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玉滴石  作者: 蒼井みつき


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プロローグ

https://49829.mitemin.net/i1098177/

 嵐の夜だった。


 山奥の森。滝の音が、雷鳴にかき消されている。

 

 激しい雷雨に打たれながら、一人の僧侶が熱心に念仏を唱えていた。

 

「南無阿弥陀!」


「南無阿弥陀!」

 

「鬼を沈めたもう。鬼を封じ込めたもう!」

 

「南無阿弥陀……」


 僧侶の見ている先に、人の形をしているのに、人ではない大きな生き物が叫び声を上げていた。


『オオオオーーーーッ!』


 その化け物は、僧侶を大きな手で薙ぎ払おうとするが、見えない壁に跳ね返される。


 パンッ!

 

「南無阿弥陀!」


「南無阿弥陀ッ!」

 

 僧侶の魂の炎は燃え盛り、化け物の黒い邪念と弾き合う。

 

 雨粒が痛いくらい激しく降り注ぎ、雷は近くに落ちて、バリバリと雷鳴を轟かせた。木に火がつき燃えている。

 

『……俺が何をしたって言うんだあああ!』


 四間を超える体がジリジリと下がっていく。僧侶の気迫が鬼気迫る。


「これ以上、人を殺めるでない!」


 近くに雷が落ちようが、化け物の低い咆哮が轟こうが、僧侶は歩みを止めない。


「南無阿弥陀!」


「南無阿弥陀!」


「南無阿弥陀!」


『オオオーッ!』


 滝までやってきた。ここには大きな岩があった。


 (ここに封印してやろう)


 流石の僧侶も夜通し化け物と対峙していて、体力がつきかけていた。もう直ぐ朝が来る。


「南無阿弥陀……南無阿弥陀……」


 精神全てこめ、念仏を唱える。次第に僧侶の体の輪郭に光がともっていく。


『……やめろ……!』

 

「南無阿弥陀……南無阿弥陀……。鎮まれ……この岩へと」


『やめろーー!』

 

「ハッ!!!」


 僧侶が気合を込めると、化け物はだんだん小さくなり、岩に消えていった。


「南無阿弥陀……南無阿弥陀……」


 僧侶は念仏を唱えながら、自分の袈裟を岩に掛けた。

 

「後できちんと封印してやるからな……」


 僧侶は、気が緩んだのか、その場に倒れた。


 ――雨はしとしとと、降り続いていた。

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