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婚約破棄されただってえ? 極悪金貸しと言われたスノーばあ様、愛しい孫娘が王太子から一方的に婚約破棄されたことに激怒し、ざまぁする。王太子の坊や、かわいい孫娘を傷つけたあんたの罪は重いよ!

作者: しの
掲載日:2021/05/02

 あたしはスノーホワイト、名前はかわいらしいが、その実は極悪金貸し婆としてこの国で知られた女さ。

 そんなあたしのかわいい孫娘、男爵家の一人娘のユーリアが泣きながらあたしの部屋に入ってきたのはこの前のことだった。


「おばあさま、ひどいのですわ、クラウス様が私との婚約を解消する。破棄すると宣言されたのです!」


 あたしは飲んでいた茶を吹いたね。いやあたしの孫娘が婚約したのはほんの二か月前さ、なのにもう解消だって?

 あたしが飲んでいた茶を吹き出してむせていると、大丈夫ですか? と優しい孫娘は聞いてくれたさ。


「いや、ごほ、気管にはいっただけさ、それほどの年じゃないよまだあたしは、で、あのバカ王太子がどうしたってユーリア?」


「私と婚約を破棄するといわれたのです!」


「なんだって、まだ二か月じゃないかい、どうして、なにがあったのさ!」


「私、私があのご……あの」


 大声で泣きながらユーリアがあたしの胸に飛び込んできた。

 いや、なんであたしの自慢の孫が婚約破棄なんてされなきゃだめなのさ! 悪役令嬢だってえ? 極悪金貸しの孫娘だからってさ。


「……ああ、そうかい、極悪金貸しの孫娘なんぞと婚約したのは気の迷いってわけだって……いうわけかい」


「ごくあ、違います。おばあ様は立派な商売人ですわ!」


「まあどっちでもいいさ、しかし、それは初めからわかっていたわけだろあんた、あんたがあたしの孫だっていうのはさ」


「でも……隣国の王女との縁談がでてきたから、私と……」


「手っ取り早くいえばあんたが邪魔になったわけだね?」


「……はい」


「いい根性してるね、あの坊や!」


 あたしは立ち上がり、あたしのかわいい孫娘を泣かせた罪は重いよと大声で吠えたさ。

 金貸しの孫だっていってもあたしの孫はれっきとした男爵の家の娘さ! そりゃ位は低いけど、あたしはこの子のためにたんと持参金だってつけたんだよ。王家が要求したからね!

 なのにこの後に及んで勝手に破棄だって、許せるわけがないさ!

 あたしは誓った。ユーリアの柔らかい髪をなでながら、絶対にあのくそ生意気な坊やに一泡吹かせてやるってね!

 

