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日本社会のノイズに絶望した最強AIエンジニア(62)、俺を「マスター」と慕う天才美少女たちと静かな理想国家を建国する  作者: 春凪一


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5.2.盤上のノイズ

5.2.盤上のノイズ


画面に映し出されたのは、官房長官による記者会見の様子だった。


いかにもな高級官僚といった風情の男が、神経質そうに眼鏡の位置を直しながら、用意された原稿を読み上げている。


「……一部で報道されております、春凪一氏を名乗る人物による、いわゆる『春凪共和国』なる団体ですが、政府として、その存在を国家として承認することは断じてあり得ず、また、奈良県の一村落を拠点とする一連の活動は、現行法に照らし合わせ、極めて問題のある行為であると認識しております。国民の皆様におかれましては、甘言に惑わされることなく、冷静な対応をお願いするものであります……」


「うわー、出たよ。頭の固いお役人さんの、つまんない声明」


響が、頬杖をつきながら、つまらなそうに言う。


「予想通りの反応ですわね。まずは世論を味方につけ、我々を『社会を混乱させる危険なカルト団体』というイメージにしたいのでしょう。古典的ですが、有効な手です」


静香が冷静に分析する。


「ですが、論理的ではありません。私たちの活動は全て合法的な手続きに則っていますし、資金も全世界からの正当な支援によるものです。政府の言い分には、何の根拠もありません」


燈が、少し怒ったように反論した。


「うむ。燈の言う通りだ。だが、世論というものは、必ずしも論理では動かん。むしろ、感情やイメージで動くものだ。……静香、カウンターの準備はできているか?」


私の問いに、静香は不敵な笑みを浮かべた。


「もちろんです、マスター。既に、世界で最も影響力のある経済誌数社に、独占インタビューの場を設けてあります。テーマは『日本政府の時代錯誤な対応が、いかに世界の投資機会を奪っているか』。明日には、この記事が世界中を駆け巡るでしょう」


「りょーかい!そっちがその気なら、響ちゃんもやっちゃうもんね!こっちには、Comfyが作った美味しいご飯と、村のおじいちゃんおばあちゃんの素敵な笑顔があるんだから!『理想郷のリアルな日常』ってタイトルでドキュメンタリー映像作って、世界中に配信しちゃおーっと!」


「それだ、響!」


さすがは我がチームのトリックスター。彼女のそういう、既成概念に囚われない発想が、局面を大きく動かすことがある。


論理と正しさで殴る静香の剛の戦術と、共感と憧れで心を掴む響の柔の戦術。この二つが合わされば、政府の旧態依然としたプロパガンダなど、物の数ではない。


(さて、どう出るかな、日本政府)


私は、紅茶を一口すすりながら、盤上の次の手を静かに待つことにした。


だが、政府が用意していたのは、表舞台でのくだらないお喋りだけではなかった。


彼らは、我々の知らないところで、もっと直接的で、そして陰湿な一手を用意していたのだ。


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