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薬を盛られました


 「よう」

 「!!?? ......なんだシキか。驚かせるなよ。」


 「約束通りその目についての説明をしに来た。」


 「お前のせいでろくに寝れなかったぞ。」

 少し不機嫌そうなアレン。勿論スルー


 「といっても俺は説明しない。それを一回読んで、わからないところだけ聞け。」

 昨日の夜にソフィアに丸投げして作成させた網膜ディスプレイの基本的な機能と操作のファイルをアレンの視界に送る。


 アレンのnMSに許可した機能は以下の5つだ。


 1、本人のバイタル計測及び調整。

 2、俺との通信機能。

 3、自衛に限定した攻撃用魔導式の起動。

 4、画像、動画及び活字データの記録機能。

 5、重度の肉体損傷の修復。


 国王の仕事や護身、健康管理と円滑な情報伝達に重きを置いた機能だ。早々に死なれても困るからな。


 「わからないところはないが......お前の能力といい、相変わらずあきれるような機能だな。」

 「そりゃどうも。公私どちらでもしっかり役立ててくれ。」

 「ああ。感謝する。」


 コンコン


 「入れ。」

 威厳に満ちた声で入室を許可するアレン。


 「お父様、......シキ様!?」

 「や、昨日はどうも。」

 爽やかな笑顔を心がけて返答する。


 「......それでクレアは何の用で来たのだ?」

 「......いえ、やはり何でもありません。......ところでシキ様、少々お時間はあるでしょうか?」


 ん? どうした?

 「時間はあるぞ?」

 「では少し私の部屋でお茶でも飲みながらお話しませんか?」

 

 ......どういうことだ? まだほとんど交流がないのにも関わらず部屋に招かれるだと? まだ落ちるには早すぎるし......聞いてみるか。


 (おいアレン。こっからは黙って聞いて返答してほしい。)

 突然の通話にビクッと反応したが、察して返答するアレン。

 (これが通信か......。で、なんだ?)

 (なぜおまえの娘はここまで俺に心を許しているんだ? かなり理解に苦しむのだが......)

 (俺にも治療の御礼ぐらいしかお前が呼ばれる理由がわからないんだが......。)


 親もわからないのか......仕方ない、この体でそうそう大事は起きないし、行ってみるか。


 「シキ様......?」

 反応がない俺に心配になったんだろう。王女が上目使いでこっちの顔を覗き込んできて、なんかこう、ぐっと来てしまった。不覚。健康な顔になったせいで破壊力が高い。


 「いいぞ?」

 「ありがとうございますっ!!」

 花のような笑顔を咲かす王女。


 ****



 ギィ......

 「こちらが私の部屋です。そちらにお茶が準備されているのでどうぞおかけになって下さい。」

 「......広いな。」


 ほんとに広い。ベッドだけでも6畳分はある。


 そう思いながら勧められるがままに座って、話を切り出す。


 「ところで話したいこととは何か、教えてもらえると嬉しいのだが?」

 「っ! ......その前にとりあえず、ゆっくりお茶を楽しみませんか?」


 すこし動揺しながらも熱心にお茶を勧めてくる王女。怪しさしかない。しかし俺も別に何を盛られようが問題ないので言われるがままにお茶に口を付け、呑込んだ物を解析する。そしてそのデータをソフィアに送って変な効果がないかの確認をさせると......。


 『マスター、微量の睡眠作用を持つ物質が検出されました。』


 ビンゴ。この王女サマ意外と腹黒いのな。俺がお茶を飲んだのを見て僅かに口元が微笑からしてやったりのそれになっている。


 「美味いな。」

 これは正直な感想だ。さすが王族、茶葉も一級品か。


 「ええ、それなりに高価な茶葉なので。」


 「そうか。納得......だ......。」

 王女の意図を知るために寝落ちした風に小さなテーブルに崩れ落ちる詩輝。



 ......しかし事態は詩輝の想像の斜め上を行くのであった。

 

 

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