授業終了まで、あと5分。
パァッン! というか、ドォン! というか花火が打ちあがった時のような、乾いた音が教室に響き渡る。音の発生源は前の扉で、教室内のすべての視線が集中する。ドカドカと入ってきたのはドラマで見るような、武装をした三人の男だった。
誰よりも状況を早く理解した数学教師のタベちゃん(27歳 男性 独身)は「君たちは、誰なんです?! 部外者はた、立ち入り禁止ですよ!」と声を荒げる。先頭に立っている男は「うるせぇえぇぇぇぇぇえ!!!!」と天井に向けて発砲した。それを合図に教室はパニックとなる。女子生徒の甲高い悲鳴が耳を劈き、椅子と机はガタガタと音を立てる。
発砲した男の後ろにいた二人の男の一人は肩を掴み「落ち着け、バカ!!」と止め、もう一人は俺たち生徒に向けて「一人でも教室から出てみろぉ!! 出たやつから殺す!!!」と恫喝する。わー……素晴らしいチームワークだなぁ。
再び静かになった教室で男三人組はなにか、コソコソと話し合っている。俺は一番後ろの席のため何を話しているか聞こえない。
遠くの方からパトカーのサイレンの音が響いてきて、三人の額には汗が滲み、クラスメイトは少しだけ落ち着きを取り戻した。
警察は拡声器を使い犯人の説得に試みるが、説得して止めるんだったら最初からやるわけないので説得は難航中だ。
静まり返る教室で、隣の席の呼吸の音が聞こえる。
俺以外の生徒は顔を俯かせ、わずかに震えている。そんな姿に小さく息を吐き出し、発砲した男に自身の右手を銃と見立て人差し指を向ける。三人で話し合っていて、こちらを見ていないことをいいことに照準を合わせる。
「———————パン」
呟いた言葉と同時に、発砲した男は黒板へと叩きつけられた。ドンッ! という鈍く大きな音にクラスメイトは顔を上げ、残り二人の男は「誰だ!!」と銃口をこちらに向ける。俺は間髪入れずに、二人の男に照準を合わせて「パン、パン」と打った。先ほどの男と同じように二人も黒板に叩きつけられて、三人の男は気を失った。
全員が全員「今が逃げるチャンス」と思ったのか、声を上げて教室を飛び出していく。俺は流れにのって一緒に避難をした。
——なんつって……。
チラリと時計を見た俺は盛大に溜息を吐き出して、タベちゃんの授業に耳を傾けた。