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なろうっぽい小説

とある街娘の恋模様

作者: 伽藍

街の食堂では、兄と一緒に一人の少女が楽しく働いていた。しかし、オーナーが変わったことで環境は激変し、やがて大きな問題に巻き込まれることになる。

 ビヴァリーはとある大衆食堂で働く少女である。


 とはいってもまだ十四歳で本格的に働くことはできないから、冒険者業の傍ら食堂で働く兄ランドルフのオマケのようなものだ。週に一回か二回、学校のない日に食堂を手伝っている。

 小さな体でくるくると動き回るビヴァリーは、食堂の客たちに非常に可愛がられていた。飴やクッキーを貰うことなど日常茶飯事だ。そのたびに元気いっぱいお礼を言うものだから、客たちからの評判は良かった。


 もともと食堂は商人が多く治安の良い地域にあったから、オーナーの人柄も相まって客層も良い。たまにおかしな客がいても何かあれば一緒に働いているランドルフがすっ飛んできてくれたから、ビヴァリーは楽しく働くことができた。

 ビヴァリーの一番の楽しみは、働いたあとに料理人たちが出してくれる賄いだった。初めて食べたときにビヴァリーがあんまりに喜んだからか、次からはお土産まで持たせてくれるようになったほどだ。


 仲の良い友だちもできた。そばかすが可愛い赤髪の少女で、名前はカーラ。腕の良い書籍の修復師の家系だそうなのだけれど、活発なカーラは家業が肌に合わなくて大人になったら料理人になりたいのだという。


 兄ランドルフが遅くまで働いているときは、ビヴァリーも夜までお店にいることができる。お店の端っこで好きなものを食べながら、兄の仕事が終わるまでカーラと時間を潰すのが最近のビヴァリーの楽しみだった。


 そんな平和な食堂の事情が変わったのは、突然のことだった。オーナー夫妻が従業員たちを集めて、申し訳なさげに口を開いた。

 曰く、オーナーの弟が貴族を相手に事故を起こしたのだという。


 平民が貴族と問題になったとき、原因が平民にあれば平民同士のときよりも大変に重い罰則が科せられる。慰謝料は弟の資産だけでは足りず、兄夫婦の食堂まで譲り渡すしかなかったのだという。


「そういうわけで、今日からわたしたちは、オーナーではなくみんなと同じ従業員だ。急な話になって申し訳ないが、今まで通りよろしく頼むよ」


 今までみんなが世話になっていたオーナーにそう言われてしまっては、従業員たちには否やはなかった。けれど新しいオーナーである子爵夫妻に変わってから、食堂の状況は明らかに悪くなった。


 子爵は食堂に視察に来たかと思えば、先代オーナーたちが高い給料を払っていた管理職の従業員たちをお金の無駄だといって次々に解雇してしまった。また腕は良いが気難しい料理人と諍いになって、その料理人も追い出してしまった。


「長年この食堂を支えてきてくれていたひとたちですよ!」


 先代オーナーたちが抗議をしても、オーナーは取り合わず、ついには先代オーナーまで辞めさせられることになった。


「行く当てはあるのですか」

「ひとまず、嫁の実家に仕事を貰えないか訊いてみるよ。守ってあげられなくてごめんね……」


 心配する従業員たちに、申し訳なさそうに頭を下げて先代オーナー夫妻は去って行った。そんな状況だから、食堂の雰囲気も、料理の味も、見る見る悪くなって当たり前に売り上げも落ちた。


