詩輝は暇を持て余す
「いい眺めだ。」
空に浮かぶ水晶の城に拠点を移した俺は何となく伸びをしながらこの世界を見下ろした。
拠点を移したといっても元々の拠点は大型の乗り物を格納する格納庫として機能しているためまだ残してある。
城の下には城へとつながる昇降機とそれを守る数十体のオートマタを警備用に配置してあり、アレンとかは遊びに来ることも可能だ。
ま、今のところ死んだ騎士の家族への補償やらなんやらでいろいろ忙しいようだから誰も来ないけどな。
俺は時々地上に降りて桃花と暇つぶしに魔物を狩っている。
この体はチートすぎるので最近は最近影の薄いイモータルソードのみで戦うなどいろいろ縛りを入れて楽しくやっているけど、
暇だ。
俺はテンプレが欲しいのであって、こんなスローライフを送りたいわけではないのだ。
主人公が死にかけて、覚醒するという展開が好きなのだ。
......だが俺はこの世界に降り立って一年もたたずに世界の絶対的な強者となってしまった。
俺が望めば大陸など数秒で分解されるし、魔法を撃ち込まれてもリアクターから取り出した魔素で軽く相殺できる。
極めつけに俺は死なない。
もっと言えば配下も基本的に死なない。
ある程度なら人の死さえも覆しうる。
つまりピンチがない。
レベルとかある世界だったらレベリングにいそしむとか暇つぶしはあった。もっと強い強者もわんさかいるだろうし、いろいろなアクシデントもあったはず。
だがこの世界において魔素というのはそんなファンタジックなものではないし、新しい魔法と言っても結局物理の延長線上。
おまけに俺は全身を構成するnMSによって自動的にアップグレードを繰り返している。
ふむ、
しばらくおとなしくして、数百年後ぐらいに一般人としてやり直すのも面白いかもな。
体は完全に生身にして、適当な幼児からやり直してみるか? それなら場合によっては幼馴染とムフフな関係になるという展開もあるかもしれない。
記憶を封印するというのも面白そうだ。
「シキ様、私以外の女を考えちゃだめですよ?」
......なぜお前がここにいる。
「クレアか。」
そして俺はなぜ気づかなかった?




