10.1.勝利の余韻、そして次の一手
第十部 盤上の攻防
10.1.勝利の余韻、そして次の一手
司令室のメインモニターに映し出された、総理大臣の謝罪会見。
その光景は、我々の最初の勝利を何よりも雄弁に物語っていた。
「やったー!見た!?見た、今の!?あのいっつも偉そうにしてるおじさんが、しおらしく頭下げてるよ!」
響はぴょんぴょんと飛び跳ねて、大喜びだ。
「ええ。時雨さんの情報がなければ、こうも鮮やかなカウンターは決まりませんでしたわ。お手柄です、時雨室長」
静香の労いの言葉に、時雨は少し照れくさそうに頬を染めた。
「……わたくしがしたことなど、ただ情報を運んだだけです。全てはマスターの戦略と、静香さん、響さんの実行力のおかげです」
「いや。君がその『情報』という名の、最も強力な武器を我々にもたらしてくれた。君は紛れもなく、この勝利の立役者だ」
私の言葉に、時雨は嬉しそうに、しかし、きりりとした表情で頷いた。彼女はもう迷わない。自らの能力を、誰のために、何のために使うべきか、その答えを見つけたのだ。
「……しかしマスター。これで終わりではありませんわよね?」
一人、冷静に盤面を見つめていた静香が、私に問いかける。
「うむ。その通りだ。情報戦で敗北した彼らが次に打ってくる手は、より直接的で、そして、より野蛮なものになるだろう。おそらくは……物理的な圧力だ」
私がそう言った、まさにその時だった。
司令室に、Aegisの硬質な警告音が響き渡った。
『マスター。村へと通じる全ての公道が封鎖されました。名目は『大規模インフラの緊急安全点検』。ですが、実質的な兵糧攻めです』
「……来たか」
私は静かに呟いた。
オセロ盤の次の手が今、打たれたのだ。