「くそっ、二か月連続で売り上げが落ちているぞ! この食堂はここらで一番売り上げが良いと聞いたのに!」


 オーナーがそんなことを怒鳴り散らすのも珍しくなくなった。兄ランドルフも呆れてしまっていて、そろそろ別の仕事を探しそうな様子だった。

 そんなある日、ビヴァリーはカーラに呼び出された。


「どうしたの、カーラ?」


 食堂ではよく会っていたけれど、改めて街中で集まるのは珍しい。不思議に思って問いかければ、カーラはひどく言いにくそうに口を開いた。


「オーナーの娘のさぁ、マイラって女がいるじゃない? 子爵家のご令嬢だーって威張ってるあの女」

「あぁ、いるわね」


 役にも立たないのになぜだか店に立ちたがるマイラ・グリアーソン子爵令嬢を思い浮かべて、ビヴァリーは頷いた。ますますカーラが苦々しげな顔をする。


「あの女がさぁ、最近ビビのお兄さんの、ランドルフさんに迫られて困ってるんだーって言いふらしてるんだけど、あれって本当? ちょっと信じられなくて」

「えっ、お兄ちゃんが!?」


 本当にびっくりして、ビヴァリーはちょっと仰け反った。慌てて首を振る。


「そんなわけがないじゃない! お兄ちゃんにはそれはもうラブラブな恋人がいるもの!」

「あぁ、モテそうだもんね、ランドルフさん。そりゃー彼女くらいいるか」


 うーん、と口をむぐむぐと動かして、カーラは嫌そうに言った。


「でも、従業員の中にも信じているひとはいるみたい。最近入った人たちなんかは特にね。相手はお貴族様だし、面倒なことになる前に逃げちゃうが勝ちかも」

「あら、まぁ……」


 せっかく二人で会うのだからと美味しいと評判のケーキ屋に入ったというのに、これでは美味しいはずのケーキも味がしない。

 言葉を失ったビヴァリーを前に、カーラははっとして空気を切り替えた。


「ごめんね、こんな詰まらない話をして。でも、心配だったから」


 カーラが無責任な噂話を他人に吹き込むような性格ではないことは、ビヴァリーも知っている。だからビヴァリーは、感謝を込めて微笑んだ。


「ありがとう、カーラ。実は、お兄ちゃんともそろそろ食堂を辞めようかという話をしていたの。両親も心配しているし」

「あ、そうなの? だったら余計なお世話だったかも」

「良いのよ。それよりも、カーラはどうするの?」

「あぁー……。わたしも辞めて、次の仕事はまた考えるかなぁ。働いてたのも、遊ぶお金が欲しかっただけだし。大好きだった食堂があんな風に落ちぶれていくのは、ちょっと心苦しいけれど」


 それからカーラはビヴァリーの顔を覗き込んで、にひっと悪戯っぽく笑った。


「ねぇ、お互いに食堂を辞めてもまた遊ぼうね」


 ビヴァリーはその言葉に、大喜びで頷いたのだった。


***


 結局そのあとも食堂の状況は良くならず、兄ランドルフが見切りをつけたことでビヴァリーは兄ともども食堂を辞めることになった。

 その最終出勤日のことである。食堂が閉まったあとの掃除をしているランドルフや他の従業員たちを、既に勤務時間が終わっているビヴァリーはカーラと一緒に眺めていた。


 いきなり食堂の入り口が騒がしくなって、二人は顔を見合わせた。

 ほとんど押し入るように食堂に入ってきたのは、身なりの良い少年少女と護衛らしき人びとだった。慌てて一人の従業員が駆け寄っていく。いまいる中でも、一番長くいる従業員だ。


