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第二十話「ねーだろ」


「……まずは、名前をお聞かせください」


胎児特有の大きな頭。

こんなことを客に思うのもなんだが、その全体的には胎児なものの

その要所要所が似つかわしくない為、なんだか吐き気を催す程。


「名前は、付けてもらえませんでした」


「……そうだったんですね、今まで、お疲れ様でした

……それで、願い事というのは?」


「まずは、僕の生い立ちを聞いてください」


仕草、表情、瞳、全てを変えること無く胎児は喋り続ける。


「ある日、顔立ちの良い女は恋をしました

恋心を抱く原因の者は人当たりの良い男であり、顔も良かったのでしょう

数か月、いや、数週間でしょうか

男女は、そんな短い期間で結婚したのです

本当に、おめでたいことなのです」


それは実にめでたいこと。

今の時代、デキ婚というのは珍しくないものなのだ。

だが、一向に表情は変わらず。


「その過程であり、それが良いことか悪いことか

僕は、暗い穴の中、次に目覚めると、涙を浮かべる二人がいました


そんな幸せも束の間、二人は一人になりました

響く嗚咽、風の良く通る板の隙間

それから、僕に目覚めなどありませんでした

これは、僕が悪いのでしょうか?」


そんなことを言うものの、やはり彼には後悔も復讐もなかった、

ただ、そこには「無」があったのだ。

空虚を見つめ、生きる気力もなく、ただ叶うはずだった夢を見ている。


「…お辛かったんですね、それで、願い事というのは?」


「ここには、僕の親の匂いが強くします

その者を殺してほしいのです」


「え、無理かもしれないです…」


いや、流石に無理でしょ。殺し?なんで私が。

冷や汗がだらだらと垂れ、顔をしかめる彼のせいで何度も瞬きを繰り返してしまう。

数分だろうか、静寂が訪れ、今までで一番のぎこちなさを覚える。


「これが、胎児なんです」


「は?」


人の生まれと似た体が、みるみるうちに変貌。

三つの顔、それぞれが赤ん坊の顔をしている。


「僕は赤ん坊だから、融通が利かないんです

……ごめんなさい」


床に亀裂が生じ、目の前が時空を移動した時のように視界が歪む。

脳が否定している、考えるのを否定している。


ここは十階である。


つまり、私は落っこちたのだ。


けたたましい音が辺りに鳴り響く。


「きゃあああああ!」


そんな叫びも虚しく、数秒後には地へと叩きつけられただの肉となるだろう。

目を瞑り、脳裏によぎる思い出の数々に思いふけようとしていると

体中が唾液特有のどろりとした感触に襲われる。


次に目を開けると、そこには私を舌で巻き付くぴょん吉がいた。


「何があったんですか?!」


………


「し、しりませんよそんなこと!」


現在真後ろで胎児が四つん這いでこちらへ這い寄ってくる。


「これは、人間の呪いの集合体です!

幹部級ですよ…?これは…」


「幹部?」


「こんな場合で話すことではないと思うのですが

ここでは、この世界には多少なりとも人間います

そんな人間の悪感情から生まれる者が極々稀にいます

といっても、大概こんなに巨大にならないはずなのですが…」


ぜぇぜぇと二人息巻く。

人の悪感情、つまりこの胎児は死産かそれに近しい死に方をしたということ。


「ですが、近年「王」によって人間は死滅したはずなのです

つまり、あなたたち三人の誰かが原因なんです!」


……


にこりと笑みを浮かべ手を振る。

自分でいうのもなんだが、顔面にはそこそこ自信がある方だ。

平均よりも大きい身長、揉める程の胸。総合的にも中々の女だろう。


「ナズナさーん!」


「はぁ?!」


こんな子に近づいてもらえるのは幸せといっても過言ではないかと思う。

だが、ナズナの様子はどうにもおかしいのだ。

私と、その背後に何度も視線をくばる。


まぁ、分かりきっていることだが、現在進行形で追いかけられている。

胎児とは言い難いものがどしどしと、木の床を崩しこちらへ向かう。

現在二十二階、ここはナズナの仕事場である。

来たものの、やはりこの階では落ちたらひとたまりもない。

ついでに、ナズナが相手をしていたイギーは反応が遅れた為踏みつぶされた。


「後ろの怪物は、この中の三人誰かの悪感情から生まれたと聞きました!

私は中学生なので、子供とかは作ったりしたことはないのですが

ナズナさんの子ではないでしょうか?!」


「しらねーよ馬鹿垂れ!つーか、なんで俺が虐待してると思ってんだ!」


「いや、その、ほら、外見的に…」


ガタイの良い体格に首筋から見える刺青。

四角形の模様がずらずらとピザの斜塔のように揃えられている。

多分、竜の鱗辺りが妥当だろう。


凛とした顔の美しいモネ、いかつい刺青のあるナズナ。


ぶっちゃけ、どちらが怪しいと言われたらナズナだろう。


「してねぇよ!俺は子供はいるが、性別は女だ

あいつちんこねぇだろ!」


「ちんこないの?!」


「ねぇよだろあの見た目じゃ!」


「お前最近おかしくなってるぞ?!」


「ナズナさんこそ変ですよ!」


まさか、悪感情の原因はモネ?

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