9.1.新しい仲間、新しい朝
第九部 静かなる宣戦
9.1.新しい仲間、新しい朝
時雨が本当の笑顔を取り戻した、次の日の朝。
野迫川村の廃校は、いつもと変わらない、穏やかな静寂に包まれていた。だが、その静寂の中には、昨日までとは違う確かな温かみが満ちていた。
「じゃじゃーん!どうかな、時雨ちゃん!Comfyに頼んで、お揃いの制服作ってもらっちゃった!」
響がまるで自分のことのように嬉しそうに、時雨に一着の服を差し出した。それは、響たちが普段来ている、白いブラウスと落ち着いた色合いのチェックスカートを基調とした、シンプルで上品な制服だった。
「わたくしに……ですか?」
「当たり前じゃん!時雨ちゃんはもう、私たちの大事な仲間なんだから!」
時雨は戸惑いながらも、その制服を受け取った。黒いコンバットスーツではない、誰かを傷つけるためではない、ただ、仲間と共にいるための服。その重みが、ずっしりと、しかし心地よく、彼女の腕に伝わった。
理科室では、燈がそわそわしながらも、時雨のために新しいデスクを準備していた。
「べ、別に、あなたのためじゃないんだからね!研究スペースが少し手狭になっただけよ!……でも、その……分からないことがあったらいつでも、聞いてあげなくもないわ」
ツンとした物言いだが、その耳は真っ赤に染まっている。彼女なりの、最大限の歓迎の意であることは、誰の目にも明らかだった。
そして、司令室。
静香は、時雨の前に一枚のIDカードを差し出した。
そこには『春凪共和国 戦略情報室長 時雨』という文字と、はにかむように微笑む彼女の写真が印刷されていた。
「……戦略情報室長?」
「ええ。あなたの能力を、最大限に活かせるポジションですわ。これからは、私と並んで、この共和国の頭脳となっていただく。よろしいですわね、時雨室長?」
静香の、挑発するような、しかし、信頼に満ちた笑みに、時雨は居住まいを正した。
「――はい。霧雨室長。謹んで、お受けいたします」
響の「友情」、燈の「好敵手としての敬意」、そして静香の「対等なパートナーとしての信頼」。
それぞれが、それぞれの形で、時雨の居場所をここに作ろうとしていた。
時雨は、胸の奥から込み上げてくる熱いものを感じながら、新しい制服にそっと袖を通したのだった。