「いかがなさいましたか、スペンサー令息様、マイラ令嬢様」


 食堂を長年守ってきた一人である従業員が、自分の半分ほども生きていない子どもたちに謙っている。その様子を見て、カーラがこっそり舌を出した。


「ランドルフとビヴァリーはいるか!」


 いきなり呼びつけられて、そのあまりの声量の大きさにびっくりしてビヴァリーは飛び上がった。ビヴァリーよりも早く、近くにいたカーラが立ち上がる。


「ちょっと、お偉いお貴族様がただの冒険者とその妹なんかに何の用?」


 二人についていた護衛たちに睨まれながらも、カーラがビヴァリーの前に立ち塞がる。その腕を、ビヴァリーはそっと引いた。


「大丈夫よ、カーラ。相手はお貴族様だもの、無体なことはなさらないわ」

「でも……」


 ビヴァリーが触れたカーラの腕は震えている。おろおろとしていた従業員の一人にカーラを任せて、ビヴァリーはランドルフと並んでスペンサーたちの前に立った。


「何かご用でしょうか」


 ランドルフが口火を切る。冷静な態度が気に障ったのか、スペンサーがいきり立つ。


「貴族の前でなんだ、その態度は! わたしは妹のマイラから、ランドルフに乱暴をされたと聞いて処罰しに来たのだ!」


 そう言ってスペンサーが掲げたのは、一枚の告訴状だった。貴族が平民を罰するときに王宮に提出する正式なものだ。

 その告訴状を特段気負いもせずに受け取って、ランドルフは読み込んだ。


「なるほど、確かに子爵家の紋章印が使われていますね。であれば、これは子爵家のご意向ということでよろしいでしょうか、ご当主殿」


 ランドルフが視線を上げた先には、オーナーである男性が立っている。オーナーが胸を反らした。


「当然だ! マイラのお腹には子どもがいるのだぞ、貴族の令嬢を傷物にした責任をどう取るつもりなのだ!」


 数人の従業員たちが息を飲むのが聞こえた。平民が貴族令嬢に暴行したとなれば、死罪もあり得る重罪だからだ。

 ほとんどひっくり返ったような声音で叫ぶ子爵に、ランドルフは少しだけ耳を押さえた。それから、しらっとした声で返す。


「残念ながら、これは冤罪ですね」


 あまりに当たり前のように言われたからか、しばらく子爵とスペンサーが硬直した。それから我に返って、顔を真っ赤にする。


「言いがかりをつけるな!」

「言いがかりも何も、告訴状を元に王宮で正式な捜査をして頂ければすぐにでも判ることですが」


 言い置いて、ランドルフが肩を竦める。


「今回の場合は、改めて調べるまでもありません。なぜなら既に、わたしが無実であることは王宮が把握しているからです」


 渡された告訴状を丁寧に折り畳んで、ランドルフは上着の内側にしまい込んだ。きっと後から王宮に提出するつもりなのだろう。


「な、なんで」

「なぜと言われましても、親切なかたからおかしな噂が流れているとお教え頂きまして。最初はマイラ嬢がわたしに強引に迫られているというお話から、後にはマイラ嬢がわたしに無体を強いられたというお話になりましたね。貴族令嬢にとって自分でそのような話を言いふらすのは致命的かと思いますが、噂というのは勝手に尾鰭がつくものですからより大げさに話しているうちに後に引けなくなったのでしょうか。マイラ嬢の考えは判りかねますが、わたしとしてもそのままにしておくのは気分が悪いので、王宮に正式な調査をお願いいたしました」

「王宮に……」


 スペンサーが呆然と呟く。そのスペンサーと視線を合わせて、たったいま思い出したというように、ランドルフは微笑んだ。


「そういえば、ご挨拶もせずに申し訳ありません。わたくしはアリングハム辺境伯の次男ランドルフと申します。こちらは妹の長女ビヴァリーです」

「ご機嫌よう、スペンサー様、マイラ様」


 ランドルフの礼に会わせて、ビヴァリーも貴族の礼を取った。スペンサーが呻く。


「冒険者だと言っていただろうが……」

「嘘じゃありませんよ。冒険者の資格も持っていますし、腕鳴らしに依頼を受けることもあります。それと同時に、辺境伯家の息子で、王宮騎士団の所属というだけです。この食堂で働いていたのは、ビヴァリーの社会勉強に付き合うためでして」


 話を振られて、困ってビヴァリーは眉を下げた。


「平民に混じって働き社会経験を積むことは、辺境伯家の習わしなのです。ただ、通常であれば護衛がついているとはいえ一人で放り出されるそうなのですが、お父様たちがあんまりにも心配性なので、どうしてだかお兄様にもお付き合い頂くことに……」

「俺は楽しかったぞ」

「それは、よろしゅうございましたが……」


 ただ、いかんせん過保護な兄がつきっきりなのであんまり社会勉強という感じはしなかったなぁ、と思う。働くのは楽しかったけれど。

 場の空気を完全に掌握して、ランドルフが指を一つ立てた。


「まず一つ目に、わたしどもの母は隣国の元皇女ですので、当国の王家もわたしどもの動向を気にしております。特にビヴァリーは女性ですから王家からもそれはそれは心配されておりまして、ビヴァリーには特別に王家からの護衛がついております。というか、わたし自身もその一人ですね。そのような理由で、ビヴァリーの兄であり護衛であるわたしの動向も必然的に王家の耳に入ります」