 あたしはねえ金持ちの商家に六十年前に生まれたたった一人の跡取りだったのさ。

 だがねえ、女に跡は継がせられないってんで、婿を取ることになったんだが。

 あたしのご面相がまあ、愛嬌があるほうじゃなかったってのと、タヌキ親父といわれたうちの父の評判が悪すぎてね。

 あたしの婿はね、なかなか見つからず、あたしは二十五の嫁にいきおくれになっていたってわけさ。

 結婚適齢期が十六から二十歳までのうちの国からしたら大年増さ。


 まあ親父も焦ってね、しかたないってんで妥協して、あたしより三つ年下の武器屋の子せがれを婿にしたわけさ。

 悪い奴じゃなかったよ。気が弱くてなんだろうねえ、女好きだったということ以外はさ。

 あたしと結婚してからも旦那は女遊びをしていたね、まあご面相は悪いほうではなかったから女にはもてたさ。

 あたしは、あたしと結婚してくれただけでもありがたいってんで大目に見たよ。

 うちの親父もまだ五十前で若かったし、まだ大丈夫だろうとね。

 跡取りとしてはゆっくりと教育をしていけばいいなんて気楽に思ってたさ。


 するとさあ、運命ってやだよね。おやじは二年後に病死、そしてあたしと旦那は嫌でも跡取りとしての仕事にしなくてはいけなくなった。

 だけどね、娘を生んだばかりの二十七の小娘と、その旦那は二十四、商家の仕事なんぞついぞしたことがなく遊びまわっていた。

 あたしは……生まれたばかりの娘のために頑張ったさ。

 だけど旦那はあたしが働けば働くほど、甘えて仕事をさぼり遊び歩いた。


 そして……二年後、娼館で、女たちの色恋沙汰ってやつに巻き込まれまあ殺されたのさ。


 あたしはがむしゃらに働いた、だまされて金を損したこともあり、あたしは考えた、金貸しをすればどうかなと、まだね、商売をろくにしたことがないあたしでもなんとかなるんじゃないかってね。

 うちの狸おやじは金貸しの免許はとっていたが、ろくにしてなかったのさ。

 それからあたしは金貸しとして、仕事をはじめた。

 まあ、あたしはその才能とやらはあったんだろうね、みるみるうちに国一番の金貸しになったのさ。


 あたしのかわいい一人娘のリリアは適齢期の十六になっていた。

 あたしと違ってかわいらしい顔をした気立ての優しい娘だったよ。

 あたしはね、この商売は娘には継がせられないと思ったんだ。優しすぎたからね。

 だからいい男に嫁にやって、商売はだれか適当なやつを跡取りにしようと思ってたのさ。


 ……でも運命ってのは皮肉だね。うちの娘はなんと男爵様に見初められ、その嫁になった。

 まあ気が弱いがいい奴だったよ。うちの旦那みたいに女好きじゃなく、娘にべた惚れでだからあたしは結婚を許したのさ。

 

 ああ、そしてね、娘は娘を生んだ。あたしのかわいい孫娘ユーリアさ。だけどね、産後のひだちが悪すぎて死んじまった。

 まだたった十七だったよ。

 あたしはね、泣いたよ、泣いて泣いて、でもこうしちゃいられないと頼りない婿殿を叱咤激励して孫娘を育てたよ。

 婿殿はだれも身内がいない天涯孤独だったのさ、だからこそあたしの娘みたいな庶民と結婚できたってわけさ。

 あたしは孫娘を淑女にふさわしい教育をすべて受けさせた。貧乏男爵である婿は頼りなかったからね。

 そしてかわいい孫娘が十六、あたしは六十になったときに、時の王太子のあのろくでもない男にユーリアは見初められ、婚約をしたってわけさ。

 あたしはね、王家にいわれて持参金をつけたさ、それ目当てもあったんだろうね、王家も金には苦労してるようだからさ。税金も最近たいそう上がったよ。


 あ、なのに二か月で極悪金貸しの孫娘なんぞと婚約は間違いだった破棄するって、あのくそ坊や、何を考えてるんだい!


 あたしはまず持参金の返金をもとめた、当然さね、しかし王家は庶民の言うことなんぞ聞けるかってはけつけた。これはまあ想定通りさ。

 あたしはそのあと、商工ギルドに足を向けた。

 そしてことの顛末をギルド長に報告したのさ。

 ギルド長は真っ青になってたねえ、あたしにたてつく勇気がすごいと驚いていた。

 

  極悪金貸しと名高いこの婆を甘く見てるのさあいつら、あたしはギルド長に、貴族たちに貸し付けている金を利子をつけて一括で返すよう要求するといったのさ。

 青くなってそれはやめてくれと坊やは言った、あ? 鼻たれのころから知っているまだ五十にもなっていないあんたが意見するのかい!

 わかりましたと最後は折れたね。

 交渉は商工ギルドの長を通してでないとできないってのは厄介さね。

 あたしは証文を盾に、一括返済を求めた。

 だってそうさね、もう何年も待ってやってたのさ、婿殿の顔を立ててね。でもそんなことは言ってられるわけないさ。

 

持参金だって返してくれない王家に仕えたお貴族様に信用貸しなんぞできるわけないだろ!

 手のひら返しで金なんて返せないっていうにきまっているのさ、持参金踏み倒しがひろまりゃね!

