第二十三話「走馬灯」
「あれは、なやみのしゅうごうたい「王」です
あのものをころしてほしいのです」
割れる壁、その隙間から顔を覗かせる。
姿かたちは人そのものである、だが、その闇雲な姿には何かとてつもない嫌悪感を抱く。
ふと、ナズナの方に顔を覗かせると、彼は泣いていた。
それは、悲しみでもなく、憎しみでもなく、ただあの者を祝福しているのであった。
「…殺せねぇ!あいつは、殺せねぇ!」
その言動に違和感を覚える。
その姿に憎悪が抱いているのなら、納得はいく。
だがどうだろう、その涙を貯める瞳には一つの輝きがあり
今から殺しをする目ではないことが確か。
「おうをころさなければいっしょうほうびがもらえませんよ?
それは、あなたがたにはきっとひつようなものだとおもいますが」
「そうですよ、ナズナさん、どんなに恐ろしい見た目をしていても
やるときはやらないといけないんです」
ふぅと息を吐き、二丁の拳銃をぶっきらぼうに姫の掌から奪いとりナズナは決心する。
「分かった…エリカの為に一肌脱いでやるよ…」
……
「来たぞ!勇者様が遂に来たぞ!」
集う民衆、その者たちを不安にさせまいと震える足を何度も叩く。
王は建築物を次々と破壊しまわり民たちも逃げ場など何処にもないと理解しているようだ。
「俺は皆を守りつつ、ここから援護する
エリカは一人で行けるか?」
「行けます、私たちがやらないといけないことだから」
「頼んだぞ、エリカ」
「リペイント」「ラッキング!」
なんだか、この体は妙に軽い。
豪快に振るわれる拳を華麗に避ける、腕に乗っかると頭部へと進む。
迫りくる数々の黒い光線。
神々しく光る剣を豪快に打ち消す。
いや、流石王というべきか、クラクラーケンの時のようにはいかず
その光波と光線はぶつかり合うと大爆発を起こし宙へと散った。
その大爆発は私の後ろの方で轟轟とやかましく風を巻き起こす。
それは暴風というべきか、この体でこそ何とか保っているだけで
本来の変哲もない体だと胴体が切断されてもおかしくはない。
ふと、後ろを見てしまった。
皆が無事か。
ナズナは生きているか。
その油断が命取りであり、劈く風の音
次に見た光景は多数の触手が私を突き刺すところだった。
……
何ともない?
瞳を開ける。
数々の触手は、本来いるはずのない場所へと向かっていた。
だが、私も確かに見たのだ、私が触手に突き刺され絶命している姿を。
…もしかして、モネの能力?
能力「幻影を見せる」
何故だか知らないが、本能で理解した。
この剣は、私たちの境遇、願いが具現化しているのだ。
「リペイント」私たちの境遇を具現化したもの。
「ラッキング」願いを具現化したもの。
「助けて、爺様!」
空から巨大な拳が降ってくる。
まるで運命が一瞬で決まってしまうかのような、圧倒的な存在感を放ちながら。
周囲の空気が震え、何かが終わりを告げるような感覚が漂う。
皆は目を丸くし、立ち尽くしていた。
その拳は、まるで大地を揺るがすために存在するかのように
ゆっくりと、しかし確実に近づいてくる。
奇妙な静けさを感じた。すべてが止まったような感覚の中で、ただ拳の落下を見つめている。
空から巨大な拳が振り下ろされ、ごつんと王の頭部を強打すると少しの隙が出来る。
その拳は王ですら有効打になり得る。
能力「最強の身体能力」
ハクレンの力で瞬く間に王の頭部へと到着した。
「これで、終わりだ!」
光の光波が王の頭を貫通する。
………
……
…あれ?
何故ナズナが躊躇いを見せたのか理解した。
それは、いじめを行った友人の顔。
本来出せていた光波はその戸惑いで中断されて
その一瞬の躊躇いは命取りであり、その異形は、全てを黒い闇で飲み込むのであった。
……
これは、走馬灯なのだろうか。
俺が、ここに来る前までの数々の記憶が脳内になだれ込んでいる。
いつだったかな、俺がこんなにも「大切」を見失ったのは。




