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日本社会のノイズに絶望した最強AIエンジニア(62)、俺を「マスター」と慕う天才美少女たちと静かな理想国家を建国する  作者: 春凪一


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1.1.現代社会への幻滅と決意

第一部:発端 新たな秩序への希求


1.1.現代社会への幻滅と決意


「――耐え難いノイズに満ちている……」


午後三時のターミナル駅。


雑踏の真ん中で、私はふと足を止め、そう低く呟いた。


スマートフォンのスピーカーから垂れ流される甲高いゲームの電子音、イヤホンからの音漏れ、ビデオ通話のけたたましい笑い声。それら全てが混じり合い、一つの巨大な不協和音となって私の鼓膜を、そして魂を直接殴りつけてくる。


向かいのホームでは、若い男が誰にともなく悪態をつきながら、空のペットボトルを線路へと投げ捨てた。その行為をとがめる者は、誰一人としていない。


(ああ、ダメだ。もう限界だ)


私は汚物でも見るかのように顔をそむけ、その場を静かに立ち去った。私の背後では、何事もなかったかのように、無秩序な音の洪水が渦巻き続けていた。


西暦2032年1月13日。私は、61年の歳月をその身に刻んでいた。


表向きは、自らの名を冠したAI開発会社のCEO。天賦の才とやらで、有り体に言えば、大成功を収めていた。時間にも、資金にも、何不自由ない満ち足りた日々。


だが、私の心は、半世紀以上も浴び続けてきた現代日本の「くだらない不愉快な出来事」の堆積によって、とっくの昔に擦り切れていたのだ。


自社の役員会議室に戻ると、そこは外の喧騒が嘘のような静寂に満ちていた。


床から天井まで続く巨大なガラス窓の向こうには、灰色のビル群が林立している。その無機質な風景を背に、一人の少女が私を待っていた。


「春凪さん、お待ちしておりました」


彼女の名は、霧雨静香きりさめしずか


私が自らスカウトした、18歳の天才戦略家だ。その涼やかな瞳は、常に膨大なデータと、その先にある未来だけを見据えている。


「RHK-9、RepublicHarunagiKernelのバージョン9を政府に納品する件、最終仕様の確認をお願いします」


静香が、宙に浮かぶホログラムディスプレイを指し示す。私はその報告に静かに頷いた。


「うむ、その方向でお願いします。ただし、倫理プロトコルの監視レベルは、現行のまま一切変更しないように。我々のカーネルが、どのように使われるかを注視し続けることは、開発者としての我々の責任だ」


「承知いたしました。リスクヘッジについては、既に第二案までシミュレーション済みです」


静香は表情一つ変えずに答える。頼もしい限りだ。


だが、私の憂鬱は晴れない。


(自分勝手な人間が増えすぎた。日本とは、このような国であったか)


私の脳裏を、無数の光景がよぎる。


列への割り込み、歩きスマホ、店員への罵倒、巧妙化するハラスメント、そして、学校で静かに心を殺されていく子供たち。


この国は、あまりにも多くの「配慮」と「責任感」を失ってしまった。


ピコン、と私の肩の上で小さな電子音が鳴った。


手のひらサイズの妖精のようなホログラムアバターが、心配そうに私の顔を覗き込む。


『マスター、心拍数に乱れを検知しました!ストレス性疲労の可能性があります。癒やし系BGMを再生しますか?』


「いや、いい。ありがとう、カノンちゃん」


私は、秘書AIのカノンの申し出を、手で制した。


音楽で癒やされるような、そんな生易しい問題ではないのだ。


(この国は、もう手遅れだ。システムそのものが、バグだらけになっている)


ならば――。


(ならば、私が創るしかない)


そうだ。もう、迷うことはない。


私は、この腐りきったシステムを、このノイズに満ちた世界を、根底から覆す。


「責任と静寂を、自らの意志で選択する者たちが集う場所」


そんな、全く新しい共同体を。


この手で、私のAIで、創り上げてみせると。


壮大にして孤高の決意が、私の魂の奥底で、確固たるものとして鋳型に流し込まれた瞬間であった。


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