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神代記  作者: 両亭
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第八節~第十節

八、天日主大神嘆不在治地者、集天神而諮之。大神命「国分神」治地。国分神至天九十九橋。「大糟神」饗之。国分神観、大糟神放餉於器、醸米而吐之於爵。国分神曰「何使食如斯」以斬大糟神。大糟神血散四方、降地、以成麦、米、粟、黍、豆。又、血付国分神佩玉、以生「豊萌息吹神」。


八、天日主大神地を治むる者あらざるを嘆き、天神を集めてこれを諮る。大神、国分神(クニワケノカミ)に命じて地を治めシしむ。国分神天九十九橋(アメノツクモノハシ)に至る。大糟神(オホカスノカミ)これを(もてな)す。国分神観れば、大糟神、()を器に放り、米()みて(さかづき)に吐く。国分神曰はく「何ぞ()くのごときを食はしむ」と。以って大糟神を斬る。大糟神の血、四方に散り地に降る。以て麦、米、粟、黍、豆と成る。又、血、国分神が()く玉に付て、以て豊萌息吹神(トヨモエイブキノカミ)生ず。


八、天日主大神は地を治める者がいないのを嘆いて、天神を集めて相談した。大神は国分神に命じて地を治めさせた。国分神、天九十九橋に至る。大糟神はこれを大いにもてなした。国分神がふと見ると、大糟神は食事を器に放り込んでおり、米を噛んだものを杯に吐いていた。国分神は「どうしてそんなものを食べさせるのだ」といって、大糟神を斬る。大糟神の地は四方に飛び散って地に降り注ぎ、五穀(麦、米、粟、黍、豆)となった。また、国分神が腰につけていた玉にその血が付くと、そこから豊萌息吹神が生まれた。





九、国分神降於楼蘭土、観其美、詠歌。

 〈古乃未也波 安仁宇都久之幾 佐可之多仁多末知留古止久 都由乃都幾多留〉

以之都曰「瑠坂」国分神契瑠坂長娘。


九、国分神、楼蘭土(ロウランド)に降りる、其の美しきを観て、歌を詠む。

 〈この宮は あに美しき 坂下に玉散るごとく 露のつきたる〉

以ってこの都を瑠坂(ルハン)といひ、国分神、瑠坂長の娘と契る。


九、国分神は、楼蘭土の地に降臨した。その地の美しいの見て歌を詠んだ。

 〈この都のなんと美しいことか 坂下に玉が散っているように露がついておるよ〉

そうして、この都を傾斜地にある玉の都のいう意味の瑠坂と名付け、その地の族長の娘と結婚した。




十、国分神治地、不応天神、縦地。天日主大神遣「葉佩神」。国分神曰「分疆我也。天者天、地者地。地事所我領也。天神不可容喙」以刎葉佩神頸、結矢頭而放天。大神見之、大怒。放日矢而瑠坂燬、以誅国分神。故瑠坂地悉乾也。


十、国分神地を治めども、天神には応じず、地を(ほしいまま)にす。天日主大神「葉佩神(ハバキノカミ)」を遣はす。国分神曰はく「(くにざかい)を分けるは我なり。天は天、地は地なり。地の事は我の()るところなり。天神は(くちばし)()れるべからず」と。以って葉佩神の(くび)()ね、矢に頭を結びて天に放つ。大神これを見て、大いに怒る。日矢を放ちて瑠坂(やきつく)す、以て国分神を誅す。故に瑠坂の地悉く乾きたり。


十、国分神は地を治めたが天のいうことには応じなくなり、地を自分勝手に治めた。天日主大神は葉佩神を派遣した。すると国分神は「国境を引いた(国家の秩序を作った)のは私だ。天は天で地は地だ。地は私の領分である。天神は口出ししないでほしい」と言った。そして葉佩神の首をはねて、その頭を矢に結び付けて天に向かって放った。大神はこれを見て激怒し、日矢を放って瑠坂を焼き尽くし、国分神を殺してしまった。このため、瑠坂地は乾いた大地になったのだという。

八、

国分神:国境の神。地に境があることの神格。

大糟神:農耕を司さどる神。

「醸米而吐之於鼎」:要は口噛み酒のこと。爵は酒器

豊萌息吹神:穀物をつかさどる神。彼女が大糟神(の血)から生まれるのは、農耕によって穀物が生じる象徴。


天九十九橋:天と地をつなぐ橋。

「大糟神血散四方~」この説話は、いわゆるハイヌウェレ型の神話体系。


九、

楼蘭土:大倭嶋南西の地域、乾燥した草原や密林が多い。

瑠坂:もともと蠟土と呼ばれ、楼蘭土の都であった。


十、

葉佩神:風の神

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