取り敢えずオートマタ制作。これ常識
アレンに確認をとった俺はまず、地球で言う救急隊員と看護師に当たるオートマタの作成から着手した。
別に今回は変な装備は不要なので救急隊員に患者を軽々と運搬できる膂力と最低限の応急処置機能があれば成立する。
しかし医療に携わる者として不可欠な機能。患者やその家族とのコミュニケーション能力はその分高くしないといけない。
救急隊員の方の外見は精悍で黒髪の細マッチョかつ長身な男性だ。
中身はエンジェルシリーズの素体をそのまま流用、翼展開機能を削って言語野を拡大。表情筋も追加した。全ての指先にはそれぞれ麻酔、鎮静剤、睡眠薬、覚醒剤、血清、アドレナリン製剤、栄養剤、を投与する注射針とnMS型人工血液、人工透析、止血用ゲルのパイプを内蔵してあり、両手のひらは簡易型AEDになる。これで大抵の致命傷には対応できるはずだ。極論を言えば脳さえ無事であれば首だけでもこれで暫くの延命ができる。
各栄養剤、薬剤、機器はソフィア主導の元nMSで再現されたこの世界の人間の肉体を用いて実験済みの物を使用。nMS型人工血液は本人の血中に入った瞬間患者の血球の特性を獲得、そのまま固まることなく血液の役目を担う優れものだ。前腕部は展開することで人工心肺用のパイプが出てくるようになっている。首の動脈と静脈に突き刺すことでパイプの先端が血管と融合して接続、オートマタ内部にある強力なポンプがnMSで酸素を供給された血液を循環させる。
次に看護師のオートマタだが、ほんわかとした顔に茶髪で長身のスレンダー体型。素体は救急隊員と同様エンジェルシリーズを採用しているが、施設内での活動が主のため特にこれといった機能はつけていない。巨乳ナースにも挑戦したかったが桃花やクレアに変な目で見られる可能性を考慮して断念した。
本当に他の機能も付いていない上、nMSAIも円滑なコミュニケーションのために思考回路と共に人間と同レベルの規模にデチューンしてあるから現状最弱のオートマタでもある。
服装は看護師型の方がナース服。救急隊型の方はジャージだ。
二シリーズとも暫定で600体ずつ製造を開始した。
「さてと......」
次は病院本体の作成だ。
必要なのは救急救命室と待合室、診療所と治療スペース、オートマタの待機場所だ。
待合室を広めにとっておけば問題ないのであとは壁と床、天井を白い鉄筋コンクリートで覆えばおしまい。細かい内装や部屋の配置についてはセンスがないのを自覚しているのでソフィアに託す。所詮丸投げだ。治療室はnMSのカプセル。怪我や病気の度合いと収入を加味した料金設定にする予定。
次に救急車に当たる乗り物を作る。外見は救急車に倣って白の下地に赤線だ。大きさは地球のフルサイズバン位で前と後ろにそれぞれ二基ずつ独立駆動の魔導スラスターをくっつけたホバー式。この世界の道路整備はまだ期待できないからな。名前はライフキャリアー。救急隊型オートマタを五体と患者を五人積めるスペースを持ち、現地で応急処置をして運ぶ流れだ。病院一つに5台あれば十分か?
最後に呼び出しボタンを作る。これは遠方で病院を置く予定のある都市から遠い、若しくは緊急の時押すことでボタンを基点に信号を発信。座標を特定して最寄りの病院から最速で迎えが来る仕組み。といってもnMSを数粒組み込んだ唯のボタンなので一瞬で作れる。これは適当な商会を作ってそこから供給すればいい。
......本当にnMSは便利だ。特にその機能の真骨頂とも言える物体の生産と機能の付与、元素の上書き能力は凄まじい。データさえあれば同じ物を材料の続く限りだが地球の全生産業が目を剥くスピードでコピーしていく。今回も俺は設定をしただけでそれ以外の作業は自動で行われ、すでに地下の自動工場で生産が開始されている。
その代わり材料となる質量はこの惑星から徴収されているが、要らなくなった分はちゃんと元道理還元しているので問題ない......だろう。
「ソフィア」
『何ですかマスター。』
「俺の代理でクリーチャーシリーズに商会を作らせろ。姿は俺でいい。元手は俺たちが手にいれた闘技大会の賞金半分後は応相談だ。困ったらアレンに助けを求めろ。」
『分かりました。今すぐ。商会名はどのようにしますか?』
そうだな......アナザーワールドとか?
「アナザーワールドでどうだ?」
『いいと思いますよ。ではそれでいくと言う方針で。』
「ああ。宜しく。」
『手始めに何を売る予定で?』
「色々あるが......手始めに古着よりも少しだけ高くて良質な衣服とかどうだ? 後はnMS製の薬。効果を限定させたやつだ。体内で機能を消去するようにしておいてくれ。生産はどうとでもなるだろ? 後々病院を作ったらあのボタンを売りたい。」
『なるほど。ボタンの販売ルートの開拓が目的だと。』
「そういうわけだ。あと大変だろうから商売を全て統括するnMSAIの一機増築を許可する。名前は......リッチマンで。」
『ありがとうございます。最高の商会を作り上げさせてもらいます。』
「ああ。期待している。無理するなよ。」
『変なことを言いますね。私達は全員マスターの役に立つために創られた不滅の配下ですよ。余程のことがない限り壊れるわけがありません。』
「そうか......こんなマスターに仕えてくれてありがとうな。」
『いえいえ。』
そしてエルオス王国にひとつの商会が誕生した。
名はアナザーワールド商会という。