 次に、と二本目の指を立てる。


「わたしは僭越ながら、騎士団でもそれなりの地位を頂いております。これは周知の事実ですので言ってしまいますと、当国では国政や国防を担う一定以上の地位の人間は、自分では外すことのできない追跡の魔道具を着用することが義務づけられております。内通を戒めるためや、万が一悪意のあるものに攫われたときにすぐに救いだすためです。命の危険のある任務に就く場合には、認識票の役割も兼ねています。わたしも勿論着用しておりますので、王家がわたしの行動を追跡することは容易です」


 喉が疲れたのか一つ咳払いをして、ランドルフは続けた。


「このことから、王家がわたしの潔白を調べることはわりと簡単なのです。王宮には嘘を見抜く魔法を持っているものや、真実を話させる魔法薬を作れるものもおります。わたし自身、魔法薬を服用した上で王族の方々や騎士団の幹部たちが集まる前で無実を証言させて頂きました。強力な魔法薬を服用したあと数日は魔法の使用が制限されますので、任務の予定がずれて大変な迷惑を被りました。――恐らくわたしが本当にただの平民で、この告訴状を受け取る前に何の手立ても打てなかったとしても、問題なく疑いは晴らされたでしょう。我が国の国王陛下は、曲がった行いを大変に嫌うお方です」


 しまい込んだ告訴状に指先だけで触れて、ランドルフは言う。


「また先ほどの告訴状について、そちらのマイラ嬢が妊娠二か月であるという記載がありましたが、わたしはちょうどひと月前に王宮で行われている年に一度の診断を受けております。もちろんご存知のことと思いますが、誰かと性行為をした場合には自分と他人の魔力が混ざりますから魔力には揺らぎが出るものです。わたしの魔力は昨年と変わりがありませんでしたので、その点でも無実を証明できることと存じます」


 ようやくひと段落ついたのか、ランドルフは嘆息した。隣にいるビヴァリーの頭をちょっと雑に撫でて、それから、と顎に指を当てる。


「これも言うまでもないことですが、貴族というのは強力な血統魔法や魔力、特別な体質などを保護する側面もありますから、血筋を偽るというのは国力の低下に直結しかねない、大変に重い罪になります。低位貴族の血筋ですら偽れば終身の労役を科されることもあるほどなのですから、高位貴族であり、まして隣国の皇位継承権を持つ傍流の皇族でもあるわたしの血筋を偽ろうとなさるなどと、甘い処罰では済まないと覚悟されたほうがよろしいかと存じます。『知らなかった』では済まないことがございますから」


 なんだか言いたいことを何もかも兄に言われてしまったので、ビヴァリーは戸惑ってランドルフと子爵家の兄妹を交互に見比べた。スペンサーはと言えば、ほんの少し前までの得意げな顔が嘘のように真っ青な顔をしている。