 あたしの要求は正しいものさ、一括で返せるようあたしは要求できると証文には書いてあったのさ。

 お貴族様は読もうとはしなかったようだけどね。

 

 裁判でもあたしは勝てる。

 そういうと泣きながら待ってくれとお貴族様が言うもんだ。あたしは持参金踏み倒しなんぞする王家に仕える貴族なんぞ信用できないとはねのけた。

 それからは貴族たちは王家に泣きついたさ。

 ああ、あのくそ坊ちゃん、証文なんぞ無効だって怒鳴り込んできたね。

 でもねえ、あたしは商工ギルドを盾に持ってるのさ、商人たちを敵に回すってことなんだよ! あたしがそう叫ぶと、すごすごと泣いて帰ったね。


 ああ、あたしはそれからもね、貴族たちに金をとりたてた、婿殿には悪いが、でも婿殿も今回のことには怒っていた、男爵の位をかえしてもいいくらいだっていってたよ。亡きあたしの娘の忘れ形見ユーリアをあいつも目に入れてもいたくないくらいかわいがっているからね。

 

 それからあたしは戦った。そしてとうとう王家から謝罪と、持参金の返金の約束をとりつけたのさ。


 あとはね。


「男爵令嬢、ユーリア・グランヴィル嬢、私の勝手な都合により婚約を一方的に破棄して申し訳ない」


 あのバカ坊ちゃんに頭をうちの孫娘に下げさせることにしたのさ、孫娘は優しいからね。もういいですわと笑って許してやったのさ。

 頭を下げる金髪碧眼の見かけだけはいいあの男に、もういいですからと優しいユーリアは頭をあげるように言ったのさ。

 優しすぎるよあの子は、もう攻撃はやめてくれ、十分だって泣いて頼むしさあ。

 あたしは孫娘の顔をたてて、バカ王太子を許してやった。貴族たちの一括返済の要求もとりさげたさ。


 ああ、王家の威信はめちゃくちゃさ。隣国の王家の姫との縁談も立ち消えだってさ、知るもんかい!


 それからどうなったかというと。


「おばあ様、私、婚約することになりましたの」


「ああ、あの堅物宰相の坊やかい、あの子ならまだいいんじゃないかい」


 それから一年後、なんと、この国の宰相の坊やとうちの孫娘が婚約することになったね。

 いや、貴族から泣きつかれ、宰相がよくあたしのところになんとかしてやってくれと泣きついて通ってくるうちに、うちの孫娘と恋仲になっていたらしいんだ。

 あたしとしたことが気が付かなかった。最近やっとわかったんだよ。

 まあ坊やは三十とちと年上ではあるが、堅物で独り身であったし、あたしはまあいいかと婚約を許した。坊やはまあ律儀にうちに挨拶もきてくたしね。


 そしてうちの孫娘は宰相と結婚し、ひい孫も生まれた。

 あたしはひい孫が嫁にいくまではまだまだ長生きするよ! ああ、あのバカ王太子はいまだに結婚できないらしいね。自業自得さ!

 うちの孫娘を泣かせるような真似をするからさ!

 死ぬまで結婚相手なんぞみつからないんじゃないのかい?

 あたしは今日もひい孫を抱っこしてあやしながら、王城を見る。あのバカ王太子殿、いまもおこられっぱなしらしい、いい気味だよ。

お読みいただきありかとうございます。評価、ブクマなどよろしければよろしくお願いいたします。

作者の励みになり嬉しいです。よろしくお願いいたします



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― 新着の感想 ―
[一言] た、たくましいおばあさま…! 凄い面白いし、なんか元気になった! …全編ドーラ様のお声で再生されてましたよ、ええ。
[一言] このババア、ひ孫に子供生まれたら、その子が結婚するまでは死なないとかいっていつまでも生きてそうw
[良い点] いいおばあちゃんだわ。 なんかドー◯とか、湯◯婆を彷彿とさせますね。 絶対怒らせちゃいけない人や。 孫は可憐で可愛い感じだけど、歳とったら・・・かもしれませんね。
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