表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本社会のノイズに絶望した最強AIエンジニア(62)、俺を「マスター」と慕う天才美少女たちと静かな理想国家を建国する  作者: 春凪一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/55

6.6.ライバルと、友達のあいだ

6.6.ライバルと、友達のあいだ


時雨が、燈の難問を解いてしまった一件は、少女たちの間に、新たな波紋を広げていた。


「ねえ、静香ちゃん!時雨ちゃんって、やっぱりすごいよ!燈のあの難しい顔を、一発で解決しちゃうんだもん!」


響は、まるで自分のことのように、興奮して静香に話しかけていた。彼女の中では、時雨はもう、か弱き保護対象ではなく、尊敬すべき友人の一人になりつつある。


「ええ、そうね。……興味深いわ」


静香は、響に相槌をうちながらも、その思考は別の場所にあった。


(文系の女子大生が、超高次元物理学を解く……?ありえない。彼女の経歴は、やはり偽装されたもの。だが、あの能力は本物。一体、どこで、あれほどの知識を……?)


そして、当の燈は、一番複雑な心境にあった。


理科室に一人こもり、ぶつぶつと何事かを呟いている。


「……ありえない。あの解法は、まだ世界中の誰も発表していない、全く新しいアプローチだわ。それを、なぜ、彼女が……?文献にも、論文にも、どこにも載っていなかった。まるで……未来の物理学を知っているみたいじゃない……」


彼女は、時雨に対して、これまでの警戒心とは質の違う、新たな感情を抱き始めていた。


それは、恐怖であり、嫉妬であり、そして何よりも――科学者としての、燃えるような「好奇心」だった。


「時雨……。あなた、一体、何者なのよ……」


燈は、知らず知らずのうちに、時雨のことを「あなた」と呼んでいた。それは、彼女が、相手を自分と対等、あるいはそれ以上の存在と認めた時にだけ使う、特別な呼び方だった。


時雨自身は、あの日以来、ますます口数が少なくなった。


自分の犯した「ミス」を、どう取り繕うか、必死に考えているのだろう。彼女は、今まで以上に、響たちの輪から、そっと距離を置くようになった。


だが、そんな時雨の様子を、響が放っておくはずもなかった。


「しーぐれーちゃん!なーにしてるのー?そんな暗い顔してたら、幸せが逃げちゃうよ!ほら、こっち来て、一緒におやつ食べよ!」


響は、時雨の手をぐい、と引っ張る。その強引で、底抜けに明るい優しさが、今の時雨には、一番堪える薬だったのかもしれない。


「……響さん……」


「んー、なあに?」


「……なんでも、ありません」


時雨は、そう言って、力なく微笑んだ。


任務と、友情。


偽りと、真心。


二つの心臓の不協和音は、もはや、彼女の意思だけでは、コントロールできないレベルにまで達していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