新スキル
ここは......
気が付くとまたあの世界にいた。エヴァからの呼び出しだ。
「やっほ~」
相変わらずの調子で出てくるエヴァ。
「久しぶりだな。今日は何の用だ?」
「今回は君のスキルが変化したからそのことについてと、あとは......忠告かな? もう手遅れだけど。」
「無茶苦茶気になる言葉が聞こえてきたが......」
「まあそれはおいといて、君のスキルね。前は『不老不死』と『改造』だったでしょ? 『改造』の方は欲しいと言っていた割に最初以外全く使っていないみたいだけど。『不老不死』の方も最近は肉体が完全に消滅したときの保険にしかしなっていないし。」
確かに......全部nMSでできてしまうからな。
「で、結果的にだけど君は常に膨大な数のnMSの魔導式を稼働させて体を維持しているわけ。」
「確かに。」
「前にもいったけど魔法は使えば使うほど魂に刻まれやすくなって、それがスキルになる。」
「ああ。」
「そのせいで君にあげた『改造』が変化して別のスキルになったんだよ。なんだと思う?」
なんだろう......
「想像がつかない。」
「『元素統率者』と言ってね、使用した対象を構成している原子をnMSにして支配下に置けるようになるスキルだよ。もちろん元素の上書きも可能。魔素の自動生成能力がないだけでほとんど神と大差無い能力だね。」
「つまり?」
「簡単に言えば神である僕が全世界の意思であり管理者であるのに対して君は一世界の支配者......実質的には神になったってこと。」
「ずいぶんと壮大な話になったものだな。」
「そもそも魔素自体僕が世界を弄るときの道具だからね。神の力と言っても差し支えない代物が必要不可欠となっている世界がある時点でおかしいんだよ。」
君はもっとおかしな存在だけどね。とエヴァは苦笑しながら付け加えた。
「で、忠告って何だ?」
「そうそう。その事なんだけどさ、詩輝は気付いてる? ちょうど君の脳がnMSに置き換わった辺りからなんだけど。......君自身のメンタリティ......心の有り様が著しく変化するようになっていることに。」
「はい?」
俺の精神が著しく変化している?
「その様子だと気づいていないらしいね。......まあ君が『不老不死』のスキルを認識してから変化自体は始まっていたんだけどさ。」
「そうか?」
「うん。まず死ななくなったから恐怖心が消えた。そもそも生き残るためにある機能だからね。あと少し論理的思考が目立つようになった。ここまでは別に許容できるんだ。だけど次が深刻でね......君の自制心というかストッパーというか......道徳的感性? が緩くなってきているんだよ。おまけに価値観が宇宙人だし。」
「?」
「少し難しかったかな......。じゃあ質問するよ。君は何でオートマタの軍団を作ったの?」
「何の為って......」
ロマンの実現?
「じゃあオートマタが使える装備の中で強力な兵器を言ってみて?」
装備のこと? 強力なのはレールガン対応型核弾頭と荷電粒子砲ぐらいか?
「今核弾頭って言ったよね。君はそれで何をするつもり......いや、何と戦うの?」
「何って......国?」
「今君は国と戦争をするといったね? その言葉を自分の中で軽く考えてみて? 主に日本人の一般的な感性から。」
日本人の感性ってあの平和主義だろ
成る程理解した。
「確かに俺は国に喧嘩を売ろうとしていたようだ。自分でも自分が理解できない。」
まるで蟻を踏み潰したくなるような......
そう考えてさっきのエヴァの言葉が府に落ちた。
確かにこれは地球を侵略する火星人の思考だな、と。
「理解できたみたいでよかった。まあ僕にはもうどうすることもできないんだけどね。」
「このまま座して人としての感性が消えていくのを待てと?」
「いや。僕は別に君を侵略者にしたいわけではないんだよ。対策はある。」
「どうすればいい?」
「簡単。君の意識が宿っている部分だけ神経細胞に戻せばいいんだよ。」
「それこそどうやって?」
「一回頭を荷電粒子砲で吹き飛ばす。で再生する。」
俺は思った。
こいつの感性も大概じゃないか、と。




