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In The Fantasynovel  作者: kurora
第一章
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02話 仕事 

 街の賑わいから離れて、30分以上歩いたところに教会はある。

 俺達は日が沈む前に何とか走って教会にたどり着いた、走っていなかったら途中で暗闇に取り残され、不安な夜を過ごすことになった事だろう。

 教会は月明りが窓から漏れ出して少し幻想的な雰囲気が教会内にあった。

 教会には俺達のように宿に泊まることの出来なかった先客がいた。

 数は100人強くらいだろう、壁に寄り添っている人やすでに疲れて寝ている人、数人で会話している人達。

 年齢はほとんど10代から20代で数人だが30代以上の人もいるようだ。


「早く寝ようぜ、これ以上起きていても腹が減り続けるだけだぜ、昼から何も食べてないからそろそろ餓死してしまうぜ」

「いや、あまり考えたくないが俺と忠則、どちらかが起きている必要があるな、誰かが起きていれば安全は保障される、こっちには忠則がいるからな」


 俺は周りを見渡し少し警戒した声を出す、それにより俺の意味を読み取ったあかりと忠則は少し雰囲気を変える。


「あ、それって…………」

「……あぁ、そうだよな、俺らと同じ境遇でもこいつ等が仲間ってわけじゃないからな」

「そっか……ごめんね、私のせいで」

「いや、どうせ俺はあまり寝つきが良くないし、一日起きてる事くらいどうってことないんだ」

「俺はどこでも寝れるぜ? 良いだろ」

「そうだな、良いなお前は高校の時もいつも授業中寝ていたしな……」

「でも、黒野はここでずっと一人で起きているの?」

「あぁこの世界の事を出来るだけ知っておきたい教会に者の中にギルドの中の情報、ギルド以外の便利な場所の情報が手に入るかもしれないし、こちらには銀行でのカード発行の情報があるから情報の交換が出来るから有利だしな」


 そう言って俺は銀行で発行したカードを見せる。


「忠則とあかりは寝づらいかも知れないが、先に寝ていてくれ、今回だけは俺があまり離れない位置で聞き込みと情報交換に行ってくる、良い情報が手に入るかわからないけどな」

「わかった、でも眠くなったら俺を起こしてくれていいからな聞き込みはできないかもしれないが、2人に誰も手は出させないぜ」

「そうね、忠則がいると安心だわ」

「あぁ、あかりは頼んだぞ」

「おう! 任せておけ」


 2人は人のいない壁付近によって横になった、忠則はともかくあかりはとても疲れていたようで直に寝息が聞こえた。


「じゃあ、忠則行ってくるから早く寝ろよ、修学旅行じゃないからな」

「なんだよ、ガキ扱いするなって、言っただろ? 俺はどこででも寝れるって」

「高校の修学旅行思いだせよ、お前のせいで俺の睡眠時間は滅茶苦茶だった」

「修学旅行だから仕方が無いだろ」

「忠則お前、今その修学旅行と同じ目の輝きをしているが、気づいてないのか?」

「……まぁ出来るだけ早く寝るさ」


 絶対寝ろよと忠則に強く言い聞かせ俺は聞き込みを開始する。

 数時間たって日が変わったくらいだろうか、時計が無くて感覚でしかわからないが、俺達がこの教会に戻って来てから一度も誰も召喚されていなかった。

 多分、時間の制限か人数に制限があったんだろう、この「The earth without the end~果てしない大地~」は人気小説だ、読者を全てこの世界に召喚したら軽く1万を超える。

 それほどの人数をこの世界は許容できないだろう、そんなことになったら大量の餓死者や、犯罪者が生まれる事は間違いなかった。そのような状況に陥ったら俺達も生きていける可能性はとても低くなる。

