ゼロ
「S-01と申します。マスターの命により、此方でクレア王女様の世話役をさせて戴くことになりました。よろしくお願いします。」
詩輝が去った後、目の前にいる人形だったはずのものがしゃべりだした。
エスゼロワン?
「それがお前の名か?」
「はい。と言いましてもただの機体識別名詞でありますので、呼びやすい名でお呼びください。」
キタイシキベツメイシ?
またよく分からない言葉が出てきたな。
「ではお前の呼び名は今日からゼロだ。」
「了解しました。」
「ところで......世話役と言ったな。お前は先程の詩輝によく似た人形ではなかったのか?」
最初から抱えていた疑問をぶつけるアレン。
「正確にはその人形だった『モノ』でございます。マスターに自我と使命を賜った、数あるマスターに忠実な人形の端くれです。」
「お前は人間ではないのだな?」
「左様でございます。お望みならば証明して見せますが?」
「その方法とは?」
「首なり胴なり適当な所を切り離して見せます。」
「......いや、止めておこう。」
......詩輝はこんなものまで作れるのか?
「それで、どういう風に扱えばよいのだ?」
「そうですね......私は人形であるがゆえに食事と睡眠が不要ですので、その点のみ考慮していただければ。」
「だがな、クレアは女だ。今のお前では部屋に入れないから世話もできん。そこはどうする?」
「性別を女に変えます。」
......詩輝と言いこいつと言い、なぜここまで予想の斜め上の回答をするのだ?
......いや、詩輝がすべての元凶か。
「もういい。......クレアの世話役になることを許可する。」
何もかもが面倒臭くなってきたアレンであった。




