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日本社会のノイズに絶望した最強AIエンジニア(62)、俺を「マスター」と慕う天才美少女たちと静かな理想国家を建国する  作者: 春凪一


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4.2.静かなる宣戦布告

4.2.静かなる宣戦布告


「さて、資金は集まった」


数日後。祝賀会と今後の作戦会議を兼ねて、私たちはささやかなパーティーを開いていた。テーブルには燈の好物である鮭のムニエルや、静香がこだわった最高級のチーズが並んでいる。もちろん、全て生活補助AIのComfyが完璧に準備してくれたものだ。


「次の段階に移行する。――共和国を建設するための『土地』の確保だ」


私の言葉に、しゃべり続けていた響と、もぐもぐと頬張っていた燈の動きが止まる。


一番冷静な静香が、すっと手を挙げた。


「マスター。候補地はすでにいくつかリストアップしてあります。ですが、最大の問題は、どうやって日本政府からその土地を『譲り受ける』か、です。普通に考えれば、国家が土地の割譲に応じるはずがありません」


「そうだよハジメぴょん!お金で買えるものじゃないし、戦争するわけにもいかないでしょ?」


響が口を尖らせる。


うむ、と私は頷いた。


「もちろん、暴力という『ノイズ』は使わん。私たちのやり方は、もっと静かで、理性的で、そして……圧倒的でなくてはならん」


私は、三人の顔をゆっくりと見渡した。


「これから我々が日本政府に対して行うのは、戦争ではない。ゲームだ。――名付けて、『オセロ対決』」


「「「オセロ対決?」」」


三人の声が、綺麗にハモった。


私の肩の上でうたた寝していた秘書AIのカノンが、ぴくりと耳を動かす。


「そうだ。白と黒の石を盤上に置いていく、あのゲームだよ」


私は、紅茶を一口含み、説明を続けた。


「私たちの『春凪共和国』という黒い石を、日本という盤の隅に、まず一つ置く。日本政府は、当然、その石を取り囲み、ひっくり返そうと、様々な妨害をしてくるだろう」


「経済制裁とか、法的な圧力とか、ですか?」


静香が的確に補足する。


「その通り。だが、我々は動じない。むしろ、彼らが石を置けば置くほど、我々の優位性が際立つことになる。我々の持つ圧倒的な技術、経済力、そして国際的な信頼……それらを使って、彼らの石を一つ、また一つと、我々の色にひっくり返していく」


「なるほど……!相手が攻撃してくるほど、カウンターでひっくり返せる範囲が広がるってことか!」


燈の目が、物理法則の美しい数式を見つけた時のように輝いた。


「そっかー!経済で攻撃されたら、もっとすごい経済力で日本企業を助けちゃったり?文化で邪魔されたら、もっと面白いイベントをこっちで開いて、お客さんを総取りしちゃったり?」


響の発想は、いつも柔軟だ。


「その通りだ。経済、文化、学術、外交……あらゆる分野で、我々の『正しさ』と『優位性』を示し、日本という盤面を、静かに、だが着実に、我々の色で塗り替えていく。暴力も、脅迫も、必要ない。世界は、より優れたシステムを自ずと選択する。最終的に、日本政府が自ら『参りました』と頭を下げ、土地の割譲を認めざるを得ない状況を創り出す。それが、我々の『静かなる戦争』の全貌だ」


シン、と書斎が静まり返る。


三人の少女は、私の言葉を、その魂に刻み込むように聞いていた。


やがて、静香が、決意に満ちた表情で口を開いた。


「……理解しました。壮大ですが、これ以上なく論理的なプランです。盤上の石の配置、計算を開始します」


「うおおお!なんか燃えてきたーっ!やってやろうじゃん、オセロ対決!」


響が、ガッツポーズを作る。


「……正直、スケールが大きすぎて、まだ頭が追いつきません。でも……でも、この計画が成功した世界を、見てみたいです」


燈が、熱のこもった瞳で私を見つめる。


(よし)


私は満足して頷くと、Nagiに命じた。


「Nagi。最初の石を置く場所を探してくれたまえ。条件は覚えているね?」


『はい、マスター。日本の原風景が残る、静かで、美しい場所。そして、そこに住む人々が、我々の理念を理解し、共鳴してくれる可能性が最も高い土地……検索を開始します』


こうして、私たちの、世界で最も静かで、最も壮大な「国盗りゲーム」が、静かに幕を開けたのだった。


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