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名もない冒険の物語  作者: 白雉
第四章
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ピクニック

「リルちゃん、危ないっ!」


交易品の集積所を襲った犯人たちが判明し、その集落に皆でやってきた。

ルヴィ様が集落の真ん中で語りかけると、南の道を見張っていたお兄様とギーヴ君、そしてリルちゃんに向かって男が襲いかかっていった。


恐る恐る目を開けると、リルちゃんの前に男が倒れていた。


すると、集落の人々がぽつぽつと家から出てきて、ルヴィ様の元に集まった。私もアデルお姉さまと一緒に村の中央に向かう。


集落の長が名乗り出てきて、事情を話し始めた。驚くべきことに、私とフィオラちゃんを誘拐した事件も、この集落が関わっていたのだと分かった。

さらに、それがペルディーニ商会からの指示によるものであったことも判明した。

また、ペルディーニ商会に集落の子供たちを人質に取られていることも明らかになった。


それを聞いた私たちは、その子供たちを救出することを、集落の長、ユーリ・アイゼルと約束した。

そして、バジェエルモソの街に戻ると、早速、子供たちの奪還に皆が向かうことになった。私は商館で、皆の帰りを待った。

皆は無事、人質の子供たちを連れて戻ってきた。


子供たちと言っても、一番上の子は私と大して変わらない年齢だろう。一番下の子は三歳くらいだろうか?

