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In The Fantasynovel  作者: kurora
第一章
16/20

14話 師匠

 朝起きて上半身を起きあげるとベッドの横で丸いとてもでかい物がそこに蹲っていた。


「やはり忠則は寝る時、丸まって寝るのか……」


 忠則はまだ丸まったままいびきを立てて寝ていた。でかい図体している癖に、小さくなろうと丸まって寝ている様な姿が地味に笑える。

 昨日、忠則があかりに2人部屋を渡してしまったので壮絶なジャンケン大会が始まり、8連続あいこと言う記録をたたき出して俺は勝利をした。

 ちなみに忠則との勝負は高校時代から色々物を決める時はジャンケンだった。力比べでは全部に忠則優勢だし、クイズなんかの頭脳勝負なんて面倒だし忠則に負ける気がしない。

 俺は先に準備をしてから忠則を蹴り起こす。修学旅行の時の忠則はいくら声掛けても起きなかった。多分物理的に攻撃しないと起きない。忠則を何度か蹴るともぞもぞと動き出した。


「起きろ、朝だ。」

「ん~? 何か身体が痛いぜ……」

「そんな事無い、多分寝ぼけて感覚が麻痺してるんだ」

「そうか? そう言われるとそうかも知れないな」


 俺は先に部屋を出て井戸水で顔を洗い深呼吸をする。すると背中から声が聞こえてくる。


「ねぇ今日からどうするの?」

「あかりか、今日は色んな準備をしようと思う。色々動くためには俺達は準備が足りないからね、旅に必要な道具なら買えるけど旅に必要な知識も少ないからそれも何とかしないといけない」

「旅ってもう行く場所は決めたの?」

「いや、まずあの喧嘩好き兄妹を探そう、あの二人ならどんな状況下でも仲良く喧嘩しながら生きていけそうな気もするが一度会って確認しないとやはり心配だからな」

「そっか、佐藤兄妹もこの世界に来てるはずよね、この頃色々あったからってあの子達を忘れるなんて……」


 あかりに今日の説明をしていると目をこすりながら忠則が現れた。

 俺は忠則とあかりにもう一度今日、どうするかを説明をしてから部屋で集合する事にした。

 今日の重要になるのは買い物だ、これは慎重に時間を掛けないといけない。荷物は多過ぎず少な過ぎず丁度良い量を考えないといけない。それと移動には確実に足では不可能だ。早く移動するためには馬の様な動物が必要になる。

 この世界には馬が存在しない。だが馬より速く走る事が出来て、馬より速く乗りこなす事が出来る動物が存在する。


「この世界を旅するには自分のヘディガーを買って乗りこなせないといけない」


 皆が同じ部屋に集まって俺は口を開いた。ヘディガ―とは犬と虎に似た動物だ。肉食だが性格は穏やかで犬の様に主人に絶対の忠誠を誓ってくれるのだ。知性も高く訓練を積めば何種類かの言葉の意味を理解させる事も可能な優秀な動物で、主人を食う事は一切しないが、主人に危害を加えようとする動物や人間は自信の死も試みず立ち向かう勇敢な戦士でもあるのだ。


「でもヘディガ―って高いはずよ、私達が買える様な代物じゃ無いわ」

「そうだね、多分俺らの金をすべて合わせても一番安いのが1匹かえるかどうか……」

「いや、3匹余裕で買えるぞ?」


 忠則がいきなり小さな子袋から見た事無い金貨が現れた。


「え……?」

「なんだそれ……」

「金だぞ?」


 確実にこの10日間で稼げる事の出来ない金額が目の前に現れた。まず単位が違う、0の数が違うのだ。金貨と言う事は日本で言う100万円だ。それもその金貨の数が2枚もある、200万円だ。更に銀貨が数十枚もある、合計すると300万近い金額になるだろう。