 今のところこの教会に居る人数の事を考えると数百人程度、他の場所にも召喚された人物もいると言う事も考えて多くて数千人ってとこだろうか。


 聞き込みを開始した当初はやはり上手くいかなかった。俺はあかりの様に美しい女性ではないし、対して恰好の良い容姿でもない、何処にでもいる大学生だ。

 特に引き付けるような外見の俺は気軽に他の召喚された人達に話しかける事は難しいし、教会に居る者は皆、既に数人のグループが出来ており他者への警戒心が強く俺が近付けるような雰囲気ではなかったのだ。

 だがそれを打開してくれたのが一人の男性だった。


「おい、坊主お前さっきから周りを見てソワソワしているがトイレも一人で行けんのか?」


 その声は寝ているものを配慮しているのか俺にだけ聞こえる様な声で話しかけてきた。

 30代後半か40代前半位だろうか、メタボという言葉が全くその男には感じさせられない鍛え抜かれた体形だった。

 俺は、その男がただ馬鹿にしている訳ではないと分かってはいたが近付いて男の言葉に対して否定をしておく。


「違いますよ、まぁ周りをずっと見渡していたらそう思われても仕方ありませんが、不審者でもなければ怖がりでもありませんよ」

「そうだったか悪かったな、それで坊主はどんな有力な情報を知っているんだ?」

「……俺が何をしたいか分かっているじゃないですか」

「そうやな、でも坊主があんなにソワソワしとるもんでからかいたかったんだわ」

「それは何も言えませんけどね、結局1時間以上貴方以外の人に話しかけられませんでしたし」

「まぁ仕方ねぇ、この雰囲気じゃ誰にも話しかけれねぇさ」

「そうですね、ここだと周りに迷惑にもなりますし外に行きますか?」


 俺は周りの警戒心むき出しの視線と静かに眠っている人達を見てから、男に出入り口を指差して言う。

 男は俺の言葉に頷き静かに音をたてないように一緒に教会の外に出た。


「まずは自己紹介だな、わしは柴田だ、別にフルネームでいう必要無いだろ?」

「はい、俺は黒野って言います、今は教会内で寝ている友達と一緒に行動しています」

「あぁあ近くで寝ていた可愛いお嬢さんとデカイ坊主か」

「はい、それで柴田さんは何時頃ここに召喚されたのですか?」

「わしは多分最初の方だな、毎日暇な俺はこの小説は更新して直ぐに読むことにしてるんだ」

「なら私の情報はあまり柴田さんには必要のない物かもしれませんね」


 この世界の証明書になるカードを柴田に見せて言う。


「なんだそのカード? ギルドにでも必要な物なのか?」

「はい、このカードはこの世界で自分の証明に必要な物です」

「そうなのか、ギルドは行ってないからな、ギルドを発見したときには既に列が出来ていたからな、並ぶのはわしは好かんのだ」

「なら、ちょうど良いです、明日も多分ギルドは並ぶ事になるかもしれないので、先にこれを作っておく事をお勧めしますよ」


 俺はカードの利用方法と説明それに銀行で発行できる事を一緒に説明する。


「そうか、これがあれば便利になるわけだな」

「はい、明日にでも銀行で作った方が良いですよ」

「では、わしからも有力な情報を教えてやろう、当分この教会は安全だ、多分1週間程度なら何の心配もいらないな」

「それは本当ですか!?」

「あぁ、これは本当だ」


 実は召喚される人数対して村人の反応が薄いのがとても気になっていたのだ。

 たとえここは大国の都市だとしてもいきなり数百人もの身元不明者が表れてギルドや酒場、宿屋に集まったのだ、普通この状況は国が動いてもおかしくない現状のはずだ。

 特に都市部でこの人数になると一番大きな中央都市でもこの様な現象が起こらないとは限らない。

 本当はこの教会で寝泊まりするのは危険なのだ。


 柴田は、まずこの世界は小説の何処の時間軸に当てはまるのかを調べたらしい。

 そのため、一番に教会を出た柴田は、ギルドや宿屋を素通りし、武器屋と防具屋、さらに酒場を中心に村人に聞き込みを始めたらしい。

 柴田は武器屋と防具屋で戦争が終息したばかりで売れ行きが下がった事を聞いた。

