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第十八話「坊と姫」

気付いた時には吊り橋の上に立っていた。

赤い提灯が空に橋を架ける様に舞い、その様子に思わず見惚れてしまう。

「綺麗、ですね」 「……えぇ」


モネも同様、見惚れている。

これは、あの世界を潜り抜けたご褒美なのだろうか

幸子も死んで、キクもいなくなって、ナズナも消えたのに


この景色を見て、あぁ、良かった、って思う私が情けない。


コツコツと吊り橋の響く音が聞こえる。

その音は、不協和音にも等しい程不快であり

こんな感動的な場面に水を差すのは誰だと怒りを覚える。

そんなことは言いつつも、それに音に耳を澄ますと、徐々に吊り橋の向こう側から頭が見える。

次に胴体、最後に足、その姿は、何度も探した、ツーブロック姿の彼。


そう、ナズナだ。


「ナズナさん!」


「あぁ?何だよ、助けにも来なかったくせに」


普段の彼はモネにはデレデレとしているはず。

だが、今の言動はどうだ、まるで彼には似つかわしくない言動。


「な、なんですかいきなり、私たちだって探したんですから」


「探しても何も、会えなかったら意味ねぇじゃねぇか」


「エリカさん、もう、いいですから」


喧嘩に発展するとモネは察知したのか、二人を必死に止める。

私はモネに申し訳なさでいっぱいだが、ナズナは不服な顔を浮かべている。


「そういえば、ナズナさんはなんでここに」


「知らねぇよ、ただ、いつの間にか辺りが歪んで、気付いたらここにいただけだ」

もしかしたら、一人が「ゲート」に入れば皆も入ったことになるのだろうか。

まぁ、ナズナもこんな調子だが、生きていただけでも儲けもの。

少し、距離を置いてそっとしておくべきなのだろうか。

あの戦場を身近で体験したのだ、心を閉ざすのも無理はない。


そんなことを考えていると、緑色の生き物が橋の下の池から姿を現す。


「ぴょんぴょん!僕はカエルのぴょん吉!」


けろけろっと舌を伸ばし、きょろきょろと首をかしげる。

ここの世界の住人だろうか。今回の世界は物騒でなければ良いが…。


「突然だけどさ、一緒に働かないかい?」


ぴょん吉はほいほいと手を招く動作をする。


「貴方たち人間でしょ!僕たち、通称「イギー」は

この先のお城で働いているんだ!きっと珍しい生き物の人間は坊様と姫様も喜ぶよ!」



「モネさん、どうしますか?行きますか?」


モネはくすりと笑い、純粋無垢な笑顔を晒す。


「私は、色々な世界で、たくさんの大切を学びました

なんでか知りませんが、世界が終わりに近づいている気がするのです

なら、私たち三人は行くべきじゃないですか」


「……?そうですね、では行きましょうか」

何のことかは分からないが、その、モネには考えられない

普段は余裕のある笑みをしていたはずなのに

まるで子供のように笑う彼女に、私はなにも言えなかった。


行くと言うなり、ぴょん吉は名前の如く足を使い、ぴょんぴょんと

吊り橋の先にあるお城へと向かう。


………



木製の古風なお城。

人ならざる者が城の大扉から出入りして、思わず人間の私には尻込みしてしまう。

一息つき、心臓に手を当て、瞼を開ける。

歩みを進め、大扉から内部へと入ると、まるで天国への道とも言えるほどの高さ。

螺旋状の階段は頂上が見えない。


「坊様と姫様は三百五十八階にある部屋にいるよ!早速会いに行こう!」


……骨が折れる…。


………


数十分ほど登った。

下を見てみると、すっかり地面は見えなくなっている。


「もうちょっとだよ!」


すっかりと疲弊した皆には希望のある言葉。

見上げると、三百八十四階と書いてある。


残り一階、頑張るぞと活を入れると、モネは口を開く。


「そういえば、ナズナさんは別れた後、どこに連れていかれたのですか?」


「…あぁ?」


この静寂に耐えることができなくなったのだろう。

モネはこの静寂が訪れてから数十分経って初めてまともな会話をする。


はぁと溜息をつくも、ナズナ自身も静寂に嫌気が差していたのか口を開く。


「……あのあと、お前らの想像通り、戦場へと連れていかれた

本当に、最悪だったよ、やっぱり人の死は慣れねぇもんだ」


ぶっきらぼうに答えるも、その声の芯は震え、何かに怯えているよう。

その様子が酷く切なく、何か言いたいとは思うのだが、なんだか声を掛けれない。


「皆様、ここで少しお待ちください!」


上を見上げると、いつの間にか着いていたようだ。

装飾の施された大扉は貴族の屋敷を彷彿とさせる。

ぴょん吉は大扉をそっと開き中へと入る。


またも静寂が訪れる。


ナズナの顔、声はまるで全てに絶望しているよう。

それは、幸子や、以前の私に似ているといっても過言ではない。

髪に似合う強気な性格、頼りになる背中。


そんなもの、今では見る影もない。


「はいれ!」


野太くも甲高い声が辺りをこだまする。

皆はその言葉に合わせ大扉を開ける。


目の前には現れたのは、丸っこい姿をした男女二人。

二人は声を上げる。


「「よくぞここまできた!」」


「「ぼくたち!わたしたちはこのおしろのえらいひと!

みをこにするものにはほうびを!はたらかざるものにはばつを!」」


「このおしろでは、ながれることばのようにはたらいてもらう!


おまえらはいかのことをまもれ!


いち!「イギー」のはなしをきくこと!


に!なやみをかいけつすること!


さん!よりそうこと!」

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