 300万円なんて日本でも見た事が無い額。これだけの額があれば大抵の事は出来るだろう。だが金貨を扱ってくれる店が無いので銀行で換金するしかないだろう。


「だが、何故こんなにも金があるんだ?」

「ライオルが給料としてくれたんだ。貴族ってのは本当に金持ちなんだな、俺も見た時はびっくりしたぜ、これで飯の心配する必要が無いぜ!」

「これだけあればこの世界の本も買えそうね、楽しい異世界ライフを送れそうだわ」


 忠則とあかりは勝手に豪遊生活を想像しているようだが、絶対にそんな生活はさせない。こいつらは本当に旅をしたいのだろうかと、俺はこのたった数日の間に何度考えされているんだろうな……。

 初代主人公のライオルは元貴族で物語の始まりに身に着けていたのは自らの誇りである鎧と剣。それと旅に必要最低限の荷物と金貨1枚と銀貨数枚だった。貴族にしては少ない持ち物だと思ったが、使わないい金を全て孤児院に寄付したのか置いてきたのかどちらかだろう。

 忠則がお金をこんなにも持っていた事に衝撃を覚えたが予想外の収入で俺が考えていた計画の期間が縮まった。どの世界どの国でも金はあるに越した事は無い。


「忠則ありがとう、お前のおかげで上手くいきそうだ。だが直ぐに全部使う訳無いだろう? 欲しい物を買うのはまだ先だ。ヘディガ―も買うのはまだ先だし、今日は旅に出るために必要な道具を一式買うだけだ」

「なんでだよ! 俺は上手い飯が食えないと全力が出せないんだぜ!」

「そうよ黒野、私のエネルギー源の小説が無いと死ぬわよ」

「うるさい、飯は食えればいいだろう、それに小説は無くても生きていけるわ」


 俺は二人の言い分を全て拒否して、俺達は旅に必要な道具を買い行く。旅に必要な物は多い。荷物を背負えるしっかりしたリュックと変えの服と大きめの水筒。ナイフ、筆記用具、コンパス、地図、石鹸等、小説で読んだ物と自分が必要だと思える物を一つ一つしっかり選び値段を考えないで買う。

 今回は忠則の手に入れた数の多い銀貨を惜しみなく使う。今回で揃える物をこの世界でずっと使う事になるかもしれない重要な物だ。旅の途中で壊れてしまったらその旅が困難になるのだ。

 この世界は現実だ。ゲームでもなければ漫画でも小説でもない、途中でアイテムが落ちていたり魔物を倒してもお金が落ちてくる事は無い。1日3食の食事も必要だし睡眠も必要になる。更に常に最高のコンディションでは無いのだ、この世界に来てあまり日にちが経過して居ない俺達はこれから環境の変化で体調を崩すかも知れないのだ。

 ページをめくると様々な過程が飛ばされる様な物語では無い。完全に現実で起きている事だ、この世界で生きていくには毎日を生きていかなければならないのだ。この世界で長い旅をするという事は綺麗な事ばかりでは無い、様々な辛い事や苦しい事が容易に想像できる。俺と忠則なら耐えられるが女性のあかりには耐えられるだろうかという心配もある。

 色々な問題を少しずつクリアしていかないといけない。今回の準備も出来るだけ時間をかけて行わないといけない。まだ戦争の準備が始まった段階だ。急がなくてはならないが戦争が始まるのはまだ先だろう、時間を掛ける場所は時間を掛けないといけない。


「結局1日掛かったわね、でもまだ時間が欲しい位だわ」

「そうだな、こんな時間に師匠の家を訪れるわけにもいかないし、明日もう一度準備をして向かおうか」

「そうだな、まだ開いてる店で飯食ってから帰ろうぜ」


 俺達は忠則のお勧めの料理店に入りご飯を食べる事にした。何度見ても忠則の豪快な食事はスゴイ、忠則ほど豪快でありながら下品で無い食べ方をする者はいないだろう。

 食事を終えて少し重たいリュックを背負って宿に戻る。予定より時間は掛かったが充実した日だった為、問題は無いだろう。明日は必ず少女師匠に会わないといけないと思い俺は静かに眠った。