このようなペルディーニ商会のやり方が、私は許せない...。


翌日、子供たちを連れて、マデイラ島の集落に戻ると、子供たちの両親が飛び出してきた。皆、私たちに感謝の言葉をかけてくれた。


ルヴィ様は、ユーリさんと話し合うことになった。


「ユーリさんたちは、今後どのようにされるおつもりですか?」


「私たちは、これまで各地から情報を集め、それをペルディーニ商会に提供することで収益を得てきました...。

 しかし、ペルディーニ商会と決別した以上、この集落は解散し、それぞれが新たな道を歩むつもりです。」


情報の重要性は数回の交易の旅を通じて実感した私にとって、この集落がなくなってしまうのは非常に残念で、心に引っかかるものがあった。

「ルヴィ様、この集落を私たちの商会の一部として存続させることはできないでしょうか?簡単な話ではないかもしれませんが...。」


「それは、素晴らしい考えですわね。情報は非常に貴重ですし、それを集める人たちがいてくだされば、きっとお互いにとって利益になるでしょう。」

アデルお姉さまも賛成してくれた。するとルヴィ様は私たちに向き直り、穏やかに答えた。


「私もそのことを考えていました。ですが、まずは確認したいことがあります。」


ルヴィ様は再びユーリさんに向き直り、尋ねた。


「各地というのは、どの程度の範囲の情報を、どれほどの速さで集めることができるのでしょうか?」

その問いに、ユーリさんが静かに答える。


「現在、王国の主要な街には情報を集める仲間が三人以上潜んでいます。王都からの情報は、通常十五日でパルマスの街に届きます。」


「王都から十五日ですか...それは非常に早いですね。普通に旅をすれば、最低でも二十五日はかかるところです。

 ユーリさん、この集落をこのまま存続させ、私たちの商会の一員として働いていただけませんか?もちろん、これまで以上の活動資金をお約束します。」


ユーリさんは驚きの表情を隠せず、少し間をおいて答えた。

「ルヴィさん、それでよろしいのでしょうか?」


「もちろんです。こちらからお願いしていることですから。」


こうして、トパーズの集落はペルディーニ商会と決別し、パルマス商会の一員として加わることが決まった。


パルマスの街に戻ると、次の交易の旅の準備が始まった。今回の旅では、ギルちゃんも同行することになった。

それを聞いたリルちゃんは、クスクス笑いながら口を開いた。


「オオカミさんの商人だなんて、聞いたことがないわ。」


その言葉に、アデルお姉さまが少しからかうように言った。

「では、リルも商人ではないのだから、今回はお留守番かしら?」


「私は護衛よ!」

リルちゃんはすぐさま反論したが、ハウルお兄様がニヤリと笑いながら言った。


「護衛はランスと護衛隊の方たちがいるから、大丈夫だろう。」


「ハウルまでお姉さまの味方なの?」

リルちゃんが不満げに言うと、ハウルお兄様は肩をすくめながら答えた。


「事実を言ったまでさ。」


リルちゃんはすっかり拗ねてしまった。


私は、そんなリルちゃんに声をかけた。

「リルちゃんも護衛として頼りにしてますよ。」


すると、リルちゃんは喜んでくれた。

「私のことをわかってくれるのはレナだけね...。」


交易の旅に出発すると、ギルちゃんが優しくしてくれる。ギルちゃんの背に乗ると指示がしやすく、ギルちゃんも的確に動いてくれる。

私は今回の旅でギルちゃんのことが、とても気に入ってしまった。


回数を重ねるごとに商品の数が増えていく。今でもギズモグロウブの集積所には数多くの交易品が積まれている。

交易の頻度を増やしても、十分に品物は足りるだろう。しかし、私たちだけでは年に二回以上の旅は難しいと考えている。


交易の旅から帰ると、秋も深まり、ひんやりとした風が吹き込んできていた。


昨年の末から、ランス様の提案で騎乗の練習を始めていた。

ルヴィ様がパルマスの牧場で新たに四頭のお馬さんを購入したからだ。リルちゃんの話によると、以前リッキとライズを購入した際に約束をしていたらしい。

しかし、約束していたのは三頭だけで、ヤンチャすぎて買い手がつかない小さなお馬さんを一頭押し付けられたらしい。


騎乗の練習を始めたと聞いたダスクウィーバー男爵が、ギーヴ君のために一頭お馬さんをプレゼントしてくれた。リルちゃんはそのお馬さんをロボと名付けた。


私たちは、それぞれ担当するお馬さんを決めてお世話をすることになった。

ルヴィ様はリッキ、アデルお姉さまはライズ、ランス様はエクリプス、リルちゃんはアズール、ギーヴ君はロボ。


そして新たに仲間になった大きなお馬さんをハウルお兄様が担当し、そのお馬さんにはリルちゃんがグランと名付けた。

同じく新しく仲間になった一頭はソニアお姉さまが担当し、この子にはカンタルとリルちゃんが名付けた。


もう一頭は、カレノールお兄様が教会から来てお世話することになった。

カレノールお兄様が来られないときは私がお世話をすることになり、この子の名前はドルセと名付けられた。


そして、あのヤンチャと言われていたお馬さんは、私に懐いてくれて、とても大人しくて優しい。

私はその子のお世話をすることになり、リルちゃんがクラインと名付けてくれた。


ある日、アデルお姉さまの提案で、皆でお馬さんに乗ってピクニックに行くことになった。


その朝、私はアデルお姉さまと一緒に食事の準備をし、バスケットにおいしそうな料理を詰め込んだ。


皆、それぞれのお馬さんに乗り、出発することになった。アンフィちゃんもギルちゃんの背に乗って着いてくる。今回は、ギーヴ君のお母様のイヴァ様も一緒だ。

ギーヴ君の提案で、祝福の森にある大きな池へ行くことになった。


その池は、パルマスの街ほども広く、池の南側には広々とした場所があり、そこには大きな台座のような岩があった。

ギーヴ君は、この岩は祝福の森のグレートウルフの王様しか昇ることが許されていない特別な場所だと教えてくれた。


元々イヴァ様はその王様だったが、今の王、ガル様を気遣って、昇ることを避けているらしい。


私たちは、開けた草原でお馬さんたちの体をぬぐってあげることにした。


「クラインちゃん、ここの草をたくさん食べてね。」


するとリルちゃんがやってきて、クラインをじっと見ながら言った。

「この子、どこがヤンチャなのかしら?レナに似て、こんなに大人しくて優しいのに。」


お馬さんたちが、のんびりと草を食べたり、池の水を飲んだりする様子を見ながら、私たちも昼食を楽しむことにした。


今日は雲ひとつない晴天で、日差しがぽかぽかと暖かい。時折吹く風がひんやりと心地よく、まるで時間がゆっくり流れているような、穏やかな一日だった。


カレノールお兄様が「フィオラも連れてくればよかったな。」と残念そうに言った。


それを聞いたアデルお姉さまが、カレノールお兄様に向かって言った。

「次に来るときは、フィオラちゃんや孤児院の子たちも連れてきてあげましょう。」


「そうだね。また今度、皆で来ようか。」

それを受けて、ハウルお兄様が言った。


「僕は、この大きな池に船を浮かべて遊びたいな。」

ソニアお姉さまがそう言うと、レナちゃんが笑いながら応えた。

「ソニアは、いつも船のことばかりね。」


「今ね、ロギンス工房のスフェリアスさんと、川や池を走る船を作ろうって話してるんだ。」


ロギンス工房はパルマスにある道具屋さんで、ソニアお姉さまはそこでいろいろ学んでいるらしい。


「川を船で移動できると、便利になりますね。この島では使い道が限られるかもしれませんが、大陸では有効な移動手段になると思います。」

ランス様は、ソニアお姉さまの船に興味を持ったようだ。


「そうなんだ。エルベ川を見ると、あの川を船で渡りたいと思っちゃうんだよね。」


「それなら、ソニアの船が完成したら、エルベ川で試してみましょうか。

 もし、有効な移動手段になるなら、情報収集などの移動手段として、ユーリに提案することもできますからね。」


「ルヴィは、なんでもお仕事にしちゃうのね。今日は皆でのんびりする日なんだから、ルヴィもお仕事のことを忘れたらいいのに...。」


「リルは、いつものんびりしてて、羨ましいな。」


ハウルお兄様が少し意地悪そうに言うと、リルちゃんはほほを膨らませて答えた。

「私だって、忙しいときはあるのよ。でも今日は皆でのんびりするんだから。」


皆の笑い声が草原に響き渡り、穏やかな時間が静かに流れていく。

こんな風に、いつまでも穏やかに過ごせたらいいな、と私は思いながら、みんなの顔をじっと見つめた。


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