全てを川の流れの様に無理のない動きをする。

 十分程度が経過しただろうか、俺は剣を地面に突き刺し、修行の成果を店主に見せ切った。

 次から次へと溢れだす汗と呼吸を整えるために静かに深呼吸する。


「これが俺の一週間の成果だ!」


 俺は汗を脱ぎ取って店主に全てを見せつけた。

 店主は俺の姿を見て一度うなずき満足な顔を見せる。


「……正直驚いた、お前さんみたいな人間もいるんだな」

「っしゃあ! ありがとうおっさん!」

「今日はその剣を家に置いていけ、今日中に手入れしておいてやるよ」

「ありがとう、いくら払えば良い?」

「いくらでも良いさ、今日は気分が良いんだ」


 こうして俺はこの世界を冒険するための武器を驚くほどの低価格で手に入れた。

 俺は、自分の物になった長剣の日課になった練習を終えていつもの様に依頼者の所に向かう。


「よう! ……どうした?」


 俺は何時もの様に声をかけたが、その依頼者の顔はいつもと同じような笑顔では無かった。

 それは何かに絶望している様な顔だった。何かを憎んでいる顔だ。

 少しの間、俺はその男を見ていると俺に気が付いたのかゆっくりと近づいてきた。


「……今日は少し用事が出来た。お金は渡すから心配しないでくれ」

「あ、あぁ……大丈夫か? スゴイ顔をしているぞ?」

「大丈夫だよ、だけど今日はちょっと用事が出来た。すまないが今日の仕事は中止だ。金は今日の分も払うから安心してくれ」


 男は俺が止めようとした言葉を聞かず早足で走り去っていった。


「どうしたんだ? あいつ……」


 俺は新しい武器を自慢しようと思っていたのにこれでは何かモヤモヤしたままだ。

 この仕事以外やる事が無い俺は男の行方を追う事も考えたが、今から向かっても間に合わないだろうな、まぁいい一度ギルドに行って簡単な依頼を受けよう。

 俺は大きな剣を担ぎなおし、ギルドに向かう事にした。

 目的地のギルドに到着すると一つの大きく依頼書に人が群がっていた。


「……これを見たんだな、あいつ」


 それは、あいつが最も嫌う依頼だった。


=========最新依頼=========

【兵士募集】

・依頼内容

我が国リーディアは様々な戦争に勝利を収めた。

そしてまたこれからも勝利を収め続けなければならない。

世界を我が国によって統一するため、さらなる戦果をあげよう。

さぁ立ち上がれ国民達、我が国のために戦え。


依頼者 国王レオン・リーディア・リファレイン

・ギルドランク

―指定なし―

・報酬

銀5枚~ [戦果により報酬上昇あり]

・依頼人数制限

無し

======================


 戦争の始まりを告げるこの依頼書は、孤児院の子供達を思うあいつの心を大きく削っただろう。

 そして俺は前から思っていた疑問が大きくなり、この国とあいつの存在を考えるようになった。


「……あいつはこの小説の主人公じゃないのか?」

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