8.5.帰還
8.5.帰還
数時間後。
野迫川村の、あの廃校の校庭に、一機のヘリが、再び舞い降りた。
タラップから現れたのは、黒いコンバットスーツではなく、シンプルなワンピースに身を包んだ、時雨の姿だった。
校舎の玄関では、まるで、全てを知っていたかのように、三人の少女たちと、そして、私が、彼女を待っていた。
「……ただいま、戻りました」
時雨は、少し照れくさそうに、しかし、はっきりと、そう言った。
「「「おかえりなさい(!)(、ですわ)!!」」」
響と燈と静香の声が、綺麗に重なる。
響は、時雨に飛びついて、わんわん泣いている。
燈は、「別に、待ってたわけじゃないんだからね!」と、顔を真っ赤にしながら、そっぽを向いている。
静香は、ただ、穏やかな笑みで、その光景を見守っていた。
私は、そんな彼女たちの輪に、静かに歩み寄った。
「――おかえり、時雨くん。新しい仲間を、心から歓迎するよ」
「……はい、マスター」
時雨は、私の目をまっすぐに見つめ、にっこりと、花が咲くように、笑った。
それは、私が、そして、おそらくは彼女自身さえも、初めて見る、彼女の、本当の笑顔だった。
静かなるチェスは、これで、本当に、終局だ。
そして、これから始まる、新しい物語の、本当の、幕開けだった。
――第八部・完――