 そのため、戦場で亡くなった人たちが多く、住民が減少して難民や孤児がいてもおかしくないというのが剛志の予想であり納得のいくものだ。


「だが、多分それだけではないだろうな、これも憶測でしかないが、そもそもこの世界に俺達が一斉に召喚された事はこの世界には認識されていないのではないだろうか」

「認識されていないとは、そもそも俺達は異世界人でなく、この世界の住人で最初からここに存在していたと認識されていると言う事ですか?」

「あぁ、本当ならこの国にわし達はすでに捕えられてもおかしくは無いぞ」

「そうですね、この町の活気からしてもこの国が正常に機能していないとは考えられないですからね」

「そうだな、それともう一つわかった事があるのだが」

「何ですか?」

「これはただで教えるわけにはいかん、お前の事だからまぁ気がつくのも時間の問題かも知れんが」

「そうですか、俺は金もこれ以上の情報もありませんからね」

「うむ、まだわしも金が無いからここ付近で数日は過ごす事になろう、何かあったらここに来るといい、金かそれに見合った情報で出来る事を手伝おう」

「ありがとうございます、では俺はあまりあの二人から目を離してはいけないので教会に戻りますね」

「あぁ俺はもう少し外の風に当たってる事にするわ、あそこは視線が痛いからな」


 俺は柴田にお礼を言って柴田と別れて教会内に戻った。

 今のところ国に拉致される心配は無くなったのが分かったので一つの不安が消えた。

 柴田と別れてさらに起きている人に情報交換の会話を求めたが、やはり警戒されてしまって特に何も得られなかった。

 その後、何時かわからないがだいたい3時頃だろうか、何もしないで一人で見張りをするのは想像以上に辛い事が分かった。

 限界が来てしまった俺は忠則を起こし、見張りを任せ倒れるように眠った。




「ほら、起きろ、黒野そろそろ行動しないと出遅れるぞ」

「そうよ、今日はギルドに行かないともう教会で泊まるのは嫌だわ」


 俺は、2人に起こされて、ギルドに向かう、日の出から見てもまだ6時頃だろう、身体のダルさからしてまだ3時間しか寝ていないだろう、周りの店もまだ準備中だ。


「この村にある大規模ギルドは7時に営業だろ?もう少し寝させてくれ、無理だ、何も考えられないんだ、このままだと異世界人初の死者が出るぞ」

「死ぬ訳ないわ、24時間営業だからこそ出来るだけ人が少ないうちに登録とクエスト受注しましょうよ」

「そうだぞ、昨日は何もできなかったんだ、今日こそクエスト受けて冒険の始まりだぜ!!」

「忠則、冒険も何も俺らに出来る依頼なんてアルバイトか雑用だろ……」

「そうね、準備も知識もなしで森に行ったら死ぬわよ」

「そうだ、一番危ないのはそれだ、ここで死ぬと俺らの世界で死ぬかもしれない」

「な……なんだと冒険者になるはずの俺がアルバイトなんて異世界に来た意味がねぇ!!」


 忠則が頭を押さえて絶望を表現する。


「仕方ないだろ、小説や漫画の様にそう簡単に上手くいくか、はぁそれより聞いてくれ昨日手に入れた情報だ」


 俺は昨日の夜手に入れた情報を眠くて上手く働かない頭を無理やり動かして説明する。


「そういや、いきなり何百何千も難民が現れたらおかしいよな」

「そういう操作がされているのかしら、そうなると誰が操作したか気になるわね、世界かしら、それとも私たちをこの世界に召喚した人になるのかしら」

「あぁ、それはまだ謎だな、元の世界に帰るためには知る必要になる情報の一つだ」

「それよりも、クエスト内容だろ、今聞いた限りだと俺らの出来るものだと日給銅貨80枚くらいって完全にアルバイトじゃないか!」


 ちなみにこの世界の通貨は銅貨1枚で様々なところで物価は違うが日本の100円相当。

 銅100枚で銀1枚と同等。

 銀100枚で金1枚と同等。

 この場合、銅貨80枚は8000円といったところだろうか。


「仕方ないだろ、それより、戦争終結直後のおかげで人員不足で感謝するべきだ、もしかしたらそのアルバイト程度の依頼すら無くて、俺達は異世界生活3日で餓死なんて事もあり得たんだからな」

