3.1.住民との対話と、俺の覚悟
第三部:基盤構築–最初の仲間と世界の危機
3.1.住民との対話と、俺の覚悟
2032年8月、那智の海での啓示に導かれ、私は運命の地・野迫川村に辿り着いた。
翌日、私は一人で村役場へと向かった。もちろん、腕時計には相棒のカノンを忍ばせている。
「こんにちは。少し、お話を伺えないでしょうか」
私がごく普通の訪問者として、この村の歴史や文化について尋ねると、若い職員は少し驚いた顔をしながらも、奥の応接室へと通してくれた。
そこで私は、初めて自身の共同体構想の輪郭を語った。経済効果や最新技術の話ではない。「静寂」と「責任」という、現代社会が失った価値観を核とした共同体のビジョンを。
「わかりました。そういうことでしたら、村長――村の長老とお話をされると良いですよ。早速、村長に連絡をとって手配いたしましょうか?」
職員は親切にも、村の長老との面会の場を設けることを提案してくれた。
「……ありがたいのですが、長老とお会いする時には私のチーム――大切な仲間と共にお会いしたいので、また改めてお伺いさせていただきます」
こうして、私の理想の共同体という壮大な構想は、この奈良の山深い村に、最初の、しかし確かな根を下ろしたのである。