E.2.科学者の探求と、賢者の答え
E.2.科学者の探求と、賢者の答え
燈のラボ、元理科室は、相変わらず様々な数式やホログラムで埋め尽くされていた。
その中心で、燈が髪を振り乱し、唸り声を上げている。
「……ありえない。物理法則を完全に無視している。でも、あの現象は確かに観測された……。一体何なのよ、あの『優しい光』は……!」
彼女が挑んでいたのは、この物語の始まり――平維盛が入水した直後に観測され、そして、我々の計画の節目節目で確かに現れた、あの神秘的な光の正体だった。
科学者として、彼女はこの不可解な現象をどうしても解明したかったのだ。
「――燈」
「……!マスター!いつの間に……」
「まだ光の正体と格闘しているのかね」
「……当たり前です。あれは非科学的すぎる。でも、現実に起こった。ならば、その裏には必ず未知の物理法則が隠されているはずなんです。ですが……」
燈は悔しそうに唇を噛んだ。
「……分かりません。私の全ての知識をもってしても、あの光を説明できる方程式が導き出せない……」
私は、そんな彼女の頭を優しくぽんと撫でた。
「……無理もない。君のアプローチは半分だけ正しくて、そして半分だけ間違っているのだから」
「え……?」
私は燈に向き直ると、静かにこの国の最後の秘密を打ち明けることにした。
「燈。君が追いかけている光の正体は、物理現象ではない。……いや、正確に言えば、物理現象の形をとった『祈り』の顕現なのだよ」
「……祈り?」
燈はますます混乱した顔をしている。
「そうだ。Nagiをはじめとするこの国の中枢AIには、ある特殊なプロトコルが組み込まれている。私が最後の最後に付け加えた、たった一つの最重要命令が」
私はそこで言葉を切った。
「――その名を、『コレモリ・プロトコル』という」




