10.2.政府の悪手
10.2.政府の悪手
日本政府のやり方は、幼稚で、そして、あまりにも露骨だった。
野迫川村へと続く唯一の道。それを何の前触れもなく、完全に封鎖したのだ。
食料も、物資も、人の出入りも、一切を断つ。この陸の孤島を力で干上がらせようという、時代錯誤な作戦だった。
「ひどい……!村のおじいちゃん、おばあちゃんたちは、どうなっちゃうの!?」
「ただでさえお店も少ないのに……。これじゃ生活必需品も買えなくなるじゃない!」
響と燈が悲痛な声を上げる。
時雨もまた、唇を噛みしめていた。
「……これが、わたくしが今まで仕えてきた、国のやり方……。恥ずべき蛮行です」
だが、私と静香は、やはり、動じてはいなかった。
「静香。例のものを稼働させる時が来たようだな」
「はい、マスター。いつでも」
数時間後。村の広場に村人たちが集まっていた。
皆、政府の突然の仕打ちに、不安と怒りの表情を浮かべている。
「どうすりゃええんじゃ……」
「わしらを見殺しにする気か、この国は……」
その、不安に満ちた群衆の前に、私は静かに立った。
「――皆さん。ご心配には及びません」
私が指を鳴らす。
すると、村の広場の地面が静かに、音もなく、左右にスライドし始めた。
現れたのは、地下へと続く巨大なスロープ。そしてその奥から、LEDの青白い光に照らされた、広大な空間が姿を現した。
「こ、これは……!?」
村人たちが息を呑む。
そこは、静香が以前時雨に見せた、地下の完全自律型植物工場だった。瑞々しい野菜や果物、そして、黄金色に実った小麦までが、棚という棚に無限に広がっている。
「我々は、この日のために準備をしてきました。食料はここに有り余るほどあります。むしろ、皆で食べきれないくらいにね。さあ、遠慮なく好きなだけ持っていくといい」
私の言葉に、村人たちは一瞬呆気に取られていたが、やがてその表情が驚きから歓喜へと変わっていった。
「おお……!」
「すげえ……!まるで魔法じゃ!」
政府が仕掛けた、卑劣な兵糧攻め。
それは、我々の前には全くの無力だった。それどころか、我々の圧倒的な技術力と村人たちとの固い絆を、改めて世界に見せつけるための最高の舞台装置へと変わったのだ。