「さぁ起きろ忠則!」


 朝になり俺はベッドでも丸まっている忠則を蹴り起こす。今日はあかりのわがままを無視して二人部屋を取ったためベットは二つあった。俺は昨日の様に寝ていただけだが忠則は昨日がよほど寝辛かったのか気持ち良さそうに寝ていた。

 だが朝は起きないといけない。忠則の目覚めは悪くないが少し起きるのが遅いのが問題だ。昨日と同じように蹴り起こして顔を洗ってから部屋に集まり一緒に宿を出た。

 今日はもう一度旅の道具を見て最終的なチェックをする。俺は荷物が中々多くなってしまったが、ギリギリ許容範囲だ。旅の移動は基本的にヘディガ―での移動になるのからある程度重くても大丈夫になるだろう。大抵の国から国への道のりはヘディガ―がいるのなら通る事が出来る。

 準備が終わり、必要最低限の物以外の荷物は金が必要だが安全な銀行に預けて少女師匠の家に向かう。


「そういえば、黒野が言ってた魔法使いの師匠ってどういう人なのよ?」

「あ……えっと、まぁなんと言うかスゴイ師匠だ」

「おぉ、やっぱり長いひげに長い杖とか持って黒いローブ着てるのか?」

「まぁ到着すればわかるよ」


 二人が想像している師匠は間違ってはいない、この世界の魔法使いは実際そのイメージが普通なのだ。女の子が見る様なアニメの主人公な魔法少女。そんな魔法使いなんてこの小説のイメージとはかけ離れているのだ。

 二人が実際に師匠と対面してどんな反応するのか想像が出来ない。無理やり想像しようと頭をひねっていると目的地に到着した。俺は後ろで待っている目を輝かせた視線を背中に感じながら少女師匠の家のドアをノックする。


「誰じゃ? 今日は使用人がおらんのじゃ用件はまた別の日にしてくれ」

「師匠せめてドアを開けてください、黒野です」

「おぉ黒野か、ちょっと待っておれ」


 俺は直ぐにドアから一歩離れて待つ、師匠は魔法で勢い良くドアを開けるのだ、何度額を赤く腫らした事だろうか、若干額の皮膚が厚くなっている気がしないでもない。

 案の定勢い良く開いた扉の前には小さな少女師匠が堂々と立っていた。後ろの二人の反応はどうだろうか?と考えながら師匠と会話を始める。まずは後ろの二人の自己紹介をしないと。


「師匠、いきなりすみません、今日は魔法の修行ではなく師匠の力を貸して頂きたいのですが」

「ふむ、私の力を借りたいと言うのじゃな? 構わんがそれなりの対価がない……にゅおむ!!」


 師匠が喋っている途中で誰かかの妨害が入った。

……あかりだ。

 あかりが師匠を持ち上げて適度に豊富な胸の中に師匠の顔を押しつけて抱きしめた。俺は急展開過ぎるこの状況に身体が全く動かせなかった。数秒の時間を経て状況の把握が出来て師匠をあかりから引き離した。


「な、何をするのじゃ! 黒野! こやつは何者じゃ!」

「えっと、彼女は俺の仲間です、それとその後ろに居る奴も……」

「ねぇ、この子が黒野の師匠だっていうの! 可愛すぎるわ、でもこの小説ってそんなジャンルじゃ無かった筈なのに、どうして?」


 あかりは興奮していた。お気に入りの小説の新作が出た時の状態だ、この状態が一度始まると中々治まらない。師匠は俺の後ろに周り服の端を掴んで隠れた。その状況が更にあかりを興奮させているのだが師匠には分からないだろう。

