陰謀
ここはエルオス王国、ラゼーア公爵の屋敷。
当主であるラゼーア公爵は執務室にて溜まった書類を捌いていた。
ガタッ
紙の擦れる音が響く静かな空間に突然立つ不自然な音。
「誰だ?」
脇においてある剣に手を伸ばしながら素早く回りを見渡す公爵。
「なに、怪しいものではないですよ。ラゼーア公爵殿」
「怪しいものは皆そう言うものだ。名を名乗れ。」
突然現れた、顔を隠してローブをまとう男に警戒心を一段上げて相対する公爵。
「私は聖ルミアーナ国から来た使者です。名は......アインとでも名乗っておきますか。」
「ふん、それが何をしに来た。」
怪しさしかない自己紹介? に尊大な態度で返す公爵。
「貴方は王になりたくありませんか?」
「......何だと? 何が目的だ?」
「その事についてはこの書状をお読みになってください。」
「どれ......!!??」
「その内容を踏まえた上でいかがいたしますか?」
「......ここに書いてあることは真か?」
「ええ。こちらはそちらの返答次第で行動に移れます。」
「計画道理にことが進めば王家の命運は私の自由だと。」
「はい。そしてあなたが新しい王となるのです。この国の全ては貴方の物です。」
「く......はははっ。宜しい。攻撃拠点に私が屋敷と食料を提供しよう。」
「では同盟は成立ということで。」
「うむ。よろしく頼む。」
公爵は気付かなかった。使者の腕にある魔導式が光を放ったことに。
勤勉として定評のあった国王は物質の神と契約を結び、
同じく勤勉として定評のあった公爵は作り物の神と契約を結んだ。
「さて、食料を買い込まなければ。」
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「マスター。公爵家が奇妙な動きをしています。いかがいたしますか?」
「様子を見よう。」
「了解。」
完全に筒抜けだった。