 その姿があんまりにも酷いものだったので、ビヴァリーは思わず問いかけてしまった。


「マイラ様、どうしてそのような嘘を仰ったのです?」


 声をかけた途端に、マイラがビヴァリーを睨みつけた。それが今にも物理的に噛みついてきそうなほど恐ろしい形相だったので、ビヴァリーは思わずランドルフの背に隠れた。


「あんたが身の程知らずにお兄様に媚びを売るからじゃない!」

「えっ、……ランドルフお兄様ですか? 確かに仲良しですけれど……」

「違うわよ馬鹿じゃないの、わたしのスペンサーお兄様よ! あんたが万が一にもお兄様と婚約するだなんて、そんなの許せない……!」


 何一つ心当たりのないことを言われて、ビヴァリーは首を傾げた。ランドルフと視線を合わせれば、兄も訳が判らない顔をしている。

 下手をするとビヴァリー以上にビヴァリーを知っている兄にも判らないということは、自分の感覚は間違っていないのだろうと思って、ビヴァリーは困り果てて言い返した。


「申し訳ないのですけれど……」


 本当に申し訳ないという顔で。


「そもそもわたくし、スペンサー様とまともにお話した記憶がありませんわ」


 そう言った瞬間にスペンサーがこの世の終わりみたいな顔をしたので、ビヴァリーは本当にびっくりした。


***


「結局子爵家の四人とも死罪だそうだよ」


 騒ぎからしばらく経った頃、ランドルフがビヴァリーにそう教えてくれた。


 ちなみに、ランドルフにはビヴァリーの護衛を外れて貰っている。ランドルフは随分と嫌がって大騒ぎをしたけれど、正直なところ年頃の少女であるビヴァリーにとって、大好きな兄とはいえ身内にずっと近くにつかれている状況はけっこうしんどいのだ。

 代わりに、護衛は今までよりも随分と増やされてしまった。働きに出た先でおかしな騒ぎに巻き込まれたことで、多方面に心配をかけたらしい。


 そんなわけで久しぶりに会うランドルフに侍女が出したお茶を勧めながら、ビヴァリーは兄の言葉に耳を傾けた。


「動機は俺ではなくて、ビヴァリーへの恨みだそうだ。ビヴァリーを直接攻撃するよりも、男である俺に暴行されたと騒いだほうが俺たち兄妹へのダメージが大きいと踏んだらしい。これ貴族令嬢としては自死に等しいと思うんだが、馬鹿の考えることは判らんな」

「ご妊娠されていたのは何なのですか?」

「そこらの男を渡り歩いていたんだと。誰の子かも判らんらしい。それで、何もかも俺にひっ被せようとしたんだな。マイラ嬢の処刑は出産後になるだろう。子どもは施設行きだ」

「まぁ……」


 ぱかっと口を開けて、ビヴァリーは驚いた。過保護な二人の兄に男性との関わりを制限されまくっているビヴァリーにしてみれば、全く別の世界の話を聞いている気分だった。


「それでどうしてマイラ嬢がビヴァリーを恨んでいたかと言えば、兄のスペンサーがビヴァリーと婚約するつもりだったからだそうだ」

「それが本当に判らないのですけれど、どうしてスペンサー様はそのように思い込まれたのでしょうか」


 ビヴァリーの問いに、ランドルフが眉を上げた。


「子爵家がオーナーになる前に、スペンサーは客として食堂に入ったことがあるらしくてな。そこでビヴァリーに笑いかけられて、自分がビヴァリーに惚れられていると思い込んだんだと」

「えぇ……」


 さっぱり記憶にないことを言われて、ビヴァリーはちょっとだけ仰け反った。


「客商売でしたのよ。お愛想という言葉をご存知ではない?」

「世の中には男女問わずそういう人間もいるんだ、一つ勉強になったな。ここまでの騒ぎになるのは滅多にないだろうが」


 話がひと段落したところで、私室の扉が叩かれた。入室を許可すれば、侍女のお仕着せを着たカーラが入室してくる。


 雇い入れてからひと月ほどで、カーラは侍女としてほとんど違和感がなくなった。修復師の家系だと言っていたが母が元は貴族令嬢だったそうで、嫌々ながら淑女としての教育も受けさせられていたらしい。

 食堂よりも給料が高いのと公爵家の料理人たちからも教えを受けられるということで、学生ながら時間給で公爵家に転職してきたのだ。いずれはお金を貯めて自分の店を持ちたいのだそうだ。


「ブルース様がいらっしゃいました」


 かつての雇い主であり現在の雇い人の名前を聞いて、ビヴァリーは頷いた。ランドルフが笑う。


「結局、食堂に出資することにしたのだってな。先代のオーナーも従業員の立場で戻って、他の追い出されたものたちも少しずつ戻っている。売り上げも上がり始めていると聞いたよ」

