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34.照の記憶!?①

僕が初めてこの島にやってきたのは、優太君がこの島にやってきてから1年が経った頃だった。


父の仕事柄、転勤が多い為、僕も父について行くというのが日常となっていた。


どうせ、今回の学校でも途中から入ってきた転校生を相手にするような人はいないだろう。


あまり人付き合いが得意ではなかった僕は、いつしかそんなことを考えるようになっていた。


勿論、僕も初めからそんな事を考えていたわけではない。


転校を繰り返していくうちに、どうせすぐに別れてしまう相手なのだから深く関わらない方が良い。


幼いながらそんな事を思うようになったのだ。


それから僕は、人付き合いを避けるようになっていった。


だから、どうせこの島でも誰も友達などできないだろうと思っていた。


けど、


「テル〜! 早く行こうぜ!」


「テル遅いよ〜!」


「テルもっとがんばって!」


そんな事を考えていた僕にも親友と呼べる友達ができた。


友達というものがどれだけ大きい存在なのか、自分を支えてくれる存在なのか僕はその時初めて知った。


いや、知ってしまったんだ。


このまま、ずっとこの時間が続けば良いのに……


僕は心の底からそう思っていた。


けど、別れは突然だった。


――照、お父さんがこっちに戻ってこいって


父の仕事の都合で、おばあちゃんの家に預けられていた僕はあっという間にこの島から出ていくことになった。


考えてみれば、それはいつもの事。


でも、この島との別れは僕にとって想像以上に辛いものだった。


僕は島を去る事になる前日の夜、1人であの神社に行った。


理由なんかない。


ただ、1人になりたかった。


「せっかく仲良くなれたのに……」


真っ暗な境内の中、僕の声だけが無情に響いた。


実は、優太君や凛津ちゃん、有里香さんにも、まだ僕が島を出ていく事を伝えていない。


「明日はみんなで一緒に川に行って魚を取りに行こう!」


今日の別れ際、優太君が僕に言ったその言葉が僕の胸の奥にズシリとのしかかる。


「明日、僕が行かなかったら優太君、怒るだろうな……」


ポツリポツリと目から雫が落ちてくる。


「ぐすっ、行きたく……ない」


この島で過ごした時間は半年程度かもしれない……けれど、その時間を上回る程、ここで過ごした思い出が多過ぎた。


「こんな悲しい気持ちになるなら、初めから出会わなければ……良かったのかな」


気付けば僕は鳥居の前に立っていた。


この半年、本当に色々なことがあった。


初めてだらけだったけど全部楽しくて……だからこそ、余計に胸を締め付ける。


どうしようもなく苦しいこの気持ちから、僕はどうすれば解放されるのか……。


そう考えた末、


「お願いします……。僕と……みんなの中から……ここでの僕の記憶を消してください」


僕は手を合わせてそう願っていた。


とても皮肉な願いだった。


「帰ろう」


こんな事をしていても、僕は何も変わらない。


明日の朝、みんなにこの島から出ていくことを話そう。


僕はそう思いながら真っ暗な夜道の中、おばあちゃんの家へと歩き出した。



「……あれ。 ここは」


目を開けると、少し高い天井が見えた。


「あぁ、そっか……。そういえば、僕はおばあちゃんの家に来て……」


そこまで言いかけると


「……あれ。なんか今からやらないといけない事があるような……」


なぜか、突然モヤモヤとした何か分からない衝動に胸を突き動かされた。


何か忘れているような……。


「照〜! お父さん迎えに来たわよ〜!」


「分かった」


けど、結局僕は何も思い出せないまま、その島を出て行った。



それから数年が経ったある日。


「照、久しぶりにおばあちゃんの所行ってみるか?」


仕事帰りのお父さんはそう切り出した。


「ん? おばあちゃんの家……あぁ、昔一回だけ行ったあの島?」


「そうだ。 最近、あの婆さん腰を痛めたみたいでな……爺さんがいない今、一人で農作業をするのも少し大変だろうと思ってな……」


要するに、父は僕におばあちゃんの家まで行き、農作業の手伝いをしてこいと言いたいのだろう。


「分かった」


僕はすぐにそう返した。


「あぁ。 じゃあ、頼むぞ」


父はそう言って自分の部屋の方へと足を向けた……が、途中で振り返り


「そういえば……あの島で何か忘れてる事がある気がするとかなんとか、言ってなかったか?」


そう言った。


「え? そんな事言ってたっけ?」


僕がそう返すと


「……そうか。多分俺の聴き間違えだ。忘れてくれ」


そう言いながら再び父は歩き始めた。


冗談をあまり言わない父にしては少し珍しい……まぁ、父さんも人間だし冗談くらい言うか。


そんな事を思いながらも、僕はこの島に再びやってきた。

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