 俺はあかりの肩を押さえてこの状況の鎮静化を試みようとしたが俺一人では無理だと一瞬で理解した無理だ。俺はあかりの後ろに居る筈の忠則に助けを求める。


「おい、忠則! この状況どうにかしてくれ……忠則? 何処に居るんだ?」

「おう、此処だぞー」


 何故か師匠の部屋の中から声が聞こえる。俺は首を曲げて部屋を覗くと忠則がダンベルの様な物をダンベルとして使っていた。

…………こいつら自由すぎだろ。

 それから1時間弱をかけて色々と双方に説明をして俺とあかりと忠則は師匠の大きな椅子の前で正座させられていた。何故俺までと言う疑問が残るが、それを口にするとまた時間が消費されるだけなのは容易に想像が出来るので諦めた。


「それで? 私になのを頼みたいのじゃ?」

「自分たちの様に召喚された者の中に俺達の仲間がまだ二人居るのですがその2人が何処に居るか探して頂きたいのです」

「それくらいなら容易いのじゃが、それに見合う物が無ければやらぬぞ?」


 まだ少女師匠は少し怒っているのか威圧的な態度を取っている、あまり出し渋るのは良くないだろう、こちらが提出出来る物の全てを伝えた方がいいだろう。


「この世界のこれから起きる事になる情報と、お金、俺のオムライスが俺達の提供出来る者ですがどうでしょうか」

「お! 黒野のオムライスが食えるのか! そりゃ良いな」

「忠則、お願いだから黙れ」

「そうじゃのう、金はいらんな。使いきれん程持っておる。じゃから黒野の持っているその情報とオムライスを貰おうか」

「では、交渉成立で?」

「待っておれ、直ぐに見つかる」


 少女師匠は小さく細かい魔法陣を一瞬で出現させた。いつもは脳内で描く魔法陣を空間に描くと言う事は規模が大きい魔法なのがすぐに分かった。だが師匠が使う魔法陣は俺が見ても全く分からない形をしていた、自分が教えて貰った基礎の魔法陣の応用と言う事しか分からない。色々オリジナルな場所や組み換え方があるのか、少し正規の魔法陣とは違う形をしていた。

 師匠の魔法陣が書き終わり、魔法を発動させる。その瞬間爆発的な魔量の放出を感じたと思った途端、新しい魔法陣が自動的に描かれ一瞬で巨大化してこの家を飛び出した。


「何が起きたの?」

「なぁ黒野の師匠は何しているんだ?」

「あぁ今捜索魔法を発動しているんだが、これはすごいぞ……」


 俺は二人共何がすごいのかをしつこく聞いてきたが無視してその光景を見ていた。最初の魔法陣は魔法陣を書くための準備の為の魔法だったのだ。範囲の必要な巨大魔法陣は脳内で書いても意味が無く、書くのにも時間が掛かるのが最上級魔法の難点だ。

 この小説の主人公の魔法使いも大きな戦いに控えて、大きな魔法陣を前日に書いて上手く相手を誘い込み発動させていたのだ。だがこの師匠はその最大級魔法の欠点を攻略をしていた。

 何時間も何日も掛かる魔法陣構築をたった数秒でやってのけたのだ。そして魔力の量も凄まじかった、つい先日まで自分の魔力を操作するのに苦労していたが周りの魔力を少しずつ感じれるようになってきた俺はその魔力の量に驚愕した。

 基礎魔法の魔力に必要な量の約500倍程度になるだろう。俺がそれ程の魔力を放出するとその日はもう同じ魔法は使えないはずだ。まだ自分の魔力の量を完全に把握してないが多分半分以上の魔力を持っていかれるのは想像できる。

 そしてその量を瞬時に均一に流し込む事が出来ない、俺なら流し込む過程で脳が焼き切れて気絶しまうだろう、それくらい脳に負担を与え精神的に苦しいのだ。だが少女師匠はそれでも呼吸も乱れる事も無く平然にしている。

