第3話 忌み嫌われる人類
[レイド人]
西南大陸サライセンダー発祥の亜人
獣人と同じ祖先から派生した種族である
体内に発電器官、帯電器官を持ち髪は電熱線のようにすることや放電をすることができる
「仲間...? というか君も獣人なんだね、仕事があるの?」
リドルが少女に問いかけると少女は手のひらを自らの手に置くと自己紹介を始める。
「まずは自己紹介だ! 私の名はフィリア! 見ての通り君の仲間だよ!」
「そうか...俺の名はリドル、よろしくするかはまだわからないけど」
少女は廃墟に響き渡る声で叫ぶ。
「おーい! みんなー!!」
フィリアの声に次々と亜人が現れる、二十人いるかどうかという数ではあるが皆正気がない。
「それで...ここは一体なんなんだ?」
「ここは私たち楽園だよ!」
フィリアはレイド人の少女と肩を組むと少女を指差す。
「この子はルイーゼ! 私のお友達!」
「...ごめん全く理解できないんだけど...」
リドルの言葉にフィリアは答える。
「ここはね、もともと奴隷だった人が楽しく暮らせる場所なの!」
フィリアはニコニコとしながら答えるが周りの空気はどんより重い、リドルは疑問を口にしようとするとルイーゼが口を開く。
「確かにフィリアの言葉はわかりにくい、だけど確かにここは今までと比べたらずっと楽園だよ」
ルイーゼの言葉にリドルは聞く。
「どういうこと...? 明らかに何か...」
「君も逃げてきたんでしょ? 見たらわかるよ、わざわざ耳を隠してるし、その首の痕、首輪だよね」
「ああ、うんそうだよ」
「人はいろんなことを命令してくるけど、私たちを人としては見ずに奴隷としてしか見てくれない、殺されても文句も言えない立場だったんでしょ? それと比べたらずっとマシだよ」
ルイーゼの生気のない顔でリドルはこの場所について察する。
「なるほど、分かったよ...楽園だなんて随分と皮肉だけどね」
リドルは笑いながら言うとルイーゼは顔を顰める。
「分かってるよ! 分かってるけど...もうここしか...」
「ごめんごめん! まあ初めてきたんだしさ!」
フィリアはニコニコとしながら仲裁を行うとリドルに話しかける。
「とりあえずまあゆっくりしていってよ! ここには人は来ないからさ!」
リドルは疑問を抱きつつも廃工場の中を歩き回ることにした。
居住スペースはあるが全体で見れば汚く埃っぽい、さらには朝にもかかわらず光は刺さず夜にも見えるほどである。
そんな廃墟を歩いていると猫型の獣人の青年に出会う。
「君は、そこで何してんの?」
青年はリドルを見ると焦りながら立ち上がると鉄パイプを向ける。
「なんでここに人が!?」
リドルは焦りながら布を取ると弁明し切り落とした耳を見せる。
「俺も獣人だよ、耳を切ったの」
「...耳を切ったのか?」
「ああ、実は殺人の濡れ衣を着せられてね」
リドルの暗い表情に青年は申し訳なさそうな顔をする。
「そうか...大変だったんだな...」
「君はどうしてここに?」
リドルは青年に事情を聞こうとするが少年は答えない。
「そっか...じゃあ名前は?」
「キール、キールだよ」
「そうか、よろしくなキール」
リドルはキールに握手をする
皆、暗い表情をしている、食事すらまともに取れているのかわからない、そのことをキールに聞くとキールは答える。
「ああ、ずっとここにいるからな、少しずつ盗んだりして食い繋いでいるんだ、もちろん辛いと言えばそうだけど...ここでは人として扱ってくれるんだ...」
キールの言葉にリドルは立ち上がる。
「そんなの本当に自由なの?」
「もちろんお前の言いたいことはわかる、だけど俺たちは亜人だ、それだけは変わらない、これが現実なんだよ」
キールの言葉は重みがあり、説得力があった、歩くだけで暴力を受け、仕事も手に入れることはできない、買い物すら売買証が必要であり、それは人としての立場はない、だがリドルはその現実に耐えられるほど強くはなかった。
[主従媒体]
主と従の二つの特殊な魔石を耳元に埋め込むことで奴隷として従わせることができる、主は従に任意で激痛を与えることができ、死亡させることも可能、そして主が死亡した場合、媒体が破壊された場合、従は絶命する。