第十三話「悪魔と人間」
日夜大樹へと赴くため歩き続ける。有限のため飯も満足に食えない。
あの後、ナズナを何度も探した。色々な人にも尋ねたし軍事基地のような所にも赴いた。
だが、一日に何千人も死ぬこの世界じゃ、たかが一人死んだところでというのが常識。
「大樹」が次の世界の入り口ということは伝えた、もう、そこで合流できることを祈るしかない。
「幸子ちゃん、今日の分のごはんだよ」
「ありがとう、キクおねぇちゃん」
この子の名は宇都宮幸子。
親が死んで身内もいないため、仕方なくこの旅路に着いていくことになったが
正直過酷なもの。先程も言ったが食料は有限。誰かの分の食事を切り詰めないと厳しい。
「ひとまず、今日はここら辺で寝ましょうか」
モネの指さす先には日蔭が丁度良い場所。
キクの無茶な頼みで、粗末だがテントをおっちゃんから譲ってもらった。
現在真夜中。寒さで手が凍りつきそうな為、早急に建ててしまおう。
「エリカさん」
不安そうに、テントの中で縮こまるモネ。
いつもの凛とした顔立ちはまるでなく、不安に満ちた顔。
「私たちは、いつまでこんな旅を続けるのでしょうか」
「いつか、終わりが来ますよ、それまで、耐える他ないです」
「そう、ですね」
なんとも不服そうな顔。
私だって、本当はお風呂だって浴びたいし着替えも欲しいところ。
ここ数日、風呂敷に汚い川の水を染みこませ、交代で回して使っている日々。
いや、ハクレンの時に覚悟は決めたんだけどさ、普通に嫌でしょ。
最低限人としての尊厳は保っておきたい。
「……お互い頑張りましょうね」
この話に価値がないと感じたのか、モネは胎児のように縮こまりながら眠りにつく。
……私も寝よう。
……
今日も今日とて山を登り険しい道のりを歩んでいると、突如鳴り響く警報が鳴る。
びーーーびーー
鳥たちが皆同じ方向に羽ばたき、戦に無知な私でも分かった。
これは空襲警報だ。
空からけたたましい音が鳴り響き、悪魔の大群が何か、黒い物を運んでいる。
「あれは、何を運んでいるのでしょうか」
物珍しさからか、はたまた自分には危害が及ばないと判断してか
モネはあっけらかんとした顔で悪魔を見ている。
その瞬間、キクは叫ぶ。
「伏せろ!」
辺りは静寂に包まれる。
光が目の前を覆い、まるで世界が終わるんじゃないかというほどの熱風が全身を襲う。
必死に堪え、次に目を開けると、キノコ雲ができていた。
膨大な熱エネルギーが宙に放出され、火薬の臭いが鼻を刺激する。
「こんなの、こんなのあんまりじゃない」
嘆くキク。本来貴族のような上流階級の者は民衆を導く役目。
そんな中、キク自身は嘆くことしか出来ない。
自身の不甲斐なさ、情けなさに嘆いているのだ。
……再度辺りを見回すと、煙を上げる街のようなものがあった。
もう、食料が底をつきかけている。
こんな中で思うのもなんだが、またキクの力で食料を得ないと本当にまずい状況。
「近くに街が見えます、ひとまずそこへ行ってみませんか?」
「確かに、もしかしたら、次こそ無料の炊き出しがあるかもですしね」
……
「あの……みなさん…どうかしたんですか?」
モネも賛成していたため、山を下り街へと赴こうかと思ったが無反応。
誰も物言わず静寂が流れる。
「もう、もうやだよぉ、みんななかよくしようよぉ」
静寂の原因は直ぐに分かった。
幸子は強がっていたのだ、背丈にして年齢は五歳程度。
そんな彼女が、家族を失い、居場所も失い、なお、この世の不満を我慢し続けたのだ。
「もう、大丈夫ですからね」
モネは幸子をぎゅっと抱きしめると、幸子はにこりと笑う。
「ありがとう、もう大丈夫だから」
………
街は火の海だった。
鳴り響く銃声、こだまする悲鳴。
「この死体…多少ですがお金を持っていますよ」
「そ、そんな、民の屍を漁るなど…」
「ですが、お金がないと生きていけませんよ」
微かに、そんな二人の会話が聞こえる。
そんな会話に耳を傾けながら幸子と共に辺りを探索していると
微かに震える声の怒号が周囲を蠢かす。
「お前ら!武器を置いて投降しろ!」
「悪魔に捕まるくらいなら、ここで死んでやる!」
壁の向こう、そこには、悪魔を前に自害する人々。
悪魔は溜息をつきながらも、死体から物資をはぎ取っている。
見つかってしまったら最悪殺される。
そんな妄想が頭をよぎり、壁伝いに場から離れようとすると幸子は突如姿を現す。
「もうさ、みんないやだよね、ねぇ、こんなのやめようよ」




