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ぬりかべ令嬢、介護要員として嫁いだ先で幸せになる。  作者: デコスケ
第一章 ナゼール王国

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48 蠢く闇

 王都にある貴族街の一画の外れに、やたらと大きな屋敷があった。


 一見して普通の貴族の屋敷に見えるその建物だが、他の貴族の屋敷と一線を引くように建てられている為か、異質な雰囲気が漂っている。

 外れとは言え華やかな貴族街なのに、この屋敷の周辺には人の気配がまるで無い。


 それもその筈、この屋敷の主は悪名高いアードラー伯爵だからだ。


 夜もふけ人々が眠る時間だというのに、普段は昼でも人が避けて通るようなアードラー伯爵の屋敷に、一台の馬車が止まっている。

 その馬車は真っ黒で、家紋などの装飾も何も付いておらず、まるで死者を運ぶ霊柩馬車の様だった。


 その馬車から真っ黒い影が降り立ったかと思うと、その影は音もなく屋敷の中へ入って行った。


 屋敷に入ると、中は闇が広がっていた。

 窓には重厚なカーテンが引かれ、まるで屋敷の中を隠蔽している様だった。今はそのカーテンの隙間から漏れる月明かりだけが室内を照らしている。

 しかし、そのほのかな明かりが却って屋敷の不気味さを際立たせていた。


 月明かりの中、先程馬車から降りた影は真っ黒なローブを纏った人間だと言うのがわかる。

 しかし、その顔にはのっぺりとした仮面を付けており、男女の性別どころか、本当に人間なのかもわからない。


 闇が人の形を象った様なソレは、屋敷の中を知り尽くしているかのように、迷いなく奥へ進み、そして或る一室の前に辿り着くと、ノックも無しに中へ入る。


 灯の光が妖しげに室内を照らしているがやはり薄暗い為、部屋全体の様子はわからない。

 暗さが眼に馴れてくると、雑然と人らしきものがガラクタのように四囲に転がっているのがわかる。そして布や帯が何かの破片の様に床に散乱していた。


 その破片の様なものを辿っていくと、人が十人は寝られるような巨大な天蓋付きベッドの上で蠢く肉塊があった。

 その肉塊──残り少ない白髪混じりの髪の毛を無理矢理撫でつけた髪型に、身体中の脂肪が弛みきった中年の男──は闇色のローブ姿のモノに気が付くと、慌てる様子もなくソレに声を掛けた。


「お前に仕事だ。王都のランベルト商会にいる『マリカ』と言う女をココに連れて来い」


 その言葉に闇の者から返事はないが、中年の男──アードラー伯爵は気にする事無く独り言つ。


「……ったく、こっちは小娘の捜索、で、手一杯だと言うのに無茶を言いおって……しかし新型、の魔導人形を寄越す、と言われれば……まあ、仕方有るまい、な」


 アードラー伯爵は動きを止めること無く言葉を続ける。


「ジュディも馬鹿な女だ……小娘に、逃げられるなど……あの小娘、の身体を自由に出来ると思って期待しておったのに……」


 ブツブツと文句を言っていた伯爵は動きを止めると、今まで下に組み敷いていた女の様子を見て忌々しそうな顔をした。


「……っチ、コイツも壊れたか……もう声すら挙げなくなったわ。おい! 新しい女を連れて来い」


 伯爵が声を掛けると、今まで何処にいたのか部屋の隅から執事らしき男が出てきて、伯爵に一礼してから部屋を出て行った。


「……そう言えば、ウォード侯爵家の使用人達は粒ぞろいだったな……ユーフェミアが来る迄の繋ぎとして何人か寄越させるか……あの眼鏡の女、いい身体をしておったしな。あの一見固そうな女が乱れるところを見るのも良い暇つぶしになりそうだ」


 伯爵は新しいおもちゃを見つけ、ニタリと仄暗い笑みを浮かべ、闇の者に告げた。


「その『マリカ』と言う女以外にも若くて見目が良い女がいたら一緒に連れて来い。あそこの商会は店員のレベルが高いと評判だからな、一度味見をしてみたい」


 伯爵の言葉に、黒いローブを纏ったモノは闇に同化する様に溶けていった。

お読みいただきありがとうございます。


マリカとダニエラさん逃げてー!


アードラー伯爵視点だと18禁になって怒られそうです。


次のお話は

「49 王宮に蔓延る毒(エリーアス視点)」です。


王宮がどうなっているかなお話です。久しぶにグリンダ出ます。


どうぞよろしくお願いいたします!

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新連載はじめました
タイトルは「巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。」です。
作品ページはこちら

拙作「ぬりかべ令嬢」と同じ世界のお話です。
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― 新着の感想 ―
[一言] もう扱いがハリポタのあの方扱いで面白いですwww
[一言] アードラー伯爵にどんなざまあ~が有るのか楽しみに待ってます‼️
感想一覧
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