 俺が驚いていると魔法陣はこの国を覆ったのだろうか、師匠が少し動き俺達に声をかけた。


「すまんのじゃが、少し大きな声が出るが気にするな」


 俺達は無言で頷く。それと同時で師匠は大きく息を吸い込み全てを吐き出した。


「っは!」


 声は可愛かったが、声に込められた力強さは子供とは思えない何かを感じだ。そして流れる魔力。その量先ほどの量をさらに上回る量だった。1.5倍から2倍程度の量だろう、開いた口が塞がらないとはこの事を言うのだ、目の前に起きている事の大きさの理解が追いついていないが身体が察知しているのか手が震えて足が今すぐ逃げ出したいと言っている。

 俺がこの世界で魔法使いとして一生を過ごす事を決意して1年365日、常に魔法の研究と魔法の練習を続けてもこの少女師匠には足元にも及ばないだろう。いや、及びたくも無い、この力は異質だ。普通の魔法使いとはまた別の何かがこの少女師匠にはあるのだ。

 俺が読んで来たこの小説の話では魔法は此処まで大きな物は無かった。火を放っても範囲は遠くて数十メートルで遠くに行くほど勢いは弱まっていく。それに魔法を使うには大きな欠点がある、魔法陣構築から魔力を流し込み発動までの間確実に隙が出来るのだ。その時間は早くても数秒は掛かり難しいものだと10分以上は楽に掛かってしまう。

 だが師匠は違った、今まで移動以外の行動は全て魔法で行っていた。その行動に対する魔法のタイムラグは0秒、既に魔法が脊髄反射的に使えるのだ。

 一体何年そんな生活を続ければ身につける事が出来るのだろうか?十年では無理だ、それなら小説で現れた魔法使いの半分は師匠の様な生活が出来る。二十年。三十年。いや、百年経ってもそのような事が可能だと思う事が出来ない。

 師匠は一切自分の事を語らなかった。名前を聞いてもはぐらかされ師匠と呼べと言われたのだ。この時点では何も不審には思ってはいなかったが、今は何故隠しているのは気になって仕方ない。


――――この師匠が俺達を召喚したのではないのか?


 脳裏によぎった言葉を振り払おうとする、そんな事は無いはずだ。そもそもわざわざ自分を召喚しておいて、その過程を効く必要があるのか?それに俺に魔法を覚えさせる理由も分からない。

 だがそれも含めて師匠が俺達を召喚した理由なのではないか?一度脳裏に浮かんだ言葉は中々離れてくれない。師匠が俺達を召喚したと言う確証もないが、していないと言う確証もない。もう考えるのは無駄だ、たとえ師匠に聞いて「違う」と答えたとしても今の俺は疑ってしまうだろう……。


「黒野大丈夫? どうしたのよ?」

「大丈夫か、師匠の魔力とやらにヤラれたのか?」


 忠則の手が俺の肩に触れてやっと周りの声に気が付いた。知らないうちに酷く汗が出ていた。2人が心配そうに俺を見ていたので心配ない事を立ちあがって証明した。

 結構時間が経っていたようだ。既に師匠は魔法を終えて佐藤兄妹を探し当てていた。俺はずっと汗をかいて一点を見つめて動かなかったらしい。忠則の言う通り魔力に充てられていたのかもしれない、師匠の魔力の放出量は日常的に当たっている数倍の量の魔力が一気に浴びせられたのだから、まだ魔力に大勢の無い自分には耐えられなかったのだろう。

 俺は忠則とあかりに佐藤兄妹の場所を聞き、地図に印を付けてから依頼通りオムライス作りを開始した。前回のオムライス作りで使用した簡易冷蔵庫の食品と足りない分の材料を買ってオムライスを作った。だが今回のオムライスはあまり美味しく出来なかった。店で出せるレベルではあるが、心がこもっていなかった。ずっと上の空でオムライスを作るのは初めての行為だ。

 いつもの俺なら自分で自分の頬を思いっきり殴るような行動だ。オムライスを馬鹿にする行為は俺自身も許せない筈なのに……。



 

 俺はその後師匠達の会話も頭に入ってくる事は無く、二人が心配していたがそれに対して何もすることは出来ず宿に戻るのだった。


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