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日本社会のノイズに絶望した最強AIエンジニア(62)、俺を「マスター」と慕う天才美少女たちと静かな理想国家を建国する  作者: 春凪一


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4.3.運命の土地

4.3.運命の土地


数日後。書斎のメインモニターに、緑豊かな山村の映像が映し出されていた。


『マスター。候補地の選定が完了しました』


Nagiの報告を受け、私と三人の少女たちはモニターの前に集まっていた。


「ここが……私たちの最初の石を置く場所?」


燈が、食い入るように映像を見つめている。そこに映っているのは、コンビニ一つない、日本のどこにでもありそうな、しかし息をのむほど美しい過疎の村だった。


モニターの隅には『奈良県吉野郡野迫川村』という文字が表示されている。


「のせがわ……むら。データを確認しました。人口約三百人、高齢化率六十パーセント超。主な産業は林業ですが、衰退の一途を辿っています。客観的データだけ見れば、限界集落、ですね」


静香がタブレットを操作しながら、冷静に分析する。


「うわー!でも、すっごく空気が美味しそう!星とかも、めちゃくちゃ綺麗に見えるんじゃないかな?」


響は、データよりも映像から伝わる「感じ」を大切にする。彼女の感性は、情報戦においてしばしば論理を超える力を発揮する。


私は、三人の反応に静かに頷いた。


「うむ、やはり野迫川村か。Nagi。なぜ、ここを選んだのか、説明してやってくれ」


『はい。マスターから頂いた条件――日本の原風景が残る、静かで、美しい場所。そして、住民の皆様が我々の理念に共鳴する可能性が高い土地。この二つの条件を基に、全日本の過疎地域を対象にシミュレーションを行った結果、最適地として算出されたのが、この野迫川村です』


「でも、どうしてここの人たちが、私たちの理念に共鳴する可能性が高いって言えるの?何かデータがあるわけ?」


燈が、最もな疑問を口にした。物理学者の彼女は、常に論理的な根拠を求める。


『はい。直接的なデータではありません。ですが、この土地には一つの興味深い歴史的レイヤーが存在します。――平維盛です』


「「「平維盛!?」」」


再び、三人の声がハモった。まさか、あの残念なイケメン貴公子の名前が、こんな最新鋭のAIの口から出てくるとは思わなかったのだろう。


『野迫川村は、平維盛が源氏からの追討を逃れ、隠れ住んだとされる終焉の地の一つです。そして、マスターが少年時代に強烈なインスピレーションを受けた、那智の海で入水したとされる人物でもあります』


Nagiは淡々と事実を述べる。だが、その言葉には、単なるデータではない、何か運命的な響きがあった。


「まさか……ハジメぴょんがこの計画を思いついたキッカケと、最初の候補地が、800年の時を超えて繋がるってこと……!?」


響が、目をキラキラさせて私を見る。


「……非科学的です。偶然の一致に過ぎません。ですが……ですが、もし本当に何らかの因果関係があるとすれば……それは、物語として、強すぎます」


燈は、科学者としての自分と、ロマンを感じる自分との間で葛藤しているようだった。可愛い奴め。


静香は、黙って何かを計算していたが、やがて顔を上げた。


「……なるほど。理解しました。これは、単なる土地の選定ではない。私たちの建国神話、その始まりの『舞台装置』として、これ以上ない場所だということですね。極めて、合理的です」


三者三様の、完璧な回答だ。


私は満足して、立ち上がった。


「うむ。皆の言う通りだ。ここは、私にとって、そして我々の計画にとって、運命の土地だ。だが、最も重要なのは、データでも、物語でもない」


私は、モニターに映る村の穏やかな風景に、視線を向けた。


「そこに住む人々が、我々を受け入れてくれるかどうかだ。――会いに行こう。私たちの理念を、私たちの言葉で、直接伝えに」


こうして、我々の最初の訪問先が決まった。


それは、ハイテクなプレゼンでも、オンライン会議でもない。


日本の片隅で静かに暮らす人々の心を、この足で訪ね、この声で動かすという、極めてアナログな「対話」から、全ては始まるのだ。


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