「元子爵家から食堂を買い取りましたの。わたくしはお金を出しただけで実際に経営しているのはブルースさんたちですから、彼らの功績ですわ」

「久しぶりに会うなぁ、俺も挨拶して来ようかな」

「是非。ブルースさんも喜ばれます」


 兄妹を案内するカーラが、ふと思い出したように言った。


「先ほど、第二王子殿下からビヴァリー様宛に釣書が届いておりました」


 通算十数回目にのぼる王家からの求婚に、ランドルフがくわっと眼を剥いた。


「ビヴァリーにはまだ早い!」

「それから、王妃殿下からお茶会のお誘いが来ております」

「絶対に第二王子も同席するじゃないか、それ!」


 大騒ぎするランドルフの足をそっと踏みつけて、ビヴァリーは微笑んだ。


「釣書は領地にいるお父様に転送を。王妃殿下からのお誘いは受けたく存じますから、便箋の用意をしておいて頂けますか」


 友人と視線を合わせる。いまだに騒いでいるランドルフの横で、主従の体裁は崩さないまま、二人はふふっと笑い合った。

お、思いつくままに、、、書きました、、、長くなった。。。一気に書き上げたのでお疲れ申した。なんかビヴァリーよりもシスコンのランドルフが主人公みたいなお話になっちゃった。言い返す場面でランドルフがしゃしゃり出てくるから!!

たぶんテンプレ通りに『ビヴァリーに苛められただのなんだの騒ぐマイラ』のほうが話はスムーズだったと思うのですが、最初の構想でなんとなく『痴○冤罪』の文字が浮かんでいたのでこんな形に


痴○にしろ暴○にしろ、本当に被害に遭ったひとほど被害を申告できなくて、一方的な思い込みだったり何かしらの目的があるひとほど大袈裟に騒ぐよなぁ、って印象があります。だからマジの犯人だったとしても『冤罪だ!』なんて大騒ぎする馬鹿たれがいるのだし、それによってますます本当の被害者は『冤罪と思われるかも』と思って何も言えなくなってしまう。完全に悪循環なのよ

ところで変質者と出くわしたときに、『眼の前で110番すればすぐに逃げていく』という話を聞いたことがあるので、大昔に『下着くれ』と言ってきた馬鹿たれの前で本当に110番したことがあります。が、馬鹿たれが何を思ったのか、一回抱きついてから逃げていったのであんまり効果がなかった気がしています。通報でも威嚇にならないならどうすれば良かったんだ。やっぱり通報機能つきの防犯ブザーとかを持っておくべきだったのかしら、大きい音ってそれだけで相手はビビりますからね


【追記20251123】

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/799770/blogkey/3538803/


【追記20251124】

ただの雑談のつもりだったのですが、痴○もろもろについて誤解を招きかねない表現になっていたようなので追記しにきました。不快に思われた方がいたなら申し訳ない


> 一方的な思い込みだったり何かしらの目的があるひとほど大袈裟に騒ぐよなぁ

これについて言葉が足りなかったのですが、これは『本当は痴○されていない/勘違いである/被害妄想である/お金目当てで冤罪を被せようとしている』ような人ほど、という意味で使っています。もちろん、本当に痴○されている被害者でもめちゃめちゃ気が強くて大騒ぎする、みたいなパターンもあると思います。色んな状況があるので一概には言えません

ただ、これによって本当に痴○をする当人も『痴○冤罪』という言葉を知っている、というのが現代の状況だと思っています。つまり、本当に痴○をした犯人だったとしても『これは冤罪だ!』と大声で言い張れば本当に痴○被害を受けた相手のほうが萎縮して結果的になあなあになってしまうのを狙われる、あるいはそもそも被害者が『冤罪だと言われるかも』と考えてしまって水掛け論になるのを恐れて被害を申告できない可能性があるよね、これって悪循環だから良くないよね、困ったねーみたいなお話をしていました。ただの雑談のつもりだった

結局は冤罪を吹っかけるひとが悪いし、そもそも痴○をするひとが悪いのです。けれど悪いひとたちがいるから、気が弱ければ被害を受けても申告すら躊躇ってしまうひとがいるかも知れないよね、困ったねーってお話でした。これでご理解頂けたかしら。別段極論を言ったつもりはなかったのですよ

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― 新着の感想 ―
妖怪マイラめ、捨て身の戦法ですわね。 大切にされる価値が全くなさげな兄に何の執着があったんだか。 ヒトモドキの考えはわかりかねますわねえ、
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