旅立ちの日に
「世界を救える者!この者はその力がある!
皆!力を分け与えるんだ!」
地に伏せる二人
空には一つの巨大な球体があり、光り輝くその玉には見ているだけで勇気が貰える。
一つの小さな玉が皆と一つになり、それは糧となる。
燃える街並み、耳を劈く悲鳴、嘆き、叫び
それは皆の悲願であり、今一度、いや、初と言っても良いだろう。
皆の願いが一つとなり、世界は彩を取り戻す。
みんな、本当に、本当にありがとう。
私には、他の者を動かす力なんてなかった。
…でも、今はこんなに大切にしたい人がいる。
「私たち、皆の思いを繋いでいかないと」
「あぁ、俺たち、二人なら怖いもんなんてねぇよ」
ユウガ、蓮、キク、モネ
二人の背中を押して
「「ラッキング」」
その玉は二人に混合して、本来の力を引き出す為には十分であった。
ナズナの銃弾は全ての法則を書き換える程。
大きさも異なり、掌サイズだった拳銃は火砲といっても過言ではない。
赤く情熱が満ち溢れるその火砲から解き放たれる銃弾は
先程は私の剣の光波ですら苦戦していた闇の光線をいともたやすく打ち消す。
光線、更には体すら貫通。
致命傷と呼ぶには十分なものであろう。
最後の足掻きとでも言うべきか、空は黒く染まり、いびつな笑い声と共に
多数の人間めいた生物が空から降ってくる。
「ラッキング!」
透明な弓の数々を構える。彼らは一見無防備に降下しているようだが
その目には何か計り知れない意図が宿っている。私の心の奥には、恐れと好奇心が交錯していた。
鋭い音を立てて飛び出した矢は、空中を切り裂き、人間に命中する。
彼らが落ちる瞬間、周囲の静けさが一瞬崩れる。
まるで、彼らの存在そのものがこの世界に不調和をもたらしているかのようだ。
次々と降り注ぐ彼らに対抗するため、私は矢を放ち続ける。
打ち続けると、いつの間にか人間めいた生物は姿を消していた。
再度走り出す、触手がこの身を削ろうとも。
「集え霊たちよ!」
実体のない霊がクナイを持ち、走り出し道を切り分ける。
王の腕には数々の人間、触手が蠢いており、その隙をついて上へと登る。
……
ここが、頭部…
「ダイスキダヨ エリカ ワタシタチ トモダチデショ!」
大丈夫、私はもう怖いものなんてない。
「ありがとう、ここまで私を成長させてくれて
ありがとう、皆に出会わせてくれて
ありがとう、最後に、こんな体験をさせてくれて」
あなた達、偽物の友情になんて負けないんだから!
「ラッキング!」
全てを切り裂く光波、それは王の体を消滅させるのには十分なものであり
煌めく太陽、歓喜の声、雲一つ無い空、私たち、二人の力で成し遂げたのだ。
……
静まり返った部屋。
あの日から数日程経過した。
未だ復興作業が続いており、仕事などする時間はなかった。
無給で皆奴隷のように働いており、その環境に不満を垂れ流す者も少るらしい。
だが少数。
皆がこの「王」を打ち取ったことに喜びを感じている。
今、初めて皆が一致団結しているのだ。
「おめでとうございます
……いえ、ありがとうございます」
ぱちぱちと乾いた拍手。
姫の瞳には涙が溜まっており、その様子に私も感極まってしまう。
「ほうしゅうです、これが、つぎのせかいにいくためのゲートです」
姫が何か唱えると亜空間から霧が漂うゲートが出現する。
本来、モネの世界だったのだろうか、途中で死亡してしまった為
次に帰れるのは私かナズナのどちらかである。
「なぁエリカ」
「なんですか?」
「もし、いつか二人が現世に帰れたらよ
面会に来てくんねぇか?」
「…えぇ、行きますよ」
二人は歩き出す。
どちらが帰れるか、そんなこと、気にしてなどいない。
ただ、ありがとう
………
瞼を開くと校内にいた。
それは、最初に来た場所と瓜二つである。
「そっかぁ、ナズナが先だったかぁ」
きーんこーんかーんこーん
聞き覚えのあるチャイム。
導かれるように体育館へと進む。
一歩一歩思い出を噛みしめる様に歩く。
私自身、終わりが近づいているのを感じる。
あの日の笑い声、垂れる汗、何気ない日常。
一瞬一瞬が、まるで宝物のように心に刻まれている。
人は変わっても、この場所は私の心の中で永遠に生き続ける。
ひらひらと舞うスカート、裾の長いシャツ。
静かな教室、風で靡く白いカーテン。
その思いを胸に、私は一歩を踏み出す。
これからの道のりに、あの頃の記憶をしっかりと携えていこうと思う。
過去が私を形作り、未来を切り開いていくのだから。
そして、大きな扉。
ふぅと深呼吸をする。
扉を開ける。
高い天井からは明るい照明が降り注ぎ
木の床は時間を経て磨かれ、光を反射している。その香ばしい木の香り。
バスケットボールのコートが引かれ
鮮やかなラインが施されている。
周囲には、サッカーゴールやバレーボールのネットが配置され
スポーツを楽しむための多様なスペースが広がっている。
意識が徐々に薄れていく。居心地の良い空間に包まれ
すべての思い出が優しく響いている。
笑顔が浮かび上がり、まるで温かい光に照らされているかのようだ。
その空間は私にとって、居心地が良くて、徐々に瞼は幕と共に暗転する。
それは私にとって終わりを意味するもの。
もどったら、みんなであそぼうね。
「なりません!」
…え?
あぁ、そっか、「大切な者」は捨ててはいけないんだよね
この短期間、半年も経っていない、その出来事一つ一つが懐かしくて
一粒の涙が、たくさんの涙があふれ出す。
忘れてはならないのだ。
友と呼んでくれた者
幼子ながらしっかりとした者
老体だろうか構わず命を張れる者
…後悔を抱いた者
皆を守る力がある者。
私は、それらを継いでいかねばならないのだ。
依然と変わらずの純粋無垢な笑顔。
にこりと広角を上げ、やはり、この者は人間でないことが分かる。
「あなたは、誰なんですか?」
「僕はあなた達と同じ「人間」ですよ」
……
楽しかったリレー走!胸が熱くなった主との闘い!頭を抱えた悩みの解決!
「私たち」卒業します!
「しろいひかりのな~かに~やまなみはこえて~
はるかなそらのはてまでも~きみはとび~たつ~
かぎりなくあおい~そらにこ~ころふる~わせ~
じゆうをかけると~りよ~ふるか~えることもせず~
ゆうきをつばさにこ~めて~きぼうのかぜにのり~
このひろいおおぞらに~ゆめを~たくして~」
「ご卒業、おめでとうございます!」