「そうね、仕事があるだけ感謝しないと、まず3人で今日中に銀3枚は必要ね」

「え、12時間以上働けって言うのか・・・」


 今度は俺が絶望を表現する。

 俺と忠則が不幸を全身で表現しながら昨日と同じ道をたどってギルドに到着。

 昨日訪れたときに比べて行列は大幅に減っていたが、まだ登録受付の場所はスタッフが右往左往しながら必死に沢山の証明カードとギルドメンバーカードを必死に俺達と同じ地球から来た人達を相手していた。

 やはり終戦直後なのだろうか、昨日500人以上来たはずのギルドの依頼書数は全く減った様子は無かった。


 俺達は登録受付と別の場所でクエストを受ける。

 ギルドは依頼の内容によって、ランクが振り分けられる。

 初級ランクFから始まる。

 依頼内容によって報酬は変わるが、F・Eランクの依頼はでも受ける事が可能だ、

 そして受けたランクを達成した事によって自身のランクが決まる。

 それ以上ランクはC→B→A→G.A(金A)となる。

 このギルドランクはランク上昇クエストの依頼を達成するか、一定のランクのクエストを受け続ける事によってランク上昇の権利を得る。

 ランク上昇することにより依頼の危険度や報酬が上昇する。

 特にG.Aランクの人物はゴールドと言って一桁しか存在しない。


 今回の依頼書の内容はほぼ地方の村の復興や人手の足りないところの手伝い。

 俺達は出来るだけ高額で自分に見合うような依頼を探す。


「なぁ、本当にアルバイトじゃねぇか、それも日雇いだぜ? 地球に居た時と全くやる事が変わらねぇよ」

「たー君は文句言わないの、まず必要なお金はちゃんと貯めないといけないでしょ」

「そうだな、俺達が冒険に行くにしても、金と装備と知識の準備が無いとこの国から出ても死に行くようなものだ」

「そうだけどよぉ……」


 忠則はこんなの俺の求めてる異世界じゃねぇと呟きながら掲示板に沢山張られた依頼書を見つめ、俺とあかりと同じようにアルバイトの様な依頼を探す。


「おぉ給料が高くて簡単そうなやつ見つけたぜ」

「なになに?木材、レンガ運び……たー君にしか無理じゃないの、これ」

「そうか、あかりは無理でも黒野もいけるだろ?」

「無理だ、忠則お前は俺の体を見て何十kgもある木材を軽々持てるとでも言うのか?」

「黒野が木材に埋もれている姿しか想像できないわ」

「それは想像出来るな」


 爆笑する忠則、俺だって一応標準以上の体力と筋肉はあるんだ。

 だが、お前がいるせいで俺は草食系男子にしか見えないだけだ。

 言いたい事は色々あるがそんな事を話している場合ではないので気持ちを抑えて他の話をあかりに振る。


「それより、あかりは決まったのか?」

「えぇ、私にも何とかなりそうなのがあったわ」

「じゃあ俺もこれでいいや」

「なんだよ、そのボロくさい依頼書は? 沢山新しい物があるのに変な奴選ぶんだ? 黒野それはどんな内容なんだ?」

「内緒だ、わざわざ見せなくても良いだろ」


 受付で依頼とギルドカード作成を一緒に処理してギルドを出る。


「じゃあ、日が沈む頃にまた此処で集合ね」

「そうだなどうせならギリギリまで働いた方が金を稼げるからな」

「おう、じゃあそれまでは各自頑張ろうな」


 そして俺達は集合時間を決め初めての異世界アルバイトを開始する。


ギルドランクを修正いたしました。

それ以上ランクはC→B→A→AA→Sとなる。

それ以上ランクはC→B→A→G.A(金A)となる。

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