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28.彼氏ができた!?

「何だったんだ……あれは。……夢?」


俺は1人、寝室でそう呟いた。


―私、優太が……好き


頬に手を当てれば、まだその時の感触が残っている気がした。


「でも……俺は」


改めて口にだすとよりあの時のことが鮮明になってくる。


そう、あの時有里ねぇは俺にキスをしてきて……





「優太……ごめん」


そう言いながら有里香はそっと俺のそばから離れた。


顔を見れば有里香の顔は暗闇の中でも、はっきりと分かるほど朱色に染まっていた。


「えっ……と有里ねぇ……」


次に何を言えばいいのか、全く分からない。


「とりあえず、みんなのところへ帰ろう」


そう言えばいつも通りに戻れるのかもしれない。


最後の花火が打ち上がり終わった今、辺りは真っ暗になっていて、周りが良く見えない。


「あの……さ、有里ねぇ」


だからだったのだろうか……


そこには俺達以外、当然誰も居ないものだと思い込んでいた。


俺が次の言葉を言いかけた時


ガサッ


という音と共に、誰かが走り去っていくのが見えた。


「え……」


一瞬しか見えなかった……けれど、その後ろ姿は俺の見覚えのある姿で……


「おいっ! 凛津!」


気づけば俺は叫んでいた。


しかし、それでも凛津は止まる気配はない。


「ごめん……有里ねぇ! この話はまた後で!」


俺は言葉の続きを待っていた有里香を置いて、走りだした。


辺りは真っ暗な中、走っている自分の吐息だけが聞こえる。


「はぁっ!はぁっ!」


走り続けているうちに段々と目が暗闇に慣れてきた。


俺は夢中になって走り続け……


坂道を駆け降りる時になってようやく、凛津の姿が目前に見えてきた。


あと、もう少しだ。


俺はラストスパートをかけるように最後の力を振り絞って走った。


そして、山を抜け、住宅街に面した道路のそばまで来てようやく


「凛津っ!」


俺はそう叫ぶと同時に、凛津の肩をがっしりと掴んだ。


「はぁっ、はぁっ」


俺は息絶え絶えになりながらも、この手を離すまいと凛津を引き止める。


「……何の用?」


肩を掴まれた凛津がこちらをちらりと一瞥して、そう言った。


「凛海……はぁっ、はぁっ、ごめん。本当にごめん」


「ごめん? 何が?」


依然として凛津の冷たい態度は崩れない。


「その……有里ねぇと……」


「……別にいーよ」


「でもさ……」


俺が言いかけると同時に


「もう……いいよ」


凛津の突き放した声が夜の住宅街に響いた。


「もう……いいって」


俺は有里香からキスをされて、告白めいたものまでされた。


その時、正直俺はは飛び上がる程嬉しくて……でも


俺は凛津に向き直る。


言うんだ。


「俺は……」


しかし、喉から出かかったその言葉が、俺の口から出ることは無かった。


「私……彼氏できたから」


凛津の無機質な声が辺りに響いた。


「彼氏……?」


「そう……。だからそういう事」


そう言って凛津は自分の肩から俺の手を引き剥がそうとする。


「まっ、待て! でも……そっ、そうだ! 体……入れ替わってるんだろ!」


俺の突然の指摘に凛津は大きく目を見開く。


多分この様子だとそれについては全く予想していない質問だったんだろう……。


そうだよ。どうせ、彼氏なんて嘘で……


「知ってるよ……」


「はっ?」


「知ってるの……私と凛津ねぇが入れ替わってること」


「えっ……それじゃあ」


俺のことが好きだったっての一体……


「だから……ごめん。ばいばい優太」


「ちょ……ちょっと! 待てよ凛津」


「もう帰るね……ばいばい」


真っ暗な道の中で凛津のその声だけが響き渡る。


「ははっ、嘘……だよな?」


俺は後ろ姿の凛津に向けてそう言う。


けれど返ってきたのは閑静な住宅街の中で鳴り響くセミの鳴き声だけだった。



「はぁ……なんであんな事に」


俺はもう一度、溜息をつく。


「とにかく明日、有里ねぇと話してから……凛津にも……」


―私……彼氏できたから


「……本当……なのかな」


考えても仕方ない……。


「もう寝よう」


俺は寝室の電気を消して、ベッドの上に横たわり目を瞑った。


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