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襲撃


 昼頃、エルオス王国の王城目指し進む怪しい集団。

 それぞれは別々の道を通りつつも、この国で国王の次に最も権力のある貴族、ラゼーア公爵家の屋敷を目指し、進む。


 バラバラに動いているとはいえ、真っ昼間に怪しい集団が動き回っているのだ。不審に思う者がいても全くおかしくないのだが、道行く人達はおろか、衛兵の一人も気にする様子はない。





 --日常だった--。


 ****


 ドォォォォォォン

 王城の城壁にぶつかり、はぜる火の玉。

 「「「敵襲!!??」」」


 異常に気がついた警備や近衛騎士達が一斉に動き出す。

 

 そこに次々と打ち込まれる攻撃魔法。

 剣での戦闘を生業とする騎士達には到底対応できないものであり、時間を稼ぎつつ盾で防御しながらの退却を余儀なくされていた。


 そこに到着してすぐ盾の奥から魔法で応戦する宮廷魔導士達。

 多くの魔法は相殺されるも一部の魔法は防御を貫通、騎士達の命を奪いながら奥へと到達する。

 

 「くっ......た、退却!!」


 陣形を乱された騎士と魔導士達は後退してまた応戦する。

 何度か繰り返す内に戦場は城内まで到達。



 「これ以上は死んでも進ませるな!! 陛下をお守りするのだ!!」

 焦った声が響き、

 「ほう? ここが寝所といったところか。」

 「なっ!!「黙れ」......」

 

 襲撃者の一人が進み出て来て腕を一振り、光線が放たれる。


 しかしただの光線ではなかった。


 それは射線上にある全てを元々なかったかのように消し去り、王城を貫通。夜空に一条の光を放つ。

 大穴が開き、露になる国王の寝所。

 そこには王家の者が避難していた。



 「アレン国王、その命もらい受ける。」

 そう言い、先程の光線が再度放たれる。


 一瞬国王の前に光の膜のようなものが現れ、光線を散らすも貫かれる。


 しかし、瞬時にそこに一人の端正な顔をしたメイドが割り込み、片腕を前に突き出した。


 


 

 被害から荷電粒子砲に類するものと推測

 大気中魔素の急激な減少を確認。表層組織維持に異常発生

 nMSAI『ソフィア』へ荷電粒子砲魔導式の使用許可を申請

 許可を取得

 表層組織の魔導式を全て消去、余剰分の魔素を兵装へ供給


 --発射--


 襲撃者の放った光線とほぼ同時にメイドの腕から放たれた光線は衝突。一瞬の拮抗を見せるも、メイドの放つ光線が出力で上回り、射線上の襲撃者を巻き込みながら直線上を蹂躙する。



 あり得ない状況に、その場の全ての視線が国王を守ったメイドへと注がれる。


 視線の先でボロボロと剥がれ、溶け落ちていくメイドの使用人服と皮膚。


 下に現れたのは光沢を放つ金属製の装甲と、それに包まれたどこか生々しい筋と骨格。剥き出しになった二つの眼球がゆっくり回りを見渡した。



 「魔素の深刻な不足を確認、推定戦闘可能時間は5分。戦力不足を補充するため援軍を要請。運動器官のリミッター解除。」


 「--戦闘開始--。」



 メイドだった何かが動き出したのを見て襲撃者も動き出す。


 次々と放たれる魔法は『何か』の装甲に防がれて通らない。

 無視して襲撃対象へ進もうにも、そぶりを見せただけで首か胴が千切れ飛ぶ。

 しかし襲撃者たちは何かに洗脳されたかのように次々と到着しては魔法を放ち、そして散っていく。


 王城内を爆音が響き渡り、城下の住民は何事かと怯える。


 後方から次々と来る襲撃者と『何か』の戦いは拮抗していたが、

 突然終わりは来た。


 急に『何か』の目から光が失われ、崩れ落ちたのだ。

 そこに殺到する魔法。

 すぐに『何か』の頭部は爆散した。



 そして突然の好機に対象へ攻撃を仕掛ける襲撃者。

 王家の終わりを誰もが確信した。


 



ーーしかしーー




 ピチュン

 「......は?」



 次に起きたことなど、だれも想像できなかった。 

